王者トヨタ独走の裏でホンダ&日産はなぜ元気がないのか

ホンダ&日産の10傑入りはヴェゼルとノートのみながら実態は大健闘

ホンダヴェゼル(2021年7月販売台数6位:7573台/全長4330×全幅1790×全高1580mm)
ホンダヴェゼル(2021年7月販売台数6位:7573台/全長4330×全幅1790×全高1580mm)

 SUV(スポーツ多目的車)の人気は堅調で、それがライズやハリアーの販売好調にも通じているだろう。ホンダでベスト10入りしたのはヴェゼルだ。

 5ナンバーハッチバックという標準的な小型車として、ヤリスがあり、アクアもそうだ。日産ではノートだ。

 ヤリスは、ガソリンエンジン車の販売がハイブリッド車(HV)を上回るが、それでも4割以上がHVで、アクアとノートはHV専用だ。全体的には小型ハッチバック車のHV指向が、ベスト10入りの一つの牽引役になっていそうだ。

 まとめると、国内において5ナンバー車に対する期待が依然として高く、そこにHVやSUV、後席スライドドア付きのワゴンを重点的に投入しているのがトヨタであり、日産やホンダもそうした車種を持っているが、選択肢が限られている。選択と集中による戦略ともいえるが、販売の総力戦でトヨタに圧倒されている。

 それでも、日産やホンダの健闘ぶりを一つ述べるなら、全国の販売店数がトヨタは5000店以上あるとされ、日産とホンダは2000店ほどといわれる。トヨタは販売拠点において、数字上2.5倍の戦力を備える。

 1店舗当たりの月販売台数を試算すると、7月のヤリスは4.64台、ルーミーは2.96台、カローラは1.84台、アルファードが1.79台、アクアが1.58台、ライズが1.50台、ハリアーが1.35台、ヴィクシーが1.27台と、トヨタ勢はなる。

 このうちヤリスの内訳は、先に述べたようにハッチバック車が約6、ヤリスクロスが約4程度の比率なので(GRヤリスは1桁パーセンテージなので暫定的に省く)、概算として状況を知るうえで試算すると、ヤリスが2.78台、ヤリスクロスが1.85台と計算できる。

 これらに対し、ホンダ ヴェゼルは3.78台、日産 ノートは3.32台という計算結果だ。販売店の少ない日産とホンダは、1店舗当たりの販売台数で健闘しており、その視点ではトヨタに大きく負けているわけではない。各新車の商品性において遜色ない存在であることをうかがい知ることができる。

 20位まで広げて販売成績をみると、日産には5ナンバーミニバンでヴォクシーの競合となるセレナや、SUVのキックスが入り込んでいる。ホンダでは、5ナンバーワゴン車のフリード、ハッチバック車のフィットが入っている。

 ほかにスズキ ソリオも顔を出す。それらも1店舗当たりの販売台数で健闘しており、販売台数の総量のみで優劣を語るのは偏っているともいえる。

 2.5倍もの販売店数を誇るトヨタは一方で、かつて販売店系列があった時代には取り扱い車種が異なるため店舗が並ぶようにして出店されてきたこともあり、いまでは互いに競争相手となってしまう不利も考えられる。

 それでも20位まで広げてみたとき、トヨタにはRAV4、プリウス、シエンタ、パッソという車名がずらりと並び、外観の嗜好や、暮らしのなかでの使い勝手、旅先での楽しみ方など、消費者個々の様々な要望に対し選択肢が幅広いのは、さすがだ。

 豊富な品揃えは、トヨタの販売店へ行けば、自分に合ったクルマのどれかに出会えるとの期待を抱かせるだろう。

米国市場中心の販売促進と拡大戦略がホンダ・日産の分岐点に

3代目マーチは、欧州志向の走行感覚、使い勝手の良さや多彩な車体色があり、人気があった。しかし、4代目からタイ生産に切り替え、生産を合理化したものの、顧客が離れた
3代目マーチは、欧州志向の走行感覚、使い勝手の良さや多彩な車体色があり、人気があった。しかし、4代目からタイ生産に切り替え、生産を合理化したものの、顧客が離れた

 1990年代以降のグローバル化に際し、米国市場中心の販売促進と拡大戦略が、いま国内の差となっているといえるのではないか。加えて、消費者志向の見誤りもあったと振り返ることができる。

 日産は、2002年の3代目マーチで小型ハッチバック車の販売を大きく伸ばした。ルノーとの提携を活かし、欧州指向の走行感覚や、合理的な使い勝手、加えてトヨタ アクア誕生のときのようにパステル調の車体色なども豊富に設け、街に彩り豊かなマーチが溢れた。

 しかし、2010年の4代目マーチでタイ生産に切り替え、製造の合理化は果たしたが、日本の顧客の嗜好には不満の残る品質が目についた。

 アルファードの競合となるエルグランドは、技術の日産を象徴する走りのいいミニバンを強調しようと後輪駆動にこだわり、その間に快適志向の顧客を逃した。

 2010年の3代目で前輪駆動とし、室内の快適さを加えたが、アルファードはさらに航空機のビジネスクラスのような、あるいはストレッチリムジンの代替となるような室内空間を売りに、エルグランドを退けた。

フィットの基本的な価値観を19年保持し続けたことで、新型への購買意欲が薄くなり、販売が伸び悩んでいる(2021年7月販売台数13位:5300台/全長3995×全幅1695×全高1515mm)
フィットの基本的な価値観を19年保持し続けたことで、新型への購買意欲が薄くなり、販売が伸び悩んでいる(2021年7月販売台数13位:5300台/全長3995×全幅1695×全高1515mm)

 ホンダ フィットは、2001年に誕生し、欧州の小型ハッチバック車的な俊敏さで先行したトヨタ ヴィッツを、走りだけでなく使い勝手においても欧州流の合理性を採り入れ、瞬く間に市場を席巻した。センタータンクレイアウト構造は、シビックにも波及し、独創の存在となっていったのである。

 しかし、昨年フルモデルチェンジした4代目まで、基本的な価値観を19年保持しつづけたことが飽きを覚えさせたかもしれない。つまり、新車へ買い替える動機が薄くなったのだ。

 ステップワゴンは、ヴォクシー/ノアと競合する5ナンバーミニバンで、1990年代の初代は爆発的人気を呼んだ。ところがハイブリッド化で後れを取り、1モーター方式のi-DCDを搭載したのは2015年の5代目になってからだ。しかもi-DCDはリコールを起こした。ハイブリッド化の遅れはオデッセイにもいえ、顧客の志向と乖離してしまった。

 かつて、トヨタ車を上回ったり、トヨタ車にない新たな価値を生み出したりしてきた車種が、日産やホンダにはあった。

 しかし、日産もホンダも、拡大路線のなかで車種の絞り込みがあったり、新たな挑戦が薄れたり、ハイブリッド車の投入が遅れたりを含め、新車開発が経営の合理化のなかに飲み込まれ、あわせて、各社とも販売店系列をやめ統合する動きのなかで、圧倒的販売店数を誇るトヨタに総量でかなわなくなってきたのだと思う。

【画像ギャラリー】7月販売台数トップ10にランクインしたホンダヴェゼル&日産ノートの内外装をチェックする

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