■車体寸法がベンツEQAに近い
新車市場は、世界的にSUVに人気が集中する傾向にあり、そこにいよいよ日産のEVも加わることになる。
競合比較してみると、国内では、レクサスUX300eが580万円からだが、リチウムイオンバッテリーの容量は54.4kWhと、アリアに比べ12kWh近く少ない。これにより、同じ前輪駆動(FWD)比較のWLTCで、アリアが一充電走行距離450kmであるのに対し、UX300eは367kmとなる。約80kmの差だ。
マツダMX‐30のEVは、451万円からだが、リチウムイオンバッテリー容量は35.5kWhでしかない。アリアの半分強であれば、逆に高価ではないか。
輸入車では、メルセデスベンツのEQAがアリアとほぼ同じ車体寸法となり、リチウムイオンバッテリー容量も66.5kWhと近く、一充電走行距離はWLTCで422kmである。この車両本体価格が640万円からとなる。
BMWのiX3の価格はわからないが、クラスが上のiXの価格はローンチ・エディションが1155万円~。したがってEQAという一車種との比較とはいえ、アリアが輸入車の同等車格での競合になってくるとみれば、その車両本体価格はそれほど高過ぎるとはいえなくなってくるだろう。
外観の造形においても、輸入車と競える高い水準にあるといえるのではないか。
ほぼ同等のリチウムイオンバッテリー容量のなかで、どれほどの走行距離を稼ぐことができるかがEVのひとつの勝負所であり、加速性能については、エンジン時代と異なりモーター駆動であれば瞬発力は差が出にくい。
たとえば、米国のテスラ・モデルSは、その高性能車種においてはポルシェのタイカンに引けを取らない。高性能車種とはいえ、乗用の4ドア車がスポーツカーメーカーのEVと遜色ないところに、EVの面白さや、メーカーにとっては難しさ、恐ろしさが出る。
したがって、アリアを輸入車と比較して価格と魅力を探ることは、現実的な選択肢といえる。
■家に給電できる機能も採用するはず
そのうえで、アリアのさらなる利点を探るとすれば、公式の記載はまだ見当たらないが、当然ながらEVと家を結ぶヴィークル・トゥ・ホーム(VtoH)の実現も可能だろう。VtoHは、現状販売されている輸入車のEVでは不可能だ。
しかも、現在、環境省や経済産業省、そして地域別では東京都でEVおよびVtoH、あるいは太陽光発電との組み合わせで購入すると、リーフe+の試算で100万円近い補助を受けられる。これが適用されれば、660万円からの売り出しとなるアリアの販売の後押しにもなるだろう。
■おわりに
EVは、単にエンジン車からモーター駆動へクルマの機構が変わり、排出ガスゼロを実現するための代替案ではない。
クルマの価値を計り知れないほど拡張するものであり、それが健常者だけでなくあらゆる人の移動の自立を促し、なおかつ、VtoHや太陽光発電の活用などによって、暮らしを支える一部になっていくことができるのである。
携帯電話が固定電話を移動で使えるようにした電話の延長であるのに対し、スマートフォンはパーソナルコンピュータの機能を基本に通話もできるという、別次元の通信端末となったのと同じだ。
温室効果ガスの削減目標や、規制、それに付随するクレジット(違反金)支払いへの懸念しか目に入らず、エンジン車やHVの代替としかEVをみることのできない自動車メーカーは、おのずと淘汰されていくだろう。
EVの計り知れない可能性を10年以上前から検証し、実証してきたのが日産であり、そのうえで誕生するのがアリアだ。
発売からわずか10日で4000台の受注を得た背景にあるのは、そうした真摯な研究と、地道にリーフを売り続けてきた知見が裏付けとなり、大きな成果を生み出そうとしている。また初期に注文したのは、リーフで充分にEVの意味を理解した消費者ではないか。
ホンダeがわずか1000台、マツダMX‐30が500台、レクサスUX300eが135台などというわずかな台数で右往左往していることのほうがいまや異様であり、いかにも時代遅れであることを象徴している。
アリアは、海外メーカーと競争し、そして勝てる可能性を持ったEVであるのは間違いない。その価格は、けっして高過ぎないと思う。
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