なぜインプレッサだけに“4WD”と“FF”車が設定されているのか

実はFFにこそスバルの真髄が? なぜインプレッサだけに“FF”車が設定されているのか!?

 スバル車のウリのひとつが「シンメトリカルAWD」。水平対向エンジンと組み合わせた独自の四輪駆動システムを採用することが特徴で、レヴォーグもフォレスターも全グレードで4WDを採用している。

 しかし、そのなかでインプレッサだけは4WD以外に、FFモデルも設定されてる。スバルといえば4WD! それなのに、なぜインプレッサだけFFがあるのか? モータージャーナリストの斎藤聡氏が解説する。

文/斎藤 聡
写真/SUBARU、ベストカー編集部

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■スバルの歴史を紐解くと!?

 スバルというとAWDのイメージが強いですよね。インプレッサWRXの世界ラリー選手権での活躍や、オンロードAWDを定着させたレガシィの功績によるところが大きいのだろうと思います。

 現在のスバルのラインナップを見ても、2輪駆動なのはダイハツからOEM供給を受けているジャスティと軽自動車、それからトヨタと共同開発したFRスポーツカーBRZだけ。純スバルの車種は、ほぼすべてがAWDというくらい、AWD比率が高くなっています。シリーズのなかでもFFがあるのはインプレッサ (含むG4)だけです。 

スバルのCセグハッチバックであるインプレッサスポーツ。純スバルの量産車としては数少ないFF仕様がある
もちろんインプレッサG4にもFFがある。スバルはAWD採用の車種比率が高くなっており、逆にFFのインプレッサは希少かもしれない

 では、なぜインプレッサにはFFが残っているのでしょうか。当然の疑問ですが、そう考えると話は逆にわかりにくくなってしまうかもしれません。

 確かにスバルはAWDを重要な技術と考えていますが、スバルの歴史を考えると、「AWD=スバル」ではないということがわかります。それよりも4WDに至る経緯がとてもユニークで興味深いものなんです。

■量産FFのブレイクスルー

 スバルの前身はご存知のように中島飛行機で、97式戦闘機や、「隼」と呼ばれる一式戦闘機などを製作、またゼロ戦にも搭載されたエンジン「栄」も中島飛行機製でした。

 終戦後、中島飛行機は富士重工となって(途中変遷はありますが)自動車の開発に乗り出します。

 航空機の技術を応用したフレームレスのモノコックボディを得意とし、モノコックフレームのバスや、FRで1.5Lの試作乗用車P-1(スバル1500)の開発を経て、大ヒット作となったスバル360を開発します。リアエンジンリアドライブ(RR)で、 2サイクル2気筒エンジンを搭載していました。

 この後やはりヒット作となった軽のキャブオーバーバンのスバル サンバー(RR)で自動車メーカーとしての基礎を築くと、1966年に水平対向4気筒エンジンを搭載したFFモデル=スバル1000を発表します。

初の水平対向エンジン縦置きのFFを採用したスバル1000。ドライブシャフトの端に取り付けるジョイントを工夫し、振動問題を解決した

 このスバル1000が、スバルにとってはとても大きな技術的な分岐点になるのです。

 試作車のP-1では、プロペラシャフトの重さと振動に課題を残していました。またフロアトンネルによって居住性が犠牲になることもネガティブなポイントでした。スバル360では、RRの弱点である横風安定性の弱さが課題として残されていました。

 そういったクルマ開発の経験から、プロペラシャフトのない、RRではない駆動方式のクルマ、つまりFFが小型車には理想的とスバルは結論付けたのでした。

 一方、エンジン形式はどうやって決まったのかというと、FFであるということが決まっており、オーバーハングが短いこと、デフがクルマの中心にあること、エンジン→デフ→トランスミッションがストレートなレイアウトが望ましい、というのがエンジン形式を決めるにあたっての条件だったのだそうです。

 横置き4気筒、縦置きV型4気筒、水平対向4気筒などの案が挙げられた末、水平対向4気筒に決まったのです。

 水平対向4気筒のFFを実現するにあたって、ドライブシャフトの上下動による有効長の変化を吸収するダブル・オフセット・ジョイントを発明しています。

 こうしてスバルの水平対向4気筒+FFという基本形ができあがったのです。つまり、FFはスバル車の廉価版ではなく基本形なのです。

写真はスバル1000にも搭載されたEA52型水平対向エンジンのドライブトレイン。1966年はトヨタ カローラやダットサン サニーがデビューした年でもあり、ともに国産自動車史の夜明けを飾ったと言っても過言ではない

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