絶好調SUVに新型HV登場で揺れる販売現場 トヨタとダイハツ贅沢な悩み

■HV先駆者トヨタの偉大な功績

量産HEVの元祖である初代トヨタ プリウス
量産HEVの元祖である初代トヨタ プリウス

 日本、いや世界での量産HEV車の歴史のはじまりといえば、1997年にデビューした初代トヨタプリウスとなるだろう。以来24年、“ファーストペンギン”として量産ハイブリッド車を世界に先駆けて発売し、その後ラインナップを拡大してきたトヨタのHEVへの信頼は、日本国内だけでなく世界的にも高い。

 トヨタ以外でも日本をメインとした世界のメーカーの多くがHEVをラインナップしているが、世界第二位の自動車市場となるアメリカでは、トヨタとその他のメーカーのHEV車では明らかに売れ行きに差があるとのこと。

 アメリカでレクサス車にHEVが充実してきたころ、レクサスディーラーにおいて「HEVはいかがですか?」とセールスマンが勧めると、「HEVはトヨタに限る」みたいな発言をお客さんにされた。そこでレクサスはトヨタの上級ブランドで、HEVはトヨタが製造していると説明して納得してもらったという話を聞いた。

 つまり、トヨタ以外のメーカーが魅力的なハイブリッドシステムを搭載したモデルを投入してきても、「トヨタはどう出てくるのかな」とあくまでトヨタをスタンダードと位置付けてHEV購入の検討をするひとがいるのは否定できないだろう。

 それだけHEV普及におけるトヨタの功績が大きいことも否定できない事実といえる。

■日本ではまだまだHEVが強い

日産 リーフ。e-POWERはBEVであるリーフのメカニズムをベースとしている
日産 リーフ。e-POWERはBEVであるリーフのメカニズムをベースとしている

 新車販売の現場でも、THSに一目置いている発言が聞かれる。ある日産ディーラーでは「e-POWERは、リーフのメカニズムをベースにしているので、その点では興味を持っていただけるお客様は多く、販売につながっております。

 ただ実用性能ではTHSのほうが圧倒的に優れていると思います」とセールスマンは話してくれた。

 残念ながら、日本はBEVのラインナップだけでなく、充電インフラ整備など、とにかく車両電動化(HEV以外)については、世界の動きから出遅れているのは間違いない。

 販売現場でも「政府が充電インフラなどの環境整備を進めてもらわないと、“充電渋滞”などネガティブイメージが先行しているなかでは、『BEVを売れ』と言われても積極的にお客様には売り込めない」という声がセールスマンからは多く聞かれる。

 最近でこそあまり言われなくなったが、初代プリウスがデビューしてからしばらくの間は、“HEV=バッテリー電気自動車”というイメージを持つ人が多かった。“モーターと電池を搭載したクルマ”と聞いて、BEVと勘違いする人が続出したのだ。

 ようやく、HEVとはどんなものなのかが周知されるようになってきた中でe-POWERやe-SMARTが登場してきている。仕方がないのかもしれないが、メーカーは“ライズ(ロッキー)ハイブリッド”と紹介している。

 ライズでe-SMARTを前面に押し出せば、ライズ自体をダイハツ製とであると販売現場で強調しなければならないので、意図的にボカしているのかもしれない。

 だが、もう少し“THSよりBEVに近い”といったアプローチをしてもいいのではないかと考える。自動車ユーザーのゼロエミッション車への関心が思いのほか高いので、なんかもったいないような気もしてしまう。

■HEVとBEVのこの先は

バス型燃料電池車トヨタ SORA
バス型燃料電池車トヨタ SORA

 e-SMARTはシリーズハイブリッドシステムだが、その先にはBEVシステムありきで開発されている。2022年にはダイハツの軽自動車にもe-SMART搭載車がラインナップされるとの情報もある。

 そして、その先には軽規格も含みBEVの登場が待っている。時を同じくして日産・三菱では軽自動車規格のBEVを世に送り出そうとしているようである。

しかし、日産の販売現場で聞くと「長い間売ってきているリーフでも購入決断までは敷居が高いのに、軽自動車規格のBEVはさらに購入へのハードルを高めそうだ」と不安視する声も聞かれた。

 そして、そのなかでダイハツからはe-SMARTを搭載した軽自動車がデビューするとの話もある。燃料費などの実用性能は別としても、“手を出しやすい”というイメージではどちらかいえば、やはりe-SMART搭載車となるだろう。

 e-POWERはリーフの技術を応用し、リーフの後にデビューした。一方でe-SMARTは、今後それをベースとしたBEVが登場してくる予定。これは単に順番の違いというだけではないようにも見える。ちなみにトヨタは2022年にトヨタブランドの量販BEVをデビュー予定としている(e-SMARTの流れとは別)。

 車両電動化だけでなく、国内販売で圧倒的なシェアを持つトヨタが動き出さないと、日本の新車販売ではなかなか物事が進まないとされている。

 そのトヨタが車両電動化(というよりゼロエミッション車の普及?)についてグループ全体でも消費者に見える取り組みを見せ始めてきたとe-SMARTの登場で強く感じている。

 グループ全体で見れば、FCEV(MIRAIやSORA)、そして水素エンジン車の開発にも積極的である。BEVのほかにも選択肢を用意ようとしているトヨタが、今後ゼロエミッション車へどのように消費者を導いていくのか、e-SMARTを見ても、実に興味深いところである。

【画像ギャラリー】HEVとBEVの今後とシリーズHV『e-SMART』を搭載して登場した新型ライズ/ロッキー(13枚)画像ギャラリー

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