毎年、さまざまな新車が華々しくデビューを飾るその影で、ひっそりと姿を消す車もある。
時代の先を行き過ぎた車、当初は好調だったものの、市場の変化でユーザーの支持を失った車など、消えゆく車の事情はさまざま。
しかし、こうした生産終了車の果敢なチャレンジのうえに、現在の成功したモデルの数々があるといっても過言ではありません。
訳あって生産終了したモデルの数々を振り返る本企画、今回はダイハツ ムーヴラテ(2004-2008)をご紹介します。
文/伊達軍曹 写真/DAIHATSU
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■“おおらか新スペース”をコンセプトに女性の生活に寄り添ったムーヴ ラテ
「ぬいぐるみ系」という、自動車としては前代未聞のジャンルを創出して2004年に発売された、主に女性ユーザーをターゲットとした軽トールワゴン。
その後2009年、「ぬいぐるみ系」としての要素はダイハツ ミラココアに、軽トールワゴンとしての要素はダイハツ コンテに引き継いだうえで廃番となったが、ある種の新ジャンルを作ったことだけは今なお評価したい一台。
それが、ダイハツ ムーヴラテです。
ムーヴラテは2004年8月、3代目ダイハツ ムーヴの派生車種として誕生しました。
ターゲットとしたのは「リラックスしたライフスタイルを志向する女性」で、ほのぼの系のぬいぐるみのようなフロントマスクと全体のフォルムに、広くてなごめる室内と、なかなか便利な機能装備や収納などを組み合わせていました。
ちなみに車名はイタリア語でミルクを意味する「ラテ」から採られていて、「コーヒーや料理にミルクを加えると、豊かでコクがある味わいになるのと同様に、ムーヴラテも、生活に潤いや豊かさをプラスするクルマである」という思いが込められているそうです。
搭載エンジンは直列3気筒DOHC12バルブ(58ps)とインタークーラー付きターボ(64ps)の2種類で、トランスミッションは前者が4速AT、後者には電子制御ロックアップ機構付き4速ATが組み合わされたわけですが、この車の場合はそんな話をするよりも、デザイン等について語るべきでしょう。
デザインは内外装とも“丸”がモチーフで、とにかくすべての角を丸め、丸目のヘッドランプも採用したフロントマスクはまさにぬいぐるみ的。
インテリアも、ドアトリムやドアハンドル、メーター、インパネクラスターなどに円形を繰り返し用いています。
フロントシートには、縫い目とボタンによって背もたれ部分が「スマイルマーク」に見えるという小ワザも採用されました。
このように、「ぬいぐるみっぽい車」という前代未聞のジャンルとなったダイハツ ムーブラテは、冒頭付近で述べたとおり、ぬいぐるみ的な部分を2009年登場のダイハツ ミラココアへと引き継ぎ、そのミラココアも多くの女性ユーザーに長らく愛されました。
しかしミラココアの実質的な後継モデルとして2018年に登場したミラトコットは、同じく主に女性ユーザーをターゲットとする軽自動車ではありましたが、ぬいぐるみ系からユニセックス(男女兼用)的なデザインテイストへと大きく変貌。
そのため、ダイハツ ムーヴラテから始まった「ぬいぐるみ系」の系譜は今のところ、ミラココアを最後に途絶えています。
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