■手をかけるほど良くなった珠玉のV12フィール
そんなこともあって、しばらくW140が手元にない日々を送っていたのだが、ある日、知人の販売業者が乗って現れた、ロリンザーのフルエアロをまとう1997年式の「S600L」に一目ボレ!
欲しくてしょうがなくなり、交渉して譲ってもらうことになった。V8を通り越して、一気に6.0リッターV12だ。これを2018年夏まで約12年にわたって愛車としていた。
実のところ購入時にはエンジンフィールが重く、乗り心地もドタバタで、W140の現役当時に広報車に乗ったときの印象とはだいぶ違っていたのだが、業者のアドバイスでフロントのサスペンションブッシュを新品に交換したところ、見違えるほど乗り心地がよくなって驚いた。
さらにエンジンについても、1気筒が死んで「V11」になっていたことが判明したのだが、「BARDAHL」というブランドの、たしか「リングイーズ」というケミカルがよいと教わり、その他も含めいろいろフルに注入してどんな変化があるのか試してみた。
すると、乗れば乗るほどレスポンスがよくなり吹け上がりが軽くなっていき、なんとダメだった1気筒も自然治癒してちゃんとV12になっていることも調べてわかった。メルセデスが誇るあの珠玉のV12のフィーリングが見事に復活したのだ。これも機会があればあらためてレポートしよう。
W140のV12というだけで、トラブルが頻発した初期モノの悪名高きイメージが強いのだが、売り主の業者さんが、「後期型はそれほど壊れない」と言っていたとおり、筆者も長いこと所有していたが、定番トラブルポイントであるエアコンもすでに修理済みだったおかげで、筆者が乗っていた間は問題なし。
従来の機械式から後期型では電子制御となったATも、13万kmたらず走ってもぜんぜん問題なかった。
細かいことでは冷却水漏れもあれば、ドアミラーを動かすとヒューズが切れるという症状が出て、調べると配線の被覆がモロくてショートしていた、なんていうこともあったが、生産から20年近くが経ったクルマとしては上々だったように思う。
W140が現役だったのは1992年から1998年までと、実はあまり長くなく、以降のSクラスはガラリと雰囲気が変わったのもご存知のとおり。
最近、W140の中古車の相場が上がってきているのも、そのあたりの価値が見直されているからに違いなく、Sクラスの歴史の中でもとりわけ異彩を放つモデルとして、今後も語り継がれていくことと思う。
筆者も最後に所有したS600Lは一生乗るつもりで購入したものの、事情により手離してしまったわけだが、なんとかして持っているべきだったかなと今でも思うことしきりである……。
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