フロントガラスの上部端に貼られている丸いステッカーは、法定点検(12か月点検)を受けた証であり、次の点検時期を知らせてくれるものだ。点検で愛車の状況を知ることができ、安心安全なドライビングにつながっていく。日常的な点検はドライバーの義務であることを忘れてはならない。
ほぼ100%の自動車ユーザーが受けている車検とは違い、法定点検を受けるドライバーの割合は3割から4割程度と言われている。非常に曖昧な立ち位置にある法定点検は、どのような意味を持つのだろうか。
自動車ディーラーで点検の際に勧められるメンテナンスパックの意味などにも触れながら、クルマの点検について再確認していこう。
文/佐々木 亘、写真/TOYOTA、HONDA、Adobe Stock(トビラ写真=buritora@Adobe Stock)
【画像ギャラリー】点検費用をケチると逆に損!? おトクなあの手この手を使って法定点検を積極的に利用する!!(7枚)画像ギャラリー■法定点検と車検は何が違う?
法定点検は、道路運送車両法第48条, 自動車点検基準第2条に記載のある「定期点検整備」の一つである。自家用乗用車や軽自動車では12か月ごとに27項目の点検、24カ月ごとに57項目の点検を行うことを規定している。
法定点検は、日常点検と同じくユーザーが行う点検義務の一つである。法規の条文通りに解釈すれば、各ユーザー自身が、点検項目に沿った点検作業を行うことが義務化されているというわけだ。
ただし、クルマの整備には相応の知識と技術が必要であるため、国の認証を受けた整備工場に点検を依頼することも可能にしている。
対して車検は、クルマが保安基準に適合した状態で走っているのかを確認する作業だ。車検はクルマが基準に則っているのかを、国がチェックするものであり、点検整備とは意味合いが違う。車検と法定点検には、大きな目的の違いがあるのだ。
車検と24か月法定点検は同時に行われることが多いが、法定点検が車検を通すためだけに行われるのは、非常にもったいない。12か月法定点検を蔑ろにせず、ユーザーの点検義務を果たす必要があることを、ドライバー一人一人が考える必要があるだろう。
■一定間隔で点検を受けるほうがお財布にもクルマにも優しい
クルマの中には油脂類、ゴム製品などの消耗部品が多くある。その耐久性は数か月から数年単位と様々だ。保管状況や使い方によって消耗の度合いは変わり、クルマの安全性が低下するスピードも違う。
一定間隔(半年・1年)で、クルマをしっかりと点検することは、消耗部品の劣化度合いをしっかりと確認しながら、適切な交換時期を見定められるというメリットがある。
これはユーザーにクルマの安全性を報告するエンジニアの立場で考えると分かりやすい。
定期的にクルマを整備しているユーザーへは、次の点検(半年~1年後)までに、消耗しきってしまう部品の交換を勧めればいいが、車検時にしかクルマも点検しないユーザーへは、2年後という遠い未来で、消耗する可能性がある部品の交換を提案しなければ、安全が担保されなくなる。
例えばブレーキパットやタイヤといった、摩耗が起こり、クルマの安全性に直接かかわる部品の、2年後の状況を正しく予測することは難しい。よって、残量がある程度残っている状態でも、2年後まで安全に維持できないと考える場合には、新品への交換を提案せざるを得ないのだ。
短いスパンで定期点検を行うほうが、消耗部品の交換時期を正確に見定めることができ、しっかりと部品を使いきれる。交換サイクルも長くなり、メンテナンスにかかるお金も少なくて済む可能性があるだろう。
定期的な点検は、クルマを長持ちさせるだけでなく、お財布にも優しい行動だと理解して欲しい。
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