■ホンダのブランドイメージが崩れないか心配だ
今のホンダの国内販売状況を見ると、前述の通り「軽自動車+フィット+フリード」の合計台数が、国内で新車として売られるホンダ車の約80%を占める。この販売構成比により、ホンダのブランドイメージは、コンパクトで低価格の方向へ大きく変わってきた。
例えば今年30歳になるユーザーであれば、誕生したのは1991年だから、3歳の時に初代オデッセイ、5歳の時に初代ステップワゴンが発売された。10歳の時に初代フィット、20歳の時に初代N-BOXが登場している。中高年齢層であれば、ホンダのブランドイメージは運転の楽しいスポーティカーだが、30歳以下のユーザーから見れば小さくて実用的なクルマのメーカーだ。
それでもオデッセイやレジェンドが用意されていれば、ホンダのホームページを見た時には、印象が多少なりとも違ってくる。小さなクルマだけでなく、上級のセダンやミニバンも手掛ける総合自動車メーカーだと分かる。
つまりこの2車種は、登録台数は少なくとも、ホンダのブランドイメージを小さくて安いクルマ造りに偏らせないスタビライザーの役割を果たしている。それを失えば、ホンダのイメージはさらに偏り、クルマ造りや売れ方にもズレが生じるかも知れない。
一番怖いのは、車種の廃止に歯止めが利かなくなることだ。ミドルサイズ以上のホンダ車の登録台数を最近の1か月平均で見ると、インサイト:220台、アコード:270台、CR-V:440台という具合だ。
軽自動車+フィット+フリードが国内で売られるホンダ車の80%に達する状況と考え合わせると、これらの車種も今後は整理の対象に入るのではないか。特にCR-Vとシビックは、国内市場から一度撤退して復活した経緯があり、次に廃止されたら二度目の復活は望めない。
しかも今後は電動化を中心とした環境対応、自動運転に向けた運転支援機能の進化など、先進技術への投資も増える。車両の開発費用はなるべく抑えたいから、車種のリストラも加速しやすい。
時系列で見れば、狭山工場を閉鎖するからオデッセイ/レジェンド/クラリティも生産を終えるが、実際はすべてがセットになって進行している。工場の閉鎖から車種の削減まで、すべてのリストラを同時に進めているわけだ。
■今後の自動車メーカーの生き残り策とは?
この寂しい状況は、果たしてホンダに限った話なのだろうか。ほかのメーカーでも、同じような流れが生まれるのではないだろうか。
今はトヨタまで国内の全店が全車を扱う体制になり、ホンダと同様、車種間の販売格差が拡大している。ヴェルファイアの売れ行きは、姉妹車のアルファードに比べて約10%まで落ち込み、先ごろバリエーションを大幅に整理した。プレミオ&アリオンやポルテ&スペイドなどは廃止された。トヨタでも車種のリストラが進む。
今後のメーカーは、車種を減らしながら、クルマの魅力とブランドイメージを保たねばならない。1車種が幅広いユーザーから支持され、好調に売る必要がある。そこには環境対応や自動運転とは異質の難しさがあるだろう。先進技術が進化しても、クルマとしての商品の魅力が薄れたら、購入する価値の高い商品とはいえない。
この困難なチャレンジを見届けられるのは、クルマ好きとして幸せなことかもしれない。狭山工場の閉鎖とオデッセイなどの廃止が、ホンダの新しい魅力を生み出す契機になると信じたい。
コメント
コメントの使い方