「ぶっちぎれ、技術の日産」というキャッチコピーを覚えている方は多いだろう。自ら「技術の日産」を名乗るだけあって、e-POWERやプロパイロットなど、日産が世界に先駆けて取り入れた技術はたくさんある。
そして、日産には、アイディア力もある。たとえば、いま流行りの背高ラージミニバンの先駆車となったのは、日産のエルグランドだ。
1997年に登場した初代エルグランドは、「大人数を乗せて快適に移動する空間」というコンセプトがヒットし、飛ぶように売れた。しかしいまでは、王者アルファードの前に撃沈。生き残りを賭け、2020年10月にビッグマイナーチェンジが行われたが、それも大した功を奏すことはなく、エルグランドはもはや、虫の息といっていいだろう。
日産にはほかにも、流行のきっかけをつくったものの、流行り始めたころには息切れしていて、撤退…、というクルマがいくつかある。今回は、そんなクルマたちを振り返りながら、今の時代にどんな姿で蘇ればヒットモデルとなるのか、考えてみようと思う。
文:吉川賢一
写真:NISSAN
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3列シートコンパクトミニバンの先駆け「キューブキュービック」
国内市場で、3列シートのミニバンが流行し始めたのが、ちょうど2000年頃。そんなミニバンブーム初期である2003年9月、日産は「ミニバンでは少々大きすぎる」という顧客をターゲットに、2代目キューブ(2002年-2008年)に対しホイールベースを170ミリ延長し、折り畳みできる3列シートを装備した、5ドアコンパクトミニバン「キューブキュービック」を発売した。
キューブキュービックは、アイディアとしては斬新であったが、わずか17センチの拡張では、人が収まるはずがなく、3列シート車にしては狭すぎた。しかも、3列目を折りたたんだとしても、荷室はさほど大きくならず、ミニバンとしての実用性には欠けていた。そして、キューブキュービックは、2代目キューブの終了と共に、消滅してしまった。
3列シートのコンパクトカーは、いま超人気のカテゴリだ。ホンダのフリードは、2020年登録車販売台数で第6位(ホンダで最も売れた登録車となった)、トヨタのシエンタは第8位にランクインしている。
キューブキュービックも、弱点であった荷室パッケージングを見直し、タイムレスな四角いデザインを継続しながら、e-POWERやEVを搭載して出ていれば、シエンタやフリードに負けない「名車」と言われる存在になれたのではないかと、残念でならない。
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