■「丸」から「直線」へ。背景には「煽り運転」が??
ムーヴラテから始まった「ぬいぐるみ」のデザイン手法が終焉した理由。
それは、ひとつに「若い女性たちの美意識や価値観が変化したから」ということであり、もうひとつは「悪質な煽り運転が増加したから」だと考えられます。
昭和中期の少女マンガのような「女子のお目々はキラキラで、お洋服はフリフリなのがカワイイ!」みたいな美意識と価値観は、さすがに昭和後期の頃にはすでに廃れ、若い女性たちは「シンプルビューティ」な世界観を志向するようになっていました。
が、そういった美意識(キラキラでフリフリこそがカワイイという感覚)も一部でまだ若干強めに残っていたのが、ムーヴラテが誕生した2004年、つまり平成中期という時代でした。
しかし時代が進んでミラココアが登場した2009年、つまりは平成の後半ぐらいになると「フリフリよりもシンプルなほうがカワイイし、カッコいい」と感じる若い女性がより多くなりました。
その結果としてミラココアは、同じく「ぬいぐるみ系」ではあるものの、ムーヴラテと比べれば甘み成分が減じているというか、けっこうシンプルな線で構成されるデザインに変わっています。
そしてその傾向=フリフリではなくシンプルな美しさを求める傾向がさらに強まっていったことは、同じく主に女性ユーザーをターゲットとして2016年(平成末期の28年)にデビューした、ダイハツ ムーヴキャンバスのデザインを見れば明らかです。
さらに、2018年(平成30年)に誕生したダイハツ ミラトコットの「ほぼ男女兼用」といったデザインセンスを見れば、完全に明白だといえるでしょう。
「ぬいぐるみっぽい可愛さ」では、もはや若い女性に響かない時代になったのです。
そして、これと同時にぬいぐるみ系絶滅の遠因となったのが「煽り運転」です。
簡単に言いますと、いかにも可愛らしい感じのデザインの軽自動車に乗っていると、けっこう横柄なドライバーから煽られちゃうんですね。
もちろんこれをお読みの男性ドライバー各位は、そんなダサい運転などしていないことは知っています。でも一部にいるんですよね。
で、超カワイイ形のムーヴラテとかに乗っていると、そういった輩からの被害に遭う可能性が高まることで、あまりにもカワイイ系なデザインの車は女性ユーザーから敬遠されるようになった――という事情もあるようです。
以上の流れにより、ダイハツが発明した「ぬいぐるみ系軽自動車」という系譜は途絶えたわけですが、筆者自身は――当然買いはしませんが――ぬいぐるみ系軽自動車が街をほのぼのと走っている光景を見るのは、決して嫌いではありません。
それゆえ「世の中に1車種ぐらいはぬいぐるみ系があってもいいんじゃないか?」と思っているのですが、まぁ当の女性ユーザーがあまり好まなくなったので、仕方ないですね。
■ダイハツ ムーヴラテ 主要諸元
・全長×全幅×全高:3395mm×1475mm×1630mm
・ホイールベース:2390mm
・車重:820kg
・エンジン:直列3気筒DOHC、659cc
・最高出力:58ps/7600rpm
・最大トルク:6.5kgm/4000rpm
・燃費:19.4km/L(10・15モード)
・価格:112万3500円(2004年式・X)
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