■ルノー5プロトタイプEV「R5」にみる「ルノー5」のデザイン
ところで本稿ではEVの「R5」登場を受けて“ルノー5とはどういうクルマだったか”を説明するのが主旨。
筆者としては初代ももちろん好きなクルマだったが、デザインをより洗練させて1984年にモデルチェンジした2代目に革内装のステキな“バカラ”というグレードがあり、何を隠そうベージュメタリックのボディ色と薄いブラウンのレザーシートという設えのこのクルマを買いたいと思ったことが何度もあった。
なので初代だけでなく2代目も触れようと考えたいたのだが、EVのR5は公表された写真で見る限り、主に初代5へのオマージュが色濃いような印象だ。実物を肉眼で見ていないけれど、ボディサイズや縦横比は当然ながら5とR5でとでは随分異なる。
新世代感のニュアンスの表現は同じフランスの最新のプジョー車に通じるようなところもある。
ランプ類はもちろん“イエローバルブ”というわけではないが、5のディテールをモダンに再現した形。前傾したCピラーとそれが織りなす台形フォルムをリアから眺めると5(これは2代目か?)だし、何といっても張り出させた前後フェンダーは、ターボ2を思わせる。
そう見ると、サイドシル部分のスカートや、テールランプ横の小さな切り欠きもターボ2にあったエアダクトをそれとなく再現しているようにも見える。他方でホイールを見ると、センターのルノーのロゴを囲む赤い3つのアクセントが。
初代5や4のホイールは3H(3穴)であり、それをサラッと再現したのだとすれば、デザイナーの粋なセンスに敬服だ。
例えばBMWが手がけたR50ミニやVWニュー・ビートルも、原形へのオマージュから生まれたクルマだった。だが時が流れて、今クルマはEV化の波という新たな変革期のなかで、生まれ変わらせるだけではなく、生き残りをかけた熾烈な戦いを余儀なくされている。
そんななかで往年のクルマのエレメントを情緒として盛り込むあたりは、やはり人の仕事であり、ヘリテージという武器をどう生かすかが自動車メーカーの手腕の見せどころだと改めて思わせられる。
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