電動化の前に最高に気持ちのいいエンジンに乗っておきたい! それは直6とロータリーエンジン

■やはりロータリーエンジンを今のうちに味わっておきたい

1990年4月~1995年8月まで生産されたユーノス・コスモ。世界初の市販車用3ローターエンジン「20B-REW(654cc×3)」そもそも最高出力333psで設計されていたが、当時の運輸省から横やりが入ったことで、280psの国内自主規制値(当時)にデチューンしたうえで発売されたという逸話を持つ
1990年4月~1995年8月まで生産されたユーノス・コスモ。世界初の市販車用3ローターエンジン「20B-REW(654cc×3)」そもそも最高出力333psで設計されていたが、当時の運輸省から横やりが入ったことで、280psの国内自主規制値(当時)にデチューンしたうえで発売されたという逸話を持つ

 レシプロエンジンに挑戦したロータリーエンジン(RE)にも猛者がいる。REは往復運動ではなく回転運動だから滑らかに回るし、クルージング時は静粛性も高い。

 また、パーツの構成点数が少ないため軽量かつコンパクトに設計できる。優れた整備性も美点のひとつだ。だが、2ローターのREはエンジン音がいま一歩だった。ときめかないのだ。

 とくにレース用にチューニングしたREは高回転でビーンビーンと耳障りなエンジン音を奏でる。この反響音の大きい、個性的な音色を好きになれない人も多かったはずだ。

 だが、その悪評を一変させたのがマルチロータリーである。レース用に開発された3ローターと4ローターのREは、サーキットで官能的なサウンドを奏でた。

 ストレートを駆け抜けるとき、カーンと突き抜けたサウンドを放つREは身震いするほど感動的だった。富士スピードウェイの長いストレートで何度も耳にしたが、これは芸術作品だ。

 が、4ローターのREはレーシングカー専用で、量産車には積まれていない。だが、3ローターのREは存在する。1990年4月に発売されたユーノス・コスモに搭載された20B-REW型エンジンだ。

世界初となる3ローターの20B型ターボは280psの最高出力と、41.0kgmという怒涛の最大トルクを発生した
世界初となる3ローターの20B型ターボは280psの最高出力と、41.0kgmという怒涛の最大トルクを発生した

 量産エンジンとしては世界初の3ローターREで、単室容積654ccのREを3つ重ね、これにシーケンシャルツインターボを組み合わせた。低回転時は1基だけ、高回転時は2基稼動させ、全域にわたって高効率の過給を行う。

 パワースペックはロータリー最強の280ps/41.0kgmだった。トランスミッションが3モード切り換え式の電子制御4速ATだったため、迫力はない。

 だが、ひと鞭当てると豪快な加速を披露する。最高出力は280psだが、これはお役所からのお達しによってデチューンしたため。最初の予定では300psをはるかにオーバーしていた。

 ロータリーエンジンは低回転域のトルクが細いと言われるが、3ローターREはトルク感が際立っていた。しかも驚くほど滑らかだ。

 静粛性も高いが、高回転まで回すと性格を変える。モーターのような、それまで味わったことのない異次元の加速を見せるのだ。素性のよさと王者の片鱗を見せ、耳に心地よいサウンドを奏でた。REの最高峰と言えるだろう。

■世紀のロータリーエンジンの名車、FD3S型RX-7

2002年4月、RX-7最後の限定車「スピリットR」が発売された。写真は2シーター5速MT仕様のタイプA
2002年4月、RX-7最後の限定車「スピリットR」が発売された。写真は2シーター5速MT仕様のタイプA
255psでスタートした13B-REW型エンジンは、4型で265psに、5型で280psにパワーアップ
255psでスタートした13B-REW型エンジンは、4型で265psに、5型で280psにパワーアップ

 しかし、20Bのユーノス・コスモの生産台数は少なく、現在では手に入りづらい。そうなると、生きているうちに乗っておきたいロータリーエンジン搭載車は、やはりFD3S型のRX-7になるだろう。

 人馬一体のシャープな動きとニュートラルなハンドリングを身につけた3代目のFD3S型RX-7は操る愉しさに満ちているからだ。

 パワーユニットは、大きく進化させた2ローターロータリーの13B-REW型だ。単室容積654ccの2ローターで、これに低回転時は1基だけ、高回転時は2基稼動させるシーケンシャルツインターボを装着している。

 最高出力は255ps/6500rpm、最大トルクは30.0kgm/5000rp。全域にわたって高効率の過給を行い、滑らかで力強い加速を実現していた。パワーウエイトレシオは4.9kg/psと、当時としては世界トップレベルにあった。トランスミッションはクロスレシオの5速MTと電子制御4速ATを設定する。

 サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンの4輪独立懸架だった。アーム類やリンクにはアルミ材を使用し、高い剛性を確保しながら軽量化を図っている。ロータリーエンジンをフロントミッドシップに搭載し、軽量で重心も低いからシャープなハンドリングを披露した。

 クルマはステアリングを切った通りに正確に向きを変える。限界は驚くほど高く、攻めの走りが似合うスポーツクーペだった。運転席に座った瞬間から「もっと速く走れ」とドライバーを急かせる。そんなクルマだった。

 無駄な動きのないシャープな走りが最大の持ち味だった。ヒール&トゥを駆使して最適なギアを選び、ブレーキングもほどほどにステアリングを切り込んでコーナーを駆け抜ける。スムーズな走りよりもリズムに乗ったダイナミックな走りが似合っているのだ。

 だが、初期モデルと中期モデルは限界付近の挙動がピーキーで、油断すると一気に挙動が乱れる。乗りこなすには繊細なテクニックと大胆さが要求されるが、これが魅力のひとつでもあった。

 FD3S型RX-7はマイナーチェンジのたびに進化を続けている。1995年春にリアスポイラーのデザインを変更し、大径のブレーキを採用した「タイプRZ」も加わった。

 1996年1月にはエンジンにメスを入れ、最高出力を265psにパワーアップしている。そして1998年12月にはついに自主規制枠いっぱいの280psに達し、最大トルクも32.0kgmに引き上げられた。

 シャーシを強化したファイナルバージョンが送り出されたのは2000年12月だ。そして2002年8月、排ガス規制への対応が難しいと判断し、RX-7の生産は終了した。

 マツダも電動化への対応を迫られており、もはや駆動用としてのロータリーエンジンはこの先出てこないだろう。

 理想は、2017年の東京モーターショーで公開されたRX-VISIONにロータリーエンジンを搭載し、デビューすることだが、どうやら難しそうだ。

2017年の東京モーターショーで公開されたマツダVISION-COUPE。ロータリーエンジンを搭載した、こんなにも美しいデザインの4ドアクーペとして登場したら……
2017年の東京モーターショーで公開されたマツダVISION-COUPE。ロータリーエンジンを搭載した、こんなにも美しいデザインの4ドアクーペとして登場したら……

次ページは : ■マツダは発電用ロータリーエンジン搭載車を2022年春に発売!

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