■アクアはハイブリッドを突き詰めたハイブリッド専用車
プラットフォームやパワーユニットは共通、ボディサイズはほぼ同等だが、若干アクアの全長が長い。これによりアクアの後席空間や荷室空間には、ヤリスよりも若干の余裕があるが、その差はわずかだ。数値上での違いが少ない両車だが、ハイブリットの制御面では、明らかな差を感じる。
走行時のモーター制御はアクアが上手だ。同型のパワーユニットなのだが、走行フィールは、アクアの方が自然に感じられる。EV走行可能速度域が広く感じられるのもアクアだ。新開発のバイポーラニッケル水素電池が、良い働きをしているのだろう。
ハイブリッド車は燃費を伸ばすために独特のアクセルワークを必要とする。発進時には大きめにアクセルを踏み込み、十分に加速したら一度アクセルの入力をゼロ付近まで戻す。
するとEV走行に切り替わるので、アクセル踏み込み量をコントロールして、運転者自らがEV走行の状態を長く保つように運転するのだ。こうすれば、ハイブリッドの高い燃費性能を十分に引き出すことができる。
しかし、全てのユーザーがこのような走りをできるわけではない。実際に筆者がプリウスや先代アクアの販売に従事していた際、「ハイブリッドなのに燃費が悪いぞ」というユーザーの声を多く聞いてきた。
現役営業マンの時には、こうした声をいただくお客様一人一人と試乗車でドライブへ出かけ、ハイブリッド独特のペダル操作を伝えて回ったものだ。
30系プリウスや初代アクアでは、特にこのテクニックが必要で、販売側としてはハイブリッドの取り扱いに苦労した思い出がある。50系プリウス以降は、EV走行域が拡大され、旧モデルよりは扱いやすくはなったが、テクニックが必要な点は変わらない。
ヤリスも同様に、ハイブリットの魅力を最大限に引き出すのなら、繊細なアクセルワークが必要になる。
対するアクアは、格段にEV走行が行いやすくなっている。煩雑にアクセルを操作しても、EV状態がキープされ、特別な操作がなくても燃費を十分伸ばすことができるのだ。
また、モーターの出力制御が細かくなり、アクセル&ブレーキ操作で感じる違和感が少なくなっている。ハイブリッドは好きになれないと、敬遠していたユーザー層でも、純ガソリン車と同じように操作すればいい。アクアなら純ガソリン車と同じような運転方法で、ハイブリットの良さを感じ取ることができるはずだ。
ハイブリッドの利点を感じやすく、ハイブリッド感を感じさせないのがアクアの魅力である。特徴が削られて丸くなったことで、多くのユーザーの支持を得やすくなった。
■クラスを超えた静粛性と乗り心地の良さは一級品
アクアは振動や音といった走行中の不快要素を、ヤリスよりも少なく感じる。ヤリスは良くも悪くもコンパクトカーを感じる乗り味で、俊敏で軽快なのだが、振動や音の処理は、クラス相応の質感だろう。取り立てて悪いわけではないが、上位セグメントと戦えるかと言われると疑問が残る。
対するアクアは、ヤリスと同じプラットフォームとは思えないほど、静かで乗り心地がマイルドだ。2クラス上のミドルサイズのセダンに乗っているような乗り味である。
実際にアクアを購入する層は、コンパクトユーザーからセダンユーザーまで幅広い。ヤリスには見向きもしなかったユーザーが、アクアには強い興味をもっていると、販売現場からは驚きの声が上がっている。
アクアは初代モデルほどの爆発的な売れ行きではないが、じっくりと存在が知れ渡っていくうちに、段々と支持層が広がっているようだ。人気がじわじわ高くなるクルマは、ロングセラーとなることが多く、今後もアクアの人気は高い次元で維持されていくものと予想される。
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