■決め手は「顔」!? ヴェルファイア凋落のはじまり
2015年になると、アルファードとヴェルファイアは現行型にフルモデルチェンジを行った。アルファードは3代目、ヴェルファイアは2代目になる。
この時にはエンジン、ハイブリッドシステム、プラットフォーム、安全装備まで大幅に刷新された。加えてアルファードのフロントマスクは、初代と2代目のフォーマルな雰囲気から、仮面を思わせる目立つデザインに変更されている。
この効果により、2017年の1か月平均登録台数は、アルファードが約3500台、ヴェルファイアは3900台であった。依然としてヴェルファイアが多かったが、その差は大幅に縮まっている。
2017年頃の店舗数は、ネッツ店が前述の約1600店舗から約1500店舗に減ったが、それでも販売網はトヨペット店に比べて1.5倍の規模になる。そこも踏まえると、アルファードは店舗数の割に売れ行きを伸ばし、フルモデルチェンジの成功を物語っていた。
アルファードとヴェルファイアの販売順位が逆転したのは、2018年に実施されたマイナーチェンジが切っ掛けだ。この時にはアルファードが仮面のようなフロントマスクにメッキを散りばめ、高級感と存在感をさらに際立たせた。
2018年の1か月平均登録台数は、アルファードが約4900台、ヴェルファイアは約3600台で、アルファードがヴェルファイアを追い抜いた。以上ように、アルファードの登録台数がヴェルファイアに近付き、さらに逆転させたのは、すべてフロントマスクのデザイン変更によるものだった。
この後の2019年は、アルファードの1か月平均が約5700台、ヴェルファイアは約3100台になる。アルファード+ヴェルファイアの総台数は、1か月平均が約8800台だから2018年の約8500台とさほど変わらないが、両車の販売格差は拡大した。
2019年のアルファードは、前年に比べて16%上乗せで、ヴェルファイアは14%減った。
そして2020年には、アルファードの1か月平均登録台数は約7600台で、2019年に比べると33%の上乗せになった。逆にヴェルファイアは1500台だから、前年の50%以下だ。アルファードとヴェルファイアの販売格差は約5倍に達した。
■販売系列の統合でさらに変化が
この背景にあったのは、2020年5月に実施されたトヨタの国内販売体制の変更だ。トヨタ店/トヨペット店/カローラ店/ネッツ店の4系列は、一部地域を除いて残すが、全店で全車を販売するようになった。
その結果、従来はアルファードとヴェルファイアを扱っていなかったトヨタ店とカローラ店でも、アルファードが好調に売られ始めた。
例えばトヨタ店からは「クラウンのお客様が、新たに取り扱いを開始したアルファードに乗り替えるようになった」という話が聞かれた。
アルファードがトヨペット店の専売だった時代は、クラウンのユーザーがアルファードに乗り替えると、トヨタ店は顧客をトヨペット店に奪われてしまう。従ってトヨタ店は、さまざまな好条件を提示して、クラウンに留まるように顧客を説得した。
ところが今は全店が全車を扱うから、トヨタ店でもアルファードを販売できる。クラウンに留まるよう説得する必要もなく、アルファードへの乗り替えが進んだ。この影響もあり、クラウンの2020年の登録台数は、1か月平均で約1800台になった。2019年に比べて40%近く減少している。
さらにヴェルファイアを販売してきたネッツ店からも「ヴェルファイアのお客様がアルファードへ乗り替えるようになった」という話が聞かれるようになった。
このようにアルファードとヴェルファイアの販売格差が拡大した結果、2021年4月に実施された改良では、ヴェルファイアのグレードが大幅に削られた。ゴールデンアイズ IIと呼ばれる特別仕様車のみになり、一般のグレードは、V型6気筒3.5Lエンジン搭載車を含めて選べない。
その結果、2021年1~10月の1か月平均登録台数は、冒頭で述べた通りになり、ヴェルファイアはアルファードの7%しか売られていない。直近の2021年10月に限ると、ヴェルファイアの登録台数はアルファードの4%まで落ち込んだ。
販売店によると「2021年11月下旬の時点でヴェルファイアは生産されているが、今後の改良などで廃止される可能性が高い。アルファードのみになる」という。
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