元祖コンパクトSUV「ジューク」
2020年のロッキー/ライズ人気、そして2021年のヤリスクロス人気と、いま空前のコンパクトSUVブームとなっている日本市場。しかし、そんなブームを待たずに姿を消してしまったのが「ジューク」だ。
欧州市場では2代目が販売されているジュークだが、日本では販売されることはなく、初代ジュークの生産終了(2019年)と共に撤退となってしまった。
コンセプトカーがそのまま飛び出してきたかのようなインパクトあるデザイン、走りの良さ、コンパクトなサイズ、そしてリーズナブルな価格で提供されたことが大いに受け入れられた、ジューク。
当時日産社員だった筆者は、とある現場で、ボディに偽装をした初代ジュークの最終実験車を目にしていた。当時は、どう見てもカッコいいとは思えなかった。前後が短く、背が高く、タイヤもアンバランスに大きい。「デザイナーの暴走、どうしてあんなのが出てきたのだ」と同僚と話していたのを思い出す。
正直なところ、筆者レベルのデザイン感度だと、売れるとは思っていなかった。しかし、デビューするや否や世界中で大ヒット。「キモカワ」、「ブサカワ」など、散々言われていたが、あの「癖の強さ」がかえってよかったのであろう。筆者の父も、知らぬ間にジュークターボを買っていた。
日産としては、キックスにその座を譲った形といいたいのだろうが、今ヒットしているのは、ヤリスクロスやロッキー/ライズのようなボディサイズと価格帯のマイクロSUVだ。キックスは、ボディサイズはヤリスクロスよりちょっと大きい程度だが、価格が高すぎる。
初代ジュークのサイズで、1.0リッターターボエンジンのSUVが出ていれば、「走りの楽しいマイクロSUV」として、善戦できたかもしれない(その姿に最も近いのが日産がインドで販売している「マグナイト」なのだが)。
クロスオーバーSUVの先駆車「ラシーン」
ホンダヴェゼルや、トヨタヤリスクロスなど、いま世界的にも最もアツいカテゴリである、クロスオーバーSUV。
このクロスオーバーSUVの先駆車といわれるクルマはたくさんあるが、「クロカン風味を楽しみつつ、街中で使いやすいクルマに仕立てた」という意味では、このラシーンや、同年に発売された初代トヨタRAV4あたりが先駆車だったのではないか、と筆者は考える。
実はラシーンは、サスペンションは四輪独立懸架、かつ4WDのみの設定で、クロカンほどのタフな走破性はないものの、昨今のSUV風味のクルマよりも本格的だ。
「ラシーン」という車名も、進路を測る「羅針盤」に由来し、当時のイメージキャラクター、ドラえもんによるCMでは「ぼくたちのどこでもドア」というキャッチコピーも登場。「どこへでも行けるラシーンで、旅に出かけよう!!」という提案は、まさにクロスオーバーSUVとしての使い方だ。
だが、よりSUVらしかった当時のRAV4に対し、若干穏やかな雰囲気であったラシーンは、ジープやパジェロといった本格派がもてはやされていた90年代では「ライト過ぎ」に見えたのだろう。さほど人気が出ず、2000年にその生涯を終えることとなってしまった。
しかし、実は昨今のキャンプブームによって、いまラシーンの人気が高騰している。専門店によるカスタムを楽しむユーザーもいるほどだ。ラシーンは、あと30年登場が遅ければ、大人気モデルとなっていたかもしれない。
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