国土交通省が、クルマのすぐ後ろを確認できる「バックカメラ」などの装備を新車に採用することをメーカーに義務づける方針を明らかにした。
クルマを後退させる際の安全性向上に効果ある装備だが、義務化となると標準装備になってくる。すると気になるのが、クルマの価格が高くなるのでは? ということではないだろうか。
今回の義務化で新車価格はさらに高くなるのか? バックカメラの重要性や、さらなる安全性向上のために必要なポイントなどを含めて、カーライフジャーナリストの渡辺陽一郎氏が解説する。
文/渡辺陽一郎
写真/TOYOTA、NISSAN、HONDA、DAIHATSU、ベストカー編集部
【画像ギャラリー】「後退時車両直後確認装置」装着の義務化で何が必要? いろんな装備を写真でチェック!!
■バックカメラだけじゃなくセンサーなども対象
クルマが後退する時の死傷事故は、2020年に1万6000件以上が発生したといわれる。死亡事故も起こっており、対策が急務になっている。
そこで国土交通省は、2021年6月に「後退時車両直後確認装置」の装着を義務付ける方針を打ち出した。後退時車両直後確認装置とは、後方の様子をモニター画面などに映すバックカメラ、音波センサーなどによって障害物の存在を知らせる検知システム、後方の様子を見せるミラーなどだ。
最近はカーナビ装着車の増加もあってバックカメラが普及しているが、国土交通省の方針では、装備のメカニズムを限定していない。
安全装備に求められる車両後方の確認範囲は、前後方向については車両後部から測って0.3~3.5mとされる。左右方向の確認範囲は車両の全幅だ。
これらの装備は、現時点でも標準装着、あるいはオプションとして用意されている。気になるのは価格だろう。
■現行車での後方安全装置の装備と価格はどうなっている?
最近のバックモニターは、複数の装備をまとめて装着するセットオプションに含まれることが多い。
単品の正味価格を算出しにくいが、ムーヴの場合、ディーラーオプションのカーナビを装着するのであれば、バックカメラをフルセグTVアンテナなどと併せて2万7500円で装着できる。ヤリスはディスプレイオーディオを標準装着するので、1万6500円でバックガイドモニターを追加できる。
上級グレード車のモニターには、車両の周囲を上空から見たような映像として表示するパノラミックニューモニターやインテリジェントアラウンドビューモニターがある。この機能はヤリスとデイズ(カーナビ装着車)では3万3000円で装着できる。
eKワゴンでは、液晶デジタルルームミラーの内部に、上空から見たようなマルチアラウンドモニターを表示できる。これならカーナビ画面やディスプレイオーディオを装着しなくてもモニターの機能を得られるが、液晶デジタルルームミラーと兼用だから、オプション価格は9万3500円と高い。
一方、音波センサーを使って障害物を検知するインテリジェントクリアランスソナーは、アクアのオプション価格が2万8600円だ。
合理的な組み合わせを考えると、カーナビを装着したり、ヤリスのようにディスプレイオーディオを備える車種では、バックモニター、あるいはパノラミックニューモニター/インテリジェントアラウンドビューモニターを加えるのがいい。
カーナビなどのモニター画面を装着しない場合は、音波センサーを使うインテリジェントクリアランスソナーをお薦めしたい。後方の様子をモニター画面に映し出すことはできないが、前述のとおり価格を安く抑えられる。
そして装着が義務付けられると、車両価格に上乗せされたとしても、オプション装着に比べると大幅に安くなる。標準装着される装備は、大量生産して一括して取り付けるため、想像以上にコストが低減されるのだ。
音波センサーや1個のカメラだけを使うバックモニターであれば、便乗値上げをしない限り、価格の上乗せは1万円以内に収まる。まったく値上げしないことも考えられる。義務化により、死角を補う安全装備が割安に装着されるわけだ。
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