世界初の自動運転レベル3レジェンドで500㎞ 一気に走ってわかった大切な実感【自律自動運転の未来 第20回】

■もし「レベル3」車両の近くを走ることになったら

 一方、レベル3搭載車が増えるとなれば、我々ドライバーはどこに注意を払うべきでしょうか?

 筆者はシステム稼働/停止に関わらず、レベル3搭載車には自車の前後に「条件付自動運転車」であることを知らせるHMI(Human Machine Interface/ ヒューマンマシンインターフェース/人間と機械がやり取りするための技術、そのための装置)が不可欠だと考えています。

 その点、レジェンドのHonda SENSING Elite搭載車では車体の前後バンパーに青色LEDが配置され、エンジン始動時は点灯しているため見分けがつきます。青色LEDは法規に定められていませんが、自車周囲へのアピールとなるので重要です。

 さらに車体後部には「条件付自動運転車」を示すステッカー(国の指定デザインで装着義務あり)が貼られています。

「レベル3」技術搭載車であることを示すステッカー。レジェンドの場合はリアのナンバープレートすぐ横に誇らしげに貼られていた(個人的にはもうちょっと目立って分かりやすくてもいい気が…)
「レベル3」技術搭載車であることを示すステッカー。レジェンドの場合はリアのナンバープレートすぐ横に誇らしげに貼られていた(個人的にはもうちょっと目立って分かりやすくてもいい気が…)

 ではレベル3搭載車の見分けが付いたとして、それを認識したドライバーは何に注意を払うべきでしょうか? 

 これは極めて簡単です。レベル3搭載車に対して、緊急時を除いて急な割り込みや急ブレーキをしないことです。当たり前のように思えますが、じつはとても大切です。

 レベル3稼働時はある意味、人(ドライバー)以上にシステムはセンシティブな状態です。複数のセンサーを使い自車周囲360度の情報を融合させているわけですが、レベル3稼働時は前方の安全確認に対してシステム(一義的には自動車メーカー)が責任を負うことになっているからです。

 センサーをフル稼働させながら、自車との接触可能性が高まる危険因子(急ブレーキや急な割り込み)を発見した場合には、その原因が迫り来るクルマ側にあったとしても自車がブレーキ制御で避けるよりほかには、レベル3搭載車は回避の手立てがありません。

 人が運転している場合であれば、ブレーキだけでなくステアリング操作で回避スペースへ進路を変えつつ、ホーンを使って自車の存在をアピールできます。

 しかし、現時点でのレベル3技術の使用は同一車線上に限定されているため、車線をまたいだステアリング操作での回避はシステムには許されていません。よって、唯一許された回避策がブレーキなのです。

 こうした危険が迫り来る状態では、当然ながら車内でTOR(運転操作要求)が発せられているものの、過去の本連載で詳細をレポートしているように、TORに従ってドライバーが運転の再開に至るまでにはタイムラグが発生します。

自動運転技術搭載車が公道に増えると、「そうした技術がまったく搭載されていない車両との協調」が普及のカギを握ることになる。「自動運転技術」とは、非自動運転車との連携して、クルマ社会全体で進んでいくわけだ
自動運転技術搭載車が公道に増えると、「そうした技術がまったく搭載されていない車両との協調」が普及のカギを握ることになる。「自動運転技術」とは、非自動運転車との連携して、クルマ社会全体で進んでいくわけだ

 結局のところ、レベル3を支えるセンサーの精度は抜群に高く、電源構成にしても二重化による冗長性は担保されていますが、通常の運転状態ではあり得ない危険な割り込みや急ブレーキに対応するには、現法制度における車両制御上の限界があります。

 腫れ物に触るような過剰な対応は必要ありませんが、レベル3搭載車に遭遇したら“急”の付く運転操作は避けましょう。

■「レベル3」が搭載されていても「レベル2」で走行

 今回筆者は、そのレベル3技術を搭載したレジェンドに改めて試乗しました。Honda SENSING Eliteは普段使いでどんな一面を見せるのでしょうか?

 車載のカーナビで目的地である東北方面を設定し、早速、自動車専用道路である首都高速道路を走行します。ここでは復習の意味を兼ねACC(アダプティブクルーズコントロール)とLKAS(車線維持支援システム)を稼働させます。

 従来のHonda SENSINGでは、ACCとLKASは独立した機能でしたが、レベル3のHonda SENSING Eliteでは連動。ステアリング右側スイッチ群の右上にあるメインスイッチを押して、上下スイッチでACC速度を設定すれば、同時期にLKASも起動します。

 ほどなくして車線をしっかりと検知してACCだけの状態から、ACCとLKASによる自動化レベル2ハンズオン(以下、レベル2/B1。メーター表示は白とグリーン主体)状態となりました。

 取材時は雨天、しかも首都高速は朝の渋滞がまだ完全に解消されておらず交通量は多めです。

首都高のような、狭くて曲がりくねった道でも、レジェンドは(定められた条件に合致すれば)「ハンズフリー」が可能となる
首都高のような、狭くて曲がりくねった道でも、レジェンドは(定められた条件に合致すれば)「ハンズフリー」が可能となる

 そんな交通状況でも、ものの数十秒で一段上の運転支援技術である、自動化レベル2ハンズオフ(以下、レベル2/B2。メーター表示は白とブルー主体)状態となり、ドライバー責任のもと、ステアリングから手を離したままの走行環境が提供されます。

 筆者はこれまで数多くの運転支援車で計7万㎞以上走行し、各車のレベル2のB1とB2を試してきましたが、未だに首都高速道路でのレベル2/B2使用には緊張感が伴います。

 とくに今回のように天候が悪くて交通量が多めで、右に左にスパイラルバンクが続くような場面ではまったく気が抜けません。

 運転支援技術の使用には「ドライバー責任が稼働の条件」と国際的な取り決めがありますが、それ以前に自車周囲の状況がめまぐるしく変化する中でのレベル2/B2はやはり独特な運転環境です。

次ページは : ■「レベル2」作動中にも「段階」がある?

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