クルマのリアデザインにおいて、とても重要なポイントである「マフラー」。
左右どちらか一方からマフラーエンドを出したり、左右二本出し、センター出し、はたまた1980年代に一部で流行った竹やりマフラーのようにかちあげたりと、昔からクルマの個性を表現するマフラーのデザインパターンはいくつかあった。
しかし近年は、バンパーの一部にテールエンドの出口を設けたクルマや、そもそもマフラーが無いように見せるクルマも増えてくるなど、マフラーデザインのトレンドも、変化してきている。
そこで、近年のマフラーテールエンドとバンパーデザインのトレンドについて振り返りつつ、なぜ変化していったのか、考察をしてみよう。
文/吉川賢一、写真/編集部、Adobe Stock
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なぜマフラーのデザインは燃費のため?
国産スポーツカーブームが巻き起こっていた1990年代後半は、大排気量のクルマやスポーティなクルマほど、マフラーテールエンドをしっかりと「魅せる」デザインが施されていた。
なかでも、スポーツカー好きやラグジュアリーカー好きは、排気サウンドの改良と、リアデザインの迫力強化を狙い、砲弾型マフラーやチタン製マフラーエンドなどに、こぞって改造していた。
交換用のマフラーはメーカーオプションとしてカタログにも掲載されており、また、アフターパーツも多くあるため、この時代のクルマいじりが好きな方は、マフラー交換は「基本のき」のようにおこなっていた(筆者も歴代所有したクルマのマフラーは必ず交換してきた)。
交換したマフラーテールエンドがバンパー下に収まりきらず、はみ出した姿の方が、「むしろカッコよい」とされていた時代であった。
エンジン排気の通り道であるマフラーは、走行することで熱くなる。その熱を車体フロアへ伝えないようにするため、熱対策に対して今よりも技術力のなかったこの時代は、空気に当たるように、車体の底面に浮かすようにレイアウトする必要があった。
現代のクルマでもマフラーを空気にあてて冷やすことは必須だが、マフラーの放熱性能や耐熱材の進化、冷却に効率的なレイアウトなどにより、以前よりはずっと効率よく対策ができるようになっている。
マフラーテールエンド、およびリアバンパーデザインの方向性が変わってきたのは、2000年代に入ってからだ。その理由は「燃費改善」のため。
パワートレインのハイブリッド化や、トランスミッションの多段化、CVTへの置き換えと併せて、空気抵抗を下げるために、アンダーフロアまで、細かくつくり込むことが効果的だとわかってきたからだ。
それまでは、空気抵抗低減のアイテムといえば、ボディ上屋の形状やリアスポイラーなどがメインアイテムであったため、マフラーテールエンドは「ありのまま」出していることが多かった。
空気抵抗低減に、フロア面の空気を使うとなると、凸凹したマフラーやサイレンサーがジャマとなる。そのため、マフラーのレイアウトや形状を変更し、マフラーの搭載位置を上げて、床下をフラットにするような工夫が行われるようになり、バンパー内へテールエンドを食い込ませる近年のようなデザインへと、トレンドが変わってきたのだ。
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