■イプサムはなぜ中途半端な3ナンバー化への道を選んだか
初代ホンダ オデッセイとともに「ミニバンブーム」の立役者となったことは間違いないトヨタ イプサムがなぜ、2代限りで消滅してしまったのか?
その理由のひとつは――よく言われていることですが――ホンダ オデッセイに対抗するため、2代目イプサムのボディサイズとエンジンを「3ナンバー化」したことでしょう。
さらなる余裕を得るために、良かれと思って行った3ナンバー化でしたが、これによりイプサムは、初代にはあった「ジャストサイズな歓び」みたいな部分をなくしてしまった(あるいは減じてしまった)ということは否めません。
しかしそれ以上に、結局は、自らが創出した「これからのファミリーカーはセダンではなくミニバンだ!」というムードが世の中に対してハマりすぎ、数多くの同種の競合が増えてしまい、そのことによって存在感が薄まったから――というのが、根本的な理由だったのでしょう。
初代トヨタ イプサムは、そのほんわかとしたイメージとは裏腹の「革命的な車」だったと思うわけですが、その革命パワーがすごすぎたせいで、1990年代後半からは星の数ほどの(?)ミニバンが、同門からも他社からも登場することになりました。
一部を挙げるだけでも、
●トヨタ ガイア(1998年5月~)
●日産 プレサージュ(1998年6月~)
●日産 バサラ(1999年11月~)
●ホンダ ストリーム(2000年10月~)
●トヨタ ウィッシュ(2003年1月~)
●三菱 グランディス(2003年5月~)
●ホンダ エリシオン(2004年5月~)
●トヨタ アイシス(2004年9月~)
と、枚挙にいとまがありません。
こうなってくると、決して悪い車ではなかったものの、さしたるエッジ(特異な優位性)はなかった2代目のイプサムが埋没し、そして消えていくのは「まぁ必然だった」としか言いようがないのです。
このようにして「イプサム」という名前は消滅したわけですが、初代のほんわかしたイメージの奥深くにあった核のようなもの、すなわち「使い勝手が良くて、気持ちよく走ることもできる乗用車ベースのミニバンを作り、人々の暮らしに貢献する」という美しい本質は、その後のミニバン各車に受け継がれたような気がいたします。
また、初代イプサムが「しかめっ面をした車」ではなく「(一見する限りでは)ほんわか系の楽しい車」であったことも、ミニバンというものがその後、日本の各家庭にどんどん受け入れられていった理由のひとつなのだろうなぁ――とも思うのです。
■トヨタ イプサム(初代)主要諸元
・全長×全幅×全高:4530mm×1695mm×1660mm
・ホイールベース:2735mm
・車重:1390kg
・エンジン:直列4気筒DOHC、1998cc
・最高出力:135ps/6000rpm
・最大トルク:18.5kgm/4400rpm
・燃費:11.6km/L(10・15モード)
・価格:213万円(1996年式 S-セレクション)
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