臨場感溢れるカメラーワークは必見!! 『フレンチ・コネクション』を観る!!

■高架の上下に分かれて電車とのカーチェイス!!

容疑者が乗った電車を車で追いかける。高架下を猛スピードで走る車と高架上を暴走する電車のデッドヒートだ(oneinchpunch@Adobe Stock)
容疑者が乗った電車を車で追いかける。高架下を猛スピードで走る車と高架上を暴走する電車のデッドヒートだ(oneinchpunch@Adobe Stock)

 ポパイは、追っていたフランス人の殺し屋が電車に乗り込んだため、彼を捕まえ損ねる。

 普通の人間ならここで諦めるだろうが、執念深い彼は簡単にギブアップはしない。すぐさま道路に降り、その辺を走っていた車、いまはなきポンティアック ル・マンを警察特権で止めて無理やり奪い電車を追っかけるのだ。

 殺し屋は電車の窓から見えるポパイの車に驚き怯えて電車のなかを右往左往。銃をぶっ放して乗客を震え上がらせ、運転手を脅して次々と駅をスキップさせる。

 一方、車を飛ばすポパイは電車を視野に入れながら、行きかう車をよけたりぶつけたり、危うく乳母車とそれを押す母親をひき殺しそうになっても、決してスピードを緩めない。時速145キロで25ブロック、信号無視で突っ走る!

 『ブリット』がクールでスタイリッシュだったのに比べると、こちらは臨場感とリアリティがパワーアップ。心臓に悪いくらいのスリルがウリだ。

 そもそも、車と電車のチェイスということ自体、これが初めてだと思うし、相手を電車にしたことで、車内の乗客たちのパニックもスリルをより盛り上げる。同時多発的にさまざまな事態が起こり、観ているほうのテンションもあがりっぱなしなのだ。

 ちなみにカーチェイスのとき『ブリット』は音楽ナシだったが、本作の場合もナシ。この辺もダントニのこだわりなのかもしれない。

 撮影もハードだったらしく、ハックマンはDVDの特典映像で「車はクラッシュさせたので3台使用した。撮影していることを知らなかった人が実際にひょっこり現れ、びっくりして鉄柱に車をぶつけてしまったこともある」などと激白しているから怖ろしい。

■ほぼ無許可でのゲリラ撮影が生み出した臨場感

情け容赦ない粗暴な刑事が猥雑な街で巨悪を追う……観光地然としたニューヨークとは別の一面が垣間見られる(EarthScape@Adobe Stock)
情け容赦ない粗暴な刑事が猥雑な街で巨悪を追う……観光地然としたニューヨークとは別の一面が垣間見られる(EarthScape@Adobe Stock)

 というのもこの撮影、NYPDの協力はあったものの、ニューヨークから許可を得ずに行ったらしく、スクリーンに映っている衝突シーン等の多くは現実のもので、唯一計算されたのがくだんの乳母車の女性だけだったという逸話が残っているほど。

 とんでもない臨場感は、そういうゲリラ的な撮影だったからこそなのだろう。

 ハックマンは顔が映るシーンだけ実際に運転し、危険なスタントでは『ブリット』のカーチェイスを担当した大ベテランのスタントマン、ビル・ヒックマンが担当している。

 彼が運転する車の後部座席に乗ってカメラを回したのはフリードキン自身。カメラマンにはみんな子どもがいたので、独身だったフリードキンが危険な役を買って出たというのだ。

 そこで、もうひとつの『ブリット』との共通点が、このスタントマンのビル・ヒックマン。黒縁眼鏡が印象的な彼は『ブリット』のときは殺し屋としてダッチチャージャーを運転しているだけでセリフはなかったが、今回、スタントマンとしてだけではなく役者としても出演しセリフもある。

 ポパイの熱血ぶりが気に入らない、反目し合う同僚役で登場し、ラストシーンで大きな役割を果たしているので注目して頂きたい。

 ちなみに、プロデューサーのダントニは本作のあと、『重犯罪特捜班/ザ・セブンアップス』(73)という刑事ドラマでついに自らメガホンを握る。本作の主演は『フレンチ・コネクション』でポパイの相棒を演じてアカデミー助演男優賞にノミネートされたロイ・シャイダー。

 もちろん、ヒックマンが役者&スタントマンとしてここでも参加し、マンハッタンを疾走する迫力のカーチェイスがある。なぜか車もポンティアック(こちらはポンティアック・ベンチュラ・スプリント・クーペ)という共通点まで!

 この作品のカーチェイスには銃撃戦もプラスされていて、のちのその手のカーアクションに影響を与えたのは確かだ。ダントニは、このあとも映画やTVを製作しているが、そのほとんどがカーアクション。徹底しているのだ。

 クールな『ブリット』とリアルな『フレンチ・コネクション』。カーアクション映画を大きく変えたこの2本が同じプロデューサーだったというのは面白い。彼の車への偏愛が映画史を変えた、ということになりそうだ。

●解説●

 ニューヨーク市警(NYPD)のドイルことポパイは、狙った獲物は決して逃さないスゴ腕刑事。そんな彼が相棒ラリート訪れたバーで、羽振りのいい男を目撃する。刑事のカンが何かあると告げ、ポパイたちはその男の周囲を調査し始める。どうもそれは、大きなフランスとのドラッグ取引のようだった……。

 プロデューサーのダントニは、新しい刑事ドラマのスタイルを目指し、TVのドキュメンタリー出身のウィリアム・フリードキンに白羽の矢を立て、それが大成功するかたちになった。

 オスカーにノミネートされたカメラマン、オーウェン・ローズマンもドキュメンタリー出身で、長編映画は本作が初めて。その後、フリードキンとは、これまた世界を震撼させ、オカルト映画の金字塔となった『エクソシスト』(73)でも組み、再びフリードキンとともにオスカーにノミネートされた。

 また、『フレンチ・コネクション』には続編になる『フレンチ・コネクション2』(75)があり、こちらも前作に負けず劣らず面白い。監督は『グラン・プリ』(66)で紹介したジョン・フランケンハイマー。

 ハックマン扮するポパイが宿敵を追ってマルセイユに渡り逮捕劇を繰り広げる。本作のポパイのチェイスは何と自分の足。ヨレヨレボロボロになるまで走る姿を執拗に追いかけ、こちらもチェイス映画の伝説的1本になっている。

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「フレンチ・コネクション」
デジタル配信中
(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
発売:ディズニー・スタジオ・ジャパン

【画像ギャラリー】若き日のジーン・ハックマンは本当にポパイそっくり!? 『フレンチ・コネクション』で伝説のカーチェイスを堪能!!

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