■日産にはスカイライン存続のシナリオを明確に示してほしい
フルモデルチェンジの周期は、ハイエースのような商用車やランドクルーザーなどの悪路向けSUVを除くと、長くても10年だ。10年以上を経過するとユーザーが離れてしまい、需要の継続も困難になる。
従って、たとえば最終型のヴィッツは2010年に発売され、2020年に現行ヤリスへフルモデルチェンジされた。これが限界ギリギリのタイミングだ。最終型のエスティマは、2006年に発売され、2016年にフルモデルチェンジではなくマイナーチェンジを受けた。その結果、2020年には販売を終えている。
このように、発売されて10年を経過するか否かは、その車種の存続を予想する上で大切な分岐点になる。
ちなみに現行マツダ6は、2012年に3代目アテンザとして発売された。今年で9年を経過するが、マツダはすでに、次期マツダ6がエンジンを縦置きにした後輪駆動車になって登場することを実質的に公表している。
日産はこのような今後の経営計画のうえでも、スカイライン(インフィニティQ50を含む)について何も述べていない。2020年度決算発表記者会見で、今後登場する新型車を披露した時も同様だ。「スカイラインを諦めない」のは素晴らしいことで、クルマ好きの願いでもあるが、裏付けも欲しい。存続させるなら何らかの方向性を示すべきだろう。
■セダンの販売比率はわずか8%!
この点について、日産販売店では以下のように述べている。
「スカイライン、フーガ、シーマの今後に関して、日産からは何も聞いていない。注文は従来通り入れられるが、売れ行きは下がった。今では積極的には売らず、購入希望のお客様だけに販売している。そのために従来型から乗り替えるお客様が中心だ。それでもスカイラインには、20年以上にわたって乗り続けるお客様もおられる。新型の登場を待っているので、今後もフルモデルチェンジを行って存続させて欲しい」。
2021年における日産セダンの売れ行きは、最も多いスカイラインが1か月当たり約400台、フーガは大幅に減って60台前後、シーマは10台程度だ。シルフィは前述の通り生産を終えた。ノートは1か月に8000台前後を登録するから、これに比べるとスカイラインの売れ行きは5%程度になる。
セダンの販売低迷は、日産に限った話ではなく、国内市場全般の傾向だ。1990年頃まで、セダンは国内の中心的なカテゴリーだったが、1990年代の中盤にミニバンが登場すると状況が変わった。クルマの価値観が実用指向になり、1998年に軽自動車規格が刷新されて売れ行きを伸ばすと、セダンの低迷は一層顕著になった。
今の乗用車の販売構成比は、軽自動車が38%で最も多く、コンパクトカーも26%を占める。国内で売られる乗用車の60%以上が小さなクルマになり、セダン比率は8%まで減った。セダンで最も多く売られる車種はクラウンだが、2021年の1か月平均は約2100台に留まる。セダンの2位はカローラセダンで、1か月平均は約1300台だ(カローラツーリングなどを除く)。それ以外のセダンは、1か月に1000台以下だから、大半のセダンが不人気車になった。
この状況では、セダンの需要予測も悲観的になってしまう。2020年には「次期クラウンはSUVになる」というニュースまで飛び出した。「セダンに未来はないが、1955年に誕生した伝統のクラウンは残したい」となれば、クラウンをSUVにする悲痛な計画も現実味を帯びる。スカイラインをSUVにすることも考えられる。
コメント
コメントの使い方