【トヨタiQ、アベンシス、ウィッシュ…】販売のトヨタが見限ったクルマたち

■ウィッシュ 2003〜2017年

トヨタ・ウィッシュ
トヨタ・ウィッシュ

当企画「トヨタが見限ったクルマたち」では販売の伸び悩んだ車種が目立つが、発売当初に相応の人気を得たクルマもある。この代表がウィッシュだ。初代ウィッシュは2003年に全高を1600mm以下に抑えたワゴン風の3列シートミニバンとして発売され、2009年には2代目にフルモデルチェンジされた。

2代目ウィッシュは、発売から2年程度の間は、1か月に5000台前後を販売している。当時のトヨタノアや日産キューブと同程度で、小型/普通車の販売ランキングでは15〜20位であった。人気車とはいえないが、中堅レベルには位置した。

ウィッシュが人気を得た理由は、3列シートのミニバンでありながら、ワゴンの実用性を備えて価格を安く抑えたことにあった。1.8Lエンジンを搭載した1.8Xは、実用装備を充実させて価格は185万円だ。

ちなみにカローラフィールダーは、2列シートのコンパクトワゴンでありながら、1.8Lエンジンの1.8Sは価格が200万円を超えてしまう。ウィッシュはミドルサイズのボディと3列シートを備えながら割安で、ミドルサイズワゴンが欲しいユーザーの間でも高い人気を得た。

しかし2015年には、コンパクトミニバンのシエンタがほぼ同じ価格で現行型にフルモデルチェンジされ、売れ行きを伸ばした。エンジンは1.5Lだが、3列目のシートはウィッシュよりも快適で、畳んだ時の荷室も広い。スライドドアも装着した。さらにシエンタにはハイブリッドもある。

軽自動車まで含めて、広い車内とスライドドアがセットで求められるようになると、ワゴン風のウィッシュは古く感じられた。2017年11月に行われたウィッシュの生産終了は、ワゴンと、背の低いミニバンの終焉を告げていた。

■ヴァンガード 2007〜2013年

トヨタ・ヴァンガード
トヨタ・ヴァンガード

2007年に発売されたヴァンガードは、SUVの人気車種だった。2011年頃までは、エクストレイルと同程度の台数を販売している。機能的には3代目RAV4のロング版で、ホイールベースを100mm長い2660mmにしたために後席の足元空間が広い。ファミリーカーとして使いやすく、荷室に補助席を備えた3列仕様を選ぶと、短距離であれば多人数の乗車も可能だった。

またフロントマスクやインパネは上質に仕上げられ、セダンのマークIIや後継のマークXをSUVにアレンジしたような雰囲気も味わえた。

実用的で見栄えが良い割に、価格は安く、同等の装備を採用した当時のハリアーを約25万円下まわる。従って相応の人気を得た。

ただし2013年12月に、レクサスRXから分離した国内向けの現行ハリアーが登場すると、入れ替わるようにヴァンガードは販売を終えた。

現行ハリアーは人気車種になったが、価格が高く、3列シート仕様も用意されない。従ってヴァンガードを継続的に販売する手もあっただろう。そうなればコンパクトSUVがC-HR、ミドルサイズがヴァンガード、上級プレミアムSUVがハリアーという選択肢がそろった。ヴァンガードの廃止は残念であった。

■ラッシュ 2006〜2017年

トヨタ・ラッシュ
トヨタ・ラッシュ

ラッシュはコンパクトサイズのSUVだが、ホンダヴェゼルやマツダCX-3などのシティ派SUVとは素性が違う。エンジンを縦置きにした後輪駆動がベースの4WDで、4WDシステムは常に4輪を駆動できるセンターデフ式だ。悪路で駆動力を高める副変速機は装着されないが、車両の成り立ちは、ランドクルーザーのような悪路向けのオフロードSUVと同じだ。

従ってラッシュは、コンパクトで取りまわし性の優れた5ドアボディと、悪路の走破力を両立させた貴重なSUVであった。

特に日本の積雪地は道幅が全般的に狭く、ランドクルーザーのような大柄なオフロードSUVは使いにくい。そこで軽自動車やコンパクトカーの4WDが機能しているが、悪路の安心感を求めると前輪駆動ベースの4WDでは物足りない面もある。こういった不満を一挙に解決できるのがラッシュであった。

ラッシュのようなクルマは、自動車メーカーである以上、たとえ儲からなくても廃止してはならない。鉄道の赤字路線と一緒で、生活する上で不可欠な移動手段になるからだ(軽商用車にも同じようなことが当てはまる)。今後、必ず復活させるべき車種の筆頭がラッシュだ。

1車種では足りないから、スズキにはジムニーシエラの5ドアボディを開発して欲しい。3ドアでは後席と荷室が狭く、積雪地域のファミリーカーにはなりにくいが、ジムニーシエラの5ドアボディなら高い実用性が得られる(ジムニーを軽自動車サイズで5ドア化するのは難しい)。

ラッシュやジムニーシエラの5ドアボディを改めて発売すれば、「いいクルマを造ってくれて、ありがとう」とユーザーから感謝されるに違いない。自動車メーカーの使命と、自動車産業に従事する人達の醍醐味は、移動に困っている人達を助けられることにある。裕福な人達の満足感を高めたり、見栄を張るための道具を造るのは、本来の使命ではない。そんなものは二の次で良い。

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