絶好調SUVに新型HV登場で揺れる販売現場 トヨタとダイハツ贅沢な悩み

■エンジンの変更でライズが売りにくくなる?

トヨタ ヤリスクロス。今まではライズと棲み分けができていたが、ライズにe-SMARTがラインナップされて事情が複雑になってきた
トヨタ ヤリスクロス。今まではライズと棲み分けができていたが、ライズにe-SMARTがラインナップされて事情が複雑になってきた

 ヤリスクロス登場後は良い意味で“ガソリン車はライズ、HEVはヤリスクロス”と棲み分けができたようである。というのも、ヤリスクロスのガソリン車が1.5Lなのに対し、ライズは1Lターボエンジンを搭載していたので、自動車税がライズのほうが安かったことがあったのだ。

 しかし、今回の一部改良でFFが1.2L自然吸気となった(4WDは1Lターボのまま)。これが販売現場のセールスマンには悩ましいとのこと。

 「ライズのFFに搭載されていたのは1Lターボとなり、単に自動車税の問題だけでなく、ターボ独特の加速など走行フィールが好きで購入するお客様も目立ちました。

 新開発エンジン搭載車はまだ試乗しておりませんが、スペックを見る限りは当然かなり1Lターボとはフィーリングが異なるようです。自動車税もアップしますので、現状では『売りにくくなったなあ』という印象が強いですね」と話してくれた。

 それでは話題のe-SMARTについて聞いてみると、「ご購入されたお客様への納車を優先しており、展示や試乗車が届くのは2022年1月以降になる予定です。私ども実際触ったり、運転したりしておりませんし、展示・試乗車もないので、購入を検討されているお客様のご反応はまだ積極的にお聞きできておりません。

 商談次第ではヤリス クロスのHEVと迷われるケースも出てくるでしょうが、そこはシステムの違いをご説明し、お客様に選んでいただくことになるでしょうね。どちらかをご説明せずに、一方を推してしまえば納車後に『なんで紹介してくれなかったんだ』とクレームにもなりかねないですからね」と説明してくれた。

 また、「売る側だけでなく、買う側も『ルーミーに載ったらねえ(e-SMARTが)』と考える人も多いようです」とも語ってくれた。ルーミーもダイハツからのOEMなので、現状ではHEVの設定はない。

 しかし、ライズとロッキーはDNGAというダイハツの新世代プラットフォームを採用しているが、ルーミー(トール)は旧世代プラットフォームとなっているので、e-SMART搭載はフルモデルチェンジを待ってからとなりそうである。

 ルーミー(トール)は2016年にデビューしているので、フルモデルチェンジはそう遠くないうちに行われることになるだろう。

 ライバルのスズキソリオがマイルドハイブリッドを搭載しているので、e-SMARTはルーミー(トール)には間違いなく搭載されることになるだろうし、1.2L NAと合わせてルーミーにこそ必要だと前出のセールスマンは語ってくれた。

■シリーズハイブリッドの先輩 日産“e-POWER”

シリーズハイブリッドの先駆であるe-POWERを搭載する日産 ノート
シリーズハイブリッドの先駆であるe-POWERを搭載する日産 ノート

 シリーズハイブリッドといえば、日産の“e-POWER”システムが国内では先行して広く展開され知名度も高くなってきている。

 日本だけでなくタイにもe-POWERシステムの生産拠点を設け、さらに2021年10月には中国における日産の合弁会社である東風日産汽車が日産シルフィにe-POWERシステム搭載車を追加発表している。

 世界的にはBEV(バッテリー電気自動車)が注目され、2035年までにはBEVなどゼロエミッション車以外が新車として販売できなくなる地域が出てくる模様。

 しかし、それまでにはまだ14年ほどあるのでBEVに限りなく近いともいえるシリーズハイブリッドの世界的ニーズが期待できると判断しているのかもしれない。

 世界一BEVを含む新エネルギー車(ほかにPHEV/プラグインハイブリッド車やFCEV/燃料電池車)の普及が高いとされる中国でも、新車販売全体における新エネルギー車の販売比率は15%弱ほどで推移してきた(最近は急増傾向にあるようだが)。

 2021年11月末に広東省にある広州市で開催された広州モーターショー開催のタイミングで中国国内に登場した新型市販車(中華ブランド含む)のなかには、意外なほど内燃機関車のみを搭載するモデルの多さが目立った。

 ただ、中国での排出ガス規制は欧州の“ユーロ基準”をトレースしてきたとされてきたのだが、最も厳しい“国6基準”について中国政府は、“独自基準を設けたので、ユーロ6より厳しい”としているとのこと。今回デビューした新型車も当然国6基準をクリアした内燃機関を搭載している。

 世界でも特殊な政治体制であり、そのため政府の決定が速やかに実行される中国でも、2025年までに新エネルギー車の販売比率を20%前後までに引き上げるという少々控え目にも見える目標を掲げている。その中国でe-POWER搭載車をこのタイミングで市場投入するのはかなり意味深なトピックのようにも見える。

 そのe-POWERを初めて搭載した先代ノートがデビューしたのが2016年11月。登場した当時、筆者の周囲のオジさん世代のクルマ好きから、「e-POWERってどうなの?」という質問をよく受けた。クルマ好きから見ればTHSとは異なる仕組みのハイブリッドシステムということで興味津々となったようである。

 1.2Lエンジンを発電機として搭載しているシリーズハイブリッドという点では、ダイハツ(トヨタ)のe-SMARTと大きな部分では同じといっていいだろう。しかし、筆者の周囲に限っていえば、e-POWERには興味津々なのだが、結局ノートe-POWERを購入した人はいなかった。

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