ジューク、キューブキュービック、ラシーン…日産はいつも「早すぎた」で失敗する?

元祖コンパクトSUV「ジューク」

 2020年のロッキー/ライズ人気、そして2021年のヤリスクロス人気と、いま空前のコンパクトSUVブームとなっている日本市場。しかし、そんなブームを待たずに姿を消してしまったのが「ジューク」だ。

 欧州市場では2代目が販売されているジュークだが、日本では販売されることはなく、初代ジュークの生産終了(2019年)と共に撤退となってしまった。

初代ジュークのデビューは、今から10年前の2010年6月。C-HRよりも6年、ヴェゼルよりも3年も早く登場しており、日本市場において、コンパクトSUVのパイオニアだ
初代ジュークのデビューは、今から10年前の2010年6月。C-HRよりも6年、ヴェゼルよりも3年も早く登場しており、日本市場において、コンパクトSUVのパイオニアだ

 コンセプトカーがそのまま飛び出してきたかのようなインパクトあるデザイン、走りの良さ、コンパクトなサイズ、そしてリーズナブルな価格で提供されたことが大いに受け入れられた、ジューク。

 当時日産社員だった筆者は、とある現場で、ボディに偽装をした初代ジュークの最終実験車を目にしていた。当時は、どう見てもカッコいいとは思えなかった。前後が短く、背が高く、タイヤもアンバランスに大きい。「デザイナーの暴走、どうしてあんなのが出てきたのだ」と同僚と話していたのを思い出す。

 正直なところ、筆者レベルのデザイン感度だと、売れるとは思っていなかった。しかし、デビューするや否や世界中で大ヒット。「キモカワ」、「ブサカワ」など、散々言われていたが、あの「癖の強さ」がかえってよかったのであろう。筆者の父も、知らぬ間にジュークターボを買っていた。

デビューの半年後に登場した1.6L直噴ターボ(MR16DDT)は、190ps/24.5kgmを発生。適度にスポーティな足回りのおかげで、ジュークのコンパクトなボディを悠々と走らせることができた。
デビューの半年後に登場した1.6L直噴ターボ(MR16DDT)は、190ps/24.5kgmを発生。適度にスポーティな足回りのおかげで、ジュークのコンパクトなボディを悠々と走らせることができた。

 日産としては、キックスにその座を譲った形といいたいのだろうが、今ヒットしているのは、ヤリスクロスやロッキー/ライズのようなボディサイズと価格帯のマイクロSUVだ。キックスは、ボディサイズはヤリスクロスよりちょっと大きい程度だが、価格が高すぎる。

 初代ジュークのサイズで、1.0リッターターボエンジンのSUVが出ていれば、「走りの楽しいマイクロSUV」として、善戦できたかもしれない(その姿に最も近いのが日産がインドで販売している「マグナイト」なのだが)。

2代目ジュークは、欧州を見据えて、ワイドボディ(幅を広げた)としたモデルチェンジをした。だが、日産の足元である国内市場を捨てた判断は、失敗だったと筆者は考えている
2代目ジュークは、欧州を見据えて、ワイドボディ(幅を広げた)としたモデルチェンジをした。だが、日産の足元である国内市場を捨てた判断は、失敗だったと筆者は考えている

クロスオーバーSUVの先駆車「ラシーン」

 ホンダヴェゼルや、トヨタヤリスクロスなど、いま世界的にも最もアツいカテゴリである、クロスオーバーSUV。

 このクロスオーバーSUVの先駆車といわれるクルマはたくさんあるが、「クロカン風味を楽しみつつ、街中で使いやすいクルマに仕立てた」という意味では、このラシーンや、同年に発売された初代トヨタRAV4あたりが先駆車だったのではないか、と筆者は考える。

1994~2000年、一世代で消滅したラシーン
1994~2000年、一世代で消滅したラシーン
チェックのシート柄、独立式のメーターパネルなど、シンプルなインパネなど、タイムレスなデザインはまたちょっとカッコよく見える
チェックのシート柄、独立式のメーターパネルなど、シンプルなインパネなど、タイムレスなデザインはまたちょっとカッコよく見える

 実はラシーンは、サスペンションは四輪独立懸架、かつ4WDのみの設定で、クロカンほどのタフな走破性はないものの、昨今のSUV風味のクルマよりも本格的だ。

 「ラシーン」という車名も、進路を測る「羅針盤」に由来し、当時のイメージキャラクター、ドラえもんによるCMでは「ぼくたちのどこでもドア」というキャッチコピーも登場。「どこへでも行けるラシーンで、旅に出かけよう!!」という提案は、まさにクロスオーバーSUVとしての使い方だ。

 だが、よりSUVらしかった当時のRAV4に対し、若干穏やかな雰囲気であったラシーンは、ジープやパジェロといった本格派がもてはやされていた90年代では「ライト過ぎ」に見えたのだろう。さほど人気が出ず、2000年にその生涯を終えることとなってしまった。

 しかし、実は昨今のキャンプブームによって、いまラシーンの人気が高騰している。専門店によるカスタムを楽しむユーザーもいるほどだ。ラシーンは、あと30年登場が遅ければ、大人気モデルとなっていたかもしれない。

この角ばったフォルムは、現代でも十分通用するデザインだ
この角ばったフォルムは、現代でも十分通用するデザインだ

次ページは : こんなに「枠」を発掘できるのに…

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

S-FR開発プロジェクトが再始動! 土屋圭市さんがトヨタのネオクラを乗りつくす! GWのお得情報満載【ベストカー5月26日号】

不死鳥のごとく蘇る! トヨタS-FR開発計画は再開していた! ドリキンこそレジェンドの土屋圭市さんがトヨタのネオクラシックを一気試乗! GWをより楽しく過ごす情報も満載なベストカー5月26日号、堂々発売中!