■ホンダのブランドイメージ向上を『シビック』に期待するしかない
オデッセイは、国内におけるホンダのブランドイメージを保つうえでも大切だ。2021年上半期に国内で売られたホンダ車のうち、N-BOXが1車種だけで35%を占めた。軽自動車全体では57%になり、そこにフィットとフリードを加えると78%に達する。
このように今のホンダの国内販売は、軽自動車と1.5L以下のエンジンを搭載する小型車が支えている。ホンダのブランドイメージも影響を受け、以前のようなスポーツカーの印象は薄れた。スズキやダイハツのような小さなクルマのメーカーになりつつある。
そこに歯止めを掛ける存在がオデッセイだ。本来ならスポーツカーのNSX、上級Lサイズセダンのレジェンド、あるいはアコードなどがホンダのブランドイメージを牽引すべきだが、これらは壊滅的に売れていないからオデッセイがこの役割を引き受ける。
シビックも有力候補だが、国内販売を一度終了しながら、その後に復活させ、セダンは改めて廃止する場当たり的な経緯を辿った。シビックにはスポーツモデルのタイプRもあるから、ブランドイメージの小型化を防ぐために大切な存在だが、力を発揮できていない。
シビックは優れた商品だから、先ごと披露された新型では、ホンダの基幹車種であることを改めて訴求したい。優れた走行安定性は、衝突被害軽減ブレーキとの相乗効果により、安全性を一層高められる。上質な乗り心地も、運転支援機能と結び付いて快適性をさらに向上させ、疲労を抑えることによって安全性に結び付く。
このようにシビックには、今のクルマに求められる「安心と快適」が備わる。先代型ではハッチバックの6速MT比率も30%と高いから、かつてのホンダが特徴としていた運転の楽しさやスポーティ感覚も味わえる。
中高年齢層とって、シビックは馴染み深い車種だが、30歳以下の人たちには存在感が乏しい。日本では2000年に3ドアのシビックが消滅して、2001年には初代フィットが発売され、ホンダ車のコンパクト化と低価格化が始まったからだ。
シビックの受け止め方は、世代によって大きく異なり、多角的な練り込んだプロモーションが必要になる。それを成功させると、ホンダのブランドイメージもバランスが保たれる。
■ホンダの上級車は『フリード』と『ヴェゼル』!?
一方のオデッセイは、先代型の4代目まではワゴン風のミニバンで、現行型の5代目はエリシオンと統合されてスライドドアを備えるハイルーフタイプに発展した。それでも27年間にわたり、ホンダが手掛けるミニバンの代表であり続ける。
オデッセイで上級車種の普遍的な価値を受け継ぎ、シビックで従来とは違う新しい価値を生み出せば、ホンダのブランドイメージが極端に小型化するのを防げる。
それをしないとホンダのブランドイメージはさらに小型化して、ホンダの上級車種は、実質的にフリードとヴェゼルに置き換わってしまう。
ホンダは国内市場をどのように発展させたいのか。現状ではそれが見えない。オデッセイの廃止を含めて、今の場当たり的な対処が続くと、国内で堅調に売られるホンダ車は、N-BOX+N-WGN+フィット+フリード+ヴェゼルに集約されてしまう。
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