日本の高級車を具現化した「クラウン・ロイヤルサルーン」の価値とは
クラウンのライバルになる高級セダンといえば、メルセデスEクラス、BMW 5シリーズ、アウディA6、レクサスではGS(生産終了)などが思い浮かぶ。どのモデルも、上質な造りと、ガッシリとした走りの良さが印象的だ。スポーツセダンという言葉がよく似合う。
クラウンも、これらのライバルに近づこうと、大幅なアップデートをおこなってきた。結果として、現行の15代目クラウンでは、柔和な乗り味(ロイヤルサルーン)を一新し、「ニュルブルクリンクで鍛えた走り」を前面に押し出している。
確かに若者受けは良さそうだが、クラウンが欧州車のような乗り味になる必要があったのか、筆者は疑問に思う。
クラウンはアウトバーンを走行するわけではないし、荒れた石畳の上を走るわけでもない。ほとんどは最高速度100㎞/h程度の高速道路を走り、日本の綺麗な舗装路面の上を駆ける。日本の道を、穏やかな速度域で使用するからこそ生み出された、柔らかく心地よい乗り味は、クラウンの美学だったのではなかろうか。
欧州車と乗り味で勝負する役割は、レクサスが担ってくれるはずだ。クラウンはロイヤルサルーンのように、もっと日本車然としていたほうが「らしさ」が出ると思う。足は柔らかく、ハンドリングは穏やか、ボディロールもゆったりとしているほうが、クラウンらしい。
ロイヤルを廃止したクラウンは、これまで積み上げてきたクラウンブランドを手放してしまったように感じる。同時に、クラウンからロイヤルが消えることは、日本の伝統文化が一つ消えてしまうのに近い。伝統文化は守り、受け継ぎ、残していく必要があるのではないだろうか。
欧州車とは別次元の高級を体現してきたのがクラウンだったが、ロイヤル廃止後、その独創性は薄くなった。クラウンからロイヤルがなくなり、日本のクルマ全体的にも、日本ならではの特徴が少なくなっている。
グローバル化が進み、日本の外で販売されるクルマも多い。日本市場に腰を据えて作られるクルマは、数少なくなってきた。
こういったなかでも、少なくとも日本のために作られるクラウンには、しっかりと国内を見続けて欲しいと思う。日本が培ってきたクルマ文化をなくさないように、ロイヤルがなくなった後も、クラウンには日本らしいクルマ作りを、期待したい。
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