VW Tクロス なぜ人気? ヴェゼルに勝る驚きの性能とは

やっぱり小ささは「正義」!! ヤリスクロスよりも実はコンパクト

Tクロスの欧州地域でのライバルは、ルノーキャプチャー、ダチアダスター、プジョー2008、トヨタヤリスクロス、といったところだ。全長4115mmという、非常にコンパクトなサイズは、ハッチバックのポロ(全長4060mm)に次ぐ小ささ
Tクロスの欧州地域でのライバルは、ルノーキャプチャー、ダチアダスター、プジョー2008、トヨタヤリスクロス、といったところだ。全長4115mmという、非常にコンパクトなサイズは、ハッチバックのポロ(全長4060mm)に次ぐ小ささ

 全長4115×全幅1760×全高1580mm、ホイールベース2550mmのコンパクトなボディサイズは、VWではハッチバックのポロ(全長4060mm)に次ぐ小ささだ。ヤリスクロスとサイズはほとんど変わらず、むしろ65mm短い。

 しかし、Tクロスのほうが角の立ったボクシーなスタイリングのため、ヤリスクロスよりも車室内の広さは勝っている。四角いリアサイドウインドウも、前後席からの見晴らしがよく感じる。最小回転半径も、5.1mとコンパクトSUVの中でも小さく、これも嬉しいポイントのひとつだ(※ヤリスクロスは5.3m)。

 パワートレインは、排気量999ccの直列3気筒インタークラー付きターボ(最高出力85kW(116ps)、最大トルク200Nm)と7速DSGの組み合わせのみ。本国ドイツでは、ハイパワーな1.5LのTSIもラインナップにあるが、常用速度域がドイツよりも低い日本市場には不要、ということだろう。

 WLTC燃費は16.9km/L(市街地13.2、郊外17.1、高速19.1)と、国産のコンパクトSUVと比べていいとはいえないが、ドイツのメーカーらしく、高速巡行での燃費を優先したセッティングとなっている。

ドア閉じ音からも伝わる「質実剛健なつくり」

コンパクトだが、スクエアなフォルムで広い室内空間と荷室スペースを実現している
コンパクトだが、スクエアなフォルムで広い室内空間と荷室スペースを実現している

 ドアを開けた瞬間の「バスッ」という音の質は、「つくりの良さ」を感じさせてくれる。近年は、国産車であっても、ドア開閉時の音にこだわるようになってきたが、Tクロスのは、やはりドイツ車らしさを感じさせるものだ。

 久しぶりに見た手引きのサイドブレーキもいい。ただ、ACC(先行車追従型クルーズコントロール)の停車時のホールド時間が5秒程度しかない、というのは、もう少しなんとかしてほしかったところだ。

 走り始めれば、軽い身のこなしで運転がとても楽に感じる。軽自動車に毛の生えた程度の排気量で、どうしてこれほど力強い加速や巡行走行ができるのかと驚く。7速DSGについては、低速発進時の動作を気にされる方も多いが、最近のVW車のDSGにケチをつけることはごく稀だろう。

 エンジンの回転数をさほど上げずに、「クン!! クン!! 」とシフトアップをしていくので、イメージ通りの加速に乗せやすい。そのため、中低速で走るワインディングや高速巡行は大の得意だ。その半面、段差乗り越し時の突き上げは大きめ。

 「ドタン! 」といったインパクトノイズと鋭いショックは、後席だと少しきつい。筆者が試乗したのが、45扁平の18インチタイヤをはいたモデルだった、ということが原因であろう。購入される方は、上級グレードを欲張らずに、16インチや17インチタイヤを選んだ方が、幸せになれると思う。

「使い勝手の良さ」と「新世代のデザイン」がTクロスの魅力

 このTクロスのライバル、といえば、国産コンパクトSUVのヤリスクロスやホンダヴェゼル、といったところだ(キックスは、パワートレインがe-POWERのみとなるので今回は除外)。ただ、比較するにあたって、どうしても割高となる輸入車と、コストで有利な国産車たちとを、コスパで比較してもしょうがない。パッケージングや使い勝手、性能に特化して考えてみようと思う。

 となると、Tクロスの勝ちポイントは2つ、「使い勝手の良さ」と「新世代のデザイン」だ。Tクロスは、パッケージングが秀逸。全長はヤリスクロスよりも短いのだが、VDA方式による荷室容量は、ヤリスクロスが371L、ヴェゼルは390Lであるのに対し、Tクロスは455L。もっと大きなカローラクロスの 487Lに迫る勢いだ。

 これは、傾斜の少ないリアウインドウや、しっかりと確保した全高など、Tクロスの荷室形状が大いに関係する。また、荷室口の幅がしっかりと広めにつくられており、容量だけでなく、荷物の乗せ降ろしについてもしっかりと考えられている。

 また、最小回転半径5.1mも、地味だがものすごく効くポイントだ。「転回まであと少し!! 」の先に曲がる余裕があることで、駐車場やUターンのシーンで大いに役立つ。

 ドイツ車は全般的に小回り性能に優れているが、なかでもTクロスは秀逸だといえる。ちなみにヤリスクロスは5.3m、ヴェゼルも5.3m(18インチだと5.5m)、0.2mの差だがその差は大きい。ちなみにTクロスは、16インチでも、17インチでも、18インチでも5.1mだ。

 デザインについては、これまでVWのデザインは、よくいえば「質実剛健」、悪くいえば「真面目過ぎてつまらない」と、いわれてきた。

 しかし、Tクロスのデザイン、特にボディーカラーに関しては、明るい緑の「マケナターコイズメタリック」や、鮮やかなオレンジ色の「エナジェティックオレンジメタリック」など、華やかで若々しい。

Tクロスのインテリア。助手席側のダッシュボード上の模様などは、オシャレなポイントだ
Tクロスのインテリア。助手席側のダッシュボード上の模様などは、オシャレなポイントだ

 インテリアは、ステアリングホイールやシフトノブ、ハード樹脂を多用したインパネやダッシュボード、センターコンソールなどは、これまでの「質実剛健なVW」を感じさせるものだが、助手席側のダッシュボード上の模様など、(若干安っぽさはあるが)オシャレなデザインも織り込まれており、こうしたことも、Tクロス飛躍の一因となっているであろう。

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