エンジンを後輪の前に配置し、リアタイヤを駆動するミドシップレイアウト(MR)。レーシングカーでは定石のレイアウトで、マシンの重量配分を最適化して運動性能を高めることができる。公道用車両でもスポーツカーには採用例があり、国産ミドシップスポーツも存在する。
だが、さまざまな理由によってミドシップであっても理想的な重量配分を実現できなかった残念なモデルもある。今回はそんな「?」が付くミドシップカーをピックアップして紹介したい。
文/長谷川 敦、写真/本田技研工業、FavCars.com、NewsPress UK
荷室の確保が足かせになった?「ホンダ NSX(初代)」
ホンダV6ターボエンジンがF1GPにおいて猛威を振るい、自然吸気V10エンジンに移行してからもなお、トップに君臨していた1989年、ホンダからミドシップスーパースポーツカーの開発・販売が公表された。「NSX」と名付けられたそのモデルは、翌1990年に市販が開始されると、国内バブル景気の後押しもあって瞬く間に人気車となった。
エンジンこそホンダレジェンドの3.0リッターV6をベースにするものの、それ以外はすべて新規に開発され、オールアルミ製モノコックボディによる軽量かつ空力に優れた車体、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンション、ミドシップレイアウトなど、当時のスーパースポーツカーに求められる要素をすべて満たしたかたちで世に出たNSX。フェラーリなどの競合車よりも低価格ながら信頼性が高く、走行性能面においても高い評価を得た。
このように人気と実力を兼ね備えたNSXだったが、同車を厳密なミドシップカーは見なさないという意見もある。まずはエンジンが横置きで車体中心からオフセット搭載されること。さらにギヤボックスはエンジンに側面配置となっていること。このレイアウトによってホイールベースを伸ばすことなくミドシップにでき、加えて車体後部にゴルフバッグが収納可能なトランクスペースが設けられた。
しかし、実際にゴルフクラブ一式をトランクに積めば前後重要配分は後方寄りになってしまい、走行性能への影響も無視できない。また、こうした措置によるリアオーバーハングの長大化は、スポーツカーとしてのルックスにはプラスになりにくい。
ただし、たとえ初代NSXがなんちゃってミドシップであっても、クルマの価値を損なうものでなく、ロングセラーモデルとして人気を保ったのも事実。2016年にはすべてを一新した新型NSXも登場したが、こちらはすでに2022年での生産終了が発表されている。環境問題対応などの理由があげられているが、クルマ好きには残念なニュースだ。
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