■チームがドライバーを動かし、ドライバーがチームを動かす
さてスーパーフォーミュラである。筆者が見ていないだけで、どのチームでもタイヤ交換の練習は週末のサーキットのどこかの時間でやっているのだと思う。
思うのだが、決勝中のタイヤ交換でタイムをロスし、1000分の1秒をコース上で削ってきたドライバーの努力を吹き飛ばしてしまうシーンを過去2年あまりで何度眼にしたことか。
ヘタすれば毎戦どこかのチームで起きているといっても過言でないことを考えると、ナットに不具合があるのか、それともタイヤ交換の練習不足なのかどっちなんだ? と考えたくもなる。
今回の場合、それが野尻のタイトル獲得に待ったをかける可能性を持ったドライバーのピット作業で起こり、手に汗握る接戦の決着がそんな形でついてしまったのだから、もうレースへの興味もタイトル争いへの期待もいっきにしぼんでしまった。
後日、話を聞いたあるチーム関係者によると、タイヤ交換の練習を過分に繰り返すと、本番での体力が懸念されるメカニックがけっこういるのだという。それだけタイヤ交換の作業は緊張感をともなう重労働ということなのだが、いや、それにしても、それはちょっと情けなくないか?
ドライバーは、特に上を目指すドライバーになるほど、レース=仕事でミスなく力を十分に発揮できるように、食事を含めた生活習慣を整え、体調を管理し、専門家によるプログラムに沿ったトレーニングで身体を鍛え、自身を律している。
彼らの走りを裏で支えるスタッフにそこまでする必要があるのかどうか、それは一人一人が考えるべきことだろう。誰かにやれと言われてできることではないし、そもそも自分でやると決めたことしか人はやらないものだ。
野尻の今季の強さはチーム全員の力なしにはありえない。逆にチームの気持ちを一つの方向に動かしているのは、おそらくは野尻の仕事=レースに取り組む真っ直ぐな姿勢なのだと思う。
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