天才エンジニアにしてレース界の革命家、コーリン・チャップマンが生み出したロータスの名車たち【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】

ライトウエイトスポーツの理想を具現化した「ロータス エラン」

天才エンジニアにしてレース界の革命家、コーリン・チャップマンが生み出したロータスの名車たち【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】
ロータス エラン。リトラクタブルライトのオープンカーという、ライトウエイトスポーツのお手本ともいうべきモデルで、後年に多くのフォロワーを生んでいる
天才エンジニアにしてレース界の革命家、コーリン・チャップマンが生み出したロータスの名車たち【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】
標準の2シーターから2+2に変更されたエラン+2。シート増設のためホイールベースとトレッドが拡大され、ヘッドライトまわりのデザインも変化している

 1962年にロータスからリリースされた「エラン」は、北米市場も意識したオープンライトウエイトFRスポーツカー。エリートの後継ともいえるモデルだが、エリートの弱点であったフレーム剛性の低さをカバーするため、ロータス初のスチール製バックボーン型フレームを採用し、軽量なFRP製ボディを搭載。フロントにダブルウィッシュボーン、リアにはストラット型サスペンションが装備された。軽量な車体かつ剛性の高いフレーム、そして路面追従性に優れたサスペンションの組み合わせは理想的な走行特性を生み出し、当時最も優れたハンドリング性能を発揮するモデルのひとつといわれている。

 エンジンはフォード製をベースにロータスがコベントリー・クライマックスと共同で開発したツインカムヘッドを組み合わせたもの。初期のエランは1.5リッターエンジンを搭載していたが、これはすぐに1.6リッターバージョンに変更されている。人気モデルとなったエランはS4(シリーズ4)にまで進化し、1975年まで生産が続けられた。

 初期型エランの車重は約680kgと軽く、バージョンが進むにつれてやや重くなるものの、シリーズを通して小気味よく走るライトウエイトスポーツであり続けた。なお、1990年に新たなエラン(M100)が誕生するが、チャップマン没後のモデルであり、今回は割愛する。

レーシングカーデザイナーとしてのコーリン・チャップマン

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1978年に登場し、王座を獲得したグランドエフェクトカーのロータス79。グランドエフェクトの有効性をいち早く見抜いたチャップマン最大の成功作 ©Lotus Cars

 初めて製作したマーク1でレースに出場したことからわかるように、コーリン・チャップマンは、市販車の製造と同様にレースにも情熱を注いでいた。1950年代には早くもフォーミュラカーの製造販売を開始し、そのマシンは高性能を発揮。やがて自らチームを率いてF1GPに打って出ることになり、1963年にはジム・クラークのドライブによって初のチャンピオンを獲得している。

 ロータス設立当初は、マシン設計はもちろん製作も自身の手で行っていたチャップマンだったが、会社経営やチーム運営も手掛けるようになると、設計作業そのものは他のスタッフに委ねるようになった。しかし、それ以降もマシンのコンセプト決定には深い関与を続けていた。

 エンジンのミドシップマウントやサイドラジエター、そして現代に至るまでレーシングカーデザインの根幹をなしているグランドエフェクトなど、ロータスがF1にもたらした革新は多い。そのすべてがチャップマンによる発明というわけではないが、新技術の可能性を評価し、導入を決断する際にチャップマンのセンスが大いに発揮された。

 新たな技術に傾倒するあまり、時には失敗作を生み出してしまうこともあったチャップマン。しかしその発想は紛れもなく天才のそれであり、ロードカーとレーシングカーの双方に多大な影響を及ぼすカリスマであるのは間違いない。

国内スーパーカーブームの主役「ロータス ヨーロッパ」

天才エンジニアにしてレース界の革命家、コーリン・チャップマンが生み出したロータスの名車たち【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】
レーシングカーと同じミドシップエンジンレイアウトを採用したヨーロッパ。車高の低さもこのマシンの特徴で、ライバルより低い空気抵抗も武器になった
天才エンジニアにしてレース界の革命家、コーリン・チャップマンが生み出したロータスの名車たち【レースカーデザイナーが手掛けたスーパーカー】
車体後部中央にマウントされるエンジン。レーシングカー同様の構成と車重の軽さ、そして優れたサスペンション設計によりエランをしのぐ操縦性を披露した

 1970年代半ばの日本国内は、空前のスーパーカーブームの真っただ中にあった。ブームのきっかけは少年誌に連載されたレースマンガ「サーキットの狼」で、主人公の風吹裕也が物語の序盤でドライブしていたのがロータス「ヨーロッパ」。

 この作品で登場したテクニック「パワースライド」や「幻の多角形コーナリング」を覚えている人も多いだろう。ポルシェやフェラーリ、そしてランボルギーニなど、高出力のライバル車を向こうに回し、パワーの不利をハンドリング性能で補いながら戦うヨーロッパは、読者にとってヒーローそのものだった。

 そもそもヨーロッパは廉価なミドシップスポーツとして開発されたマシンであり、エラン譲りのスチール製フレームにFRP製ボディを載せ、軽量な車体とバランスのよさで抜群の操縦性を発揮した。エランと異なるのはエンジンが後輪の直前に搭載されるミドシップマウントなことで、これが操縦性の向上に大きく貢献した。また、車重はエランよりさらに軽い610kgというのもヨーロッパの特徴だった。

 1966年に発売された初代ヨーロッパのエンジンとトランスミッションはルノー 16からの流用だった。初代モデルに搭載されたエンジンの排気量は1470ccだが、後年には1565ccに拡大されている。

 なお、初代モデルはイギリス国内での販売を行わなかったため、英国車でありながら右ハンドル車が存在しなかった。1972年にはフォード製エンジンをベースにしたツインカム&ビッグバルブ仕様が登場し、これがロータス ヨーロッパ“スペシャル”と呼ばれた。

 コーリン・チャップマンは、1982年12月に心臓発作のため54歳で急逝してしまう。ロータスカーズとロータスF1チームは残されたスタッフが引き継いだが、強烈なカリスマを失いながらも関係者の懸命な努力で存続されたF1チームは、1994年のシーズン終了後に活動を休止。ロータスカーズはその後オーナー企業が何度か変わり、現在でも市販車の製造を続けている。

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