■閉鎖される狭山工場の主力車種 ステップワゴンの運命は?
それなら同じ狭山工場が生産するステップワゴンはどうなるのか。ステップワゴンも初代モデルは1996年に発売され、翌年には1か月平均で9000台以上が登録された。2代目も2001年に同程度の台数を販売している。
最近のステップワゴンの登録台数は、1か月平均で3000台前後だが、今の国内市場では中堅水準だ。ステップワゴンの価格も上昇傾向にあり、エアロパーツを装着する主力のスパーダは、1.5Lターボが約300万円、ハイブリッドのe:HEVは360万円前後に達する。
ちなみに2021年1~5月におけるホンダの国内販売では、販売総数の57%を軽自動車が占めた。そこにフィットとフリードの登録台数を加えると、国内販売の約80%に達する。この状況を考えると、価格が300~360万円で1か月に3000台前後を登録するステップワゴンは、ホンダの国内販売では貴重な車種だ。狭山工場が閉鎖された後、ステップワゴンはどうなるのか。この点も販売店に尋ねた。
「ステップワゴンは、オデッセイに比べて売れ行きも多く、今後も販売を続ける。しかも2022年3月頃には、フルモデルチェンジを行う。その意味でも生産の終了は考えられず、ステップワゴンの生産は、おそらく寄居工場に移される。次期ステップワゴンでは、ワクワクゲート(リヤゲートに装着された横開き式の小さなドア)は廃止される可能性が高い」。
■生産拠点の集約が加速する
ヴェゼルは、以前は寄居工場で生産されていたが、現行型は鈴鹿製作所だ。鈴鹿製作所はN-BOXを始めとする軽自動車のNシリーズ、フィット、シャトル、さらにヴェゼルまで生産するから、かなり過密な状態だ。販売店からは「ヴェゼルの納期が半年から1年と長い背景には、生産量の多い鈴鹿製作所が手掛ける影響もあるのではにないか?」という話も聞かれる。
そして寄居工場で新たにステップワゴンを生産すると仮定すれば、ヴェゼルを鈴鹿製作所に移したことも納得できる。現時点で寄居工場が生産する車種は、フリード、CR-V、インサイト、ホンダeだから、堅調に売れているのはフリードだけだ。寄居工場には余裕があり、ステップワゴンの受け入れもしやすいだろう。このほか次期シビックも、寄居工場が生産する可能性が高い。イギリスの工場が閉鎖されるためだ。
それにしても、オデッセイ、レジェンド、クラリティが国内販売を終えると、ホンダのブランドイメージは大きな影響を受ける。少なくともオデッセイとレジェンドは、登録台数は減っても、中高年齢層の間では知名度が高いからだ。
オデッセイは前述のとおりミニバンの先駆者で、歴代モデルともに、多人数乗車の実用性と併せて優れた走行性能を発揮してきた。ホンダ車の特徴は、実用性や環境性能に力を入れても、走りの良さを忘れないことだ。その象徴がオデッセイだった。ホンダのイメージリーダー的な存在だから、これが消滅すると、ホンダのブランドも変化してくる。
レジェンドも同様だ。ホンダ初の最上級セダンとして1985年に登場して、初代モデルのウイングターボから現行型のSH-AWDまで、常に先進のメカニズムを採用してきた。
つまりオデッセイとレジェンドは、単なるLサイズカーではない。ホンダらしさが濃厚で、ブランドの特徴を具体的に表現して発信する役割を果たしてきた。
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