■ラルゴ ハイウェイスター(1995年登場)
オーテック車のなかで最も有名なモデルのひとつが、「ラルゴ ハイウェイスター」だ。セレナの上級仕様として生まれ変わった3代目「ラルゴ」のなかでも、特に人気が高かった仕様だ。
タフで力強く高級感溢れるラルゴに、エアロパーツを装着した「ハイウェイスター」は、1995年8月の一部改良で追加。あまりにも好調な販売を記録したため、特装車であったハイウェイスターは、後にカタログモデルに昇格する大出世を果たしたほど。
専用のホワイトとシルバーのツートンボディとエアロの組み合わせは、爽快な走りのよさを表現。そのカッコよさ、そして、FRレイアウトと2.4LDOHCエンジンが生むラルゴの走りのよさが相まって、クルマ好きパパたちの心を掴んだ。ちなみにディーゼル車もあった。
インテリアにも、オーテックのこだわりが光り、スエード調生地であるエクセーヌを取り入れたスポーティな専用内装となっていた。
その後、ハイウェイスターは、他モデルでも展開され、今もエルグランドやセレナなどの人気のカタログモデルとして活躍を続けている。まさにオーテックの企画力の高さを象徴する一台といえよう。
■エルグランド ロイヤルライン(1998年登場)
高級ミニバンのパイオニアである1997年登場の初代エルグランドをベースに、オーテックが開発したショーファードリブンが「エルグランド ロイヤルライン」だ。
3列シートでもゆとりがあったキャビンを贅沢にも4名乗車仕様に変更。つまり広大な後部エリアは、たった2席だけのもの。航空機のファーストクラスシートを彷彿させる電動式専用造形のVIPシートが備えられた。
しかも後席のみを豪華なレザーシートに変更するオプションまで用意。そのシート前には、大型キャビネットを設置し、電源付きのノートパソコン収納スペース、VHSビデオデッキ付きのテレビ、後席用オーディオなど、まさに動くオフィス機能を備えていた。
一見、エクステリアは通常のエルグランドと変わらぬ雰囲気ながら、専用のメッキグリルやシックな専用ボディカラー「ダークブルーイッシュブラックパール」を用意するなどプレジデントワゴンと呼びたくなる品格溢れる仕様に仕立てられていた。
しかし、目に触れない部分にこだわるのもオーテックらしいところで、遮音材の追加や専用チューニングサスペンションを奢るなど、きっちりと乗り味でも差別化を図っていた。
当時の価格は、695万円。エルグランドの中間グレードV(FRのガソリン車)が、293.6万円の2倍以上だったから、どれだけ贅沢な仕様だったかわかるだろう。このロイヤルラインは、当時、日産自動車の社長車としても活躍した。まさに時代を先取りしたオーテックだった。
■プレサージュ アクシス(1998年登場)
オデッセイ登場で急激な盛り上がりを見せたミニバン市場に挑んだ1998年登場の日産プレサージュをベースとしたコンプリートカー。
スポーティなエアロパーツを纏い、内装はウッド調パネルとベージュ内装を取り入れた大人のスポーティミニバンだが、オーテックによるカスタムはビジュアルだけに留まらない。
専用デザインの16インチアルミホイールの足回りには、ローダウンサスペンションとミニバン専用タイヤの「トランパスmp」を組み合わせることで、走りの質も強化。さらにドライビングを盛り上げるフジツボ技研製専用スポーツマフラーまで装備。しかもアクシス専用チューンというこだわりようだ。
内外装の仕様の差にギャップを感じないわけではないが、おそらくミニバン界のグランツーリスモを目指していたのだろう。
またコンプリートカーながら、パワートレーンが3.0LのV6と2.4Lの直4のガソリン、そして2.5L直4ディーゼルターボと幅広い選択が可能だったのも特徴のひとつ。
当初は、ミニバン中心に展開されたアクシスだが、車種ごとに合わせたトータルコーディネートを行う大人の上級カスタムモデルとして展開され、ステージアやティアナなどの上級車、ノートやティーダなどのコンパクトカーまで設定された。
オーテックジャパン創業から10年ほどに登場した特徴的なミニバンを紹介してきたが、RVであることを意識した仕様からグランツーリスモとして磨きをかけたコンプリートカーまでミニバンひとつでも多彩な展開が繰り広げられてきたことがわかる。
特にハイウェイスターの成功は、ミニバンに求めるユーザーのニーズの拡大をいち早く掴んでいたことがうかがえ、興味深い。クルマ好きでも、オーテックジャパン車となると、スポーツカーばかりに注目してしまうが、さまざまなアプローチでクルマを面白くしてきた歴史の一片を感じてもらえたはずだ。
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