トヨタ一強はまだ続くのか? コロナ禍でもビクともしないトヨタの強みと死角

■トヨタを支える幅広い車種構成

HVの元祖であるプリウスをはじめ、様々な車種にハイブリッドを用意するのもトヨタの強みだ
HVの元祖であるプリウスをはじめ、様々な車種にハイブリッドを用意するのもトヨタの強みだ

 まずはトヨタの強みだが、商品として筆頭に挙げられるのは、先に述べた小型/普通車の幅広い車種構成だ。特に電動化技術が注目される。トヨタは1997年に発売された初代プリウスから、エンジンとモーター駆動を併用するハイブリッドを手掛けてきた。

 そのために電動車の開発に必要な知見やネットワークも豊富だ。今はOEM車を除くと、ヤリスからセンチュリーまで、大半のトヨタ車にハイブリッドが用意される。トヨタが国内で販売する乗用車の40~50%がハイブリッドだ。

 そしてハイブリッドのTHS IIは、初代プリウスにおいて基本的なメカニズムを確立させ、その後の20年以上にわたり熟成を重ねてきた。

 この成果として、ヤリスのハイブリッドは、2WDのWLTCモード燃費が35.4~36.0km/Lに達する。ノートe-POWERの28.4~29.5km/L、フィットe:HEVの27.2~29.4km/Lを大幅に上まわり、日本で購入可能な乗用車としては、燃費性能が最も優れている。

 トヨタの電気自動車については、現時点では品ぞろえが乏しいが、低燃費のハイブリッドの販売は好調だから、二酸化炭素の排出抑制に向けた貢献度は高い。

 トヨタの技術について、衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能も注目される。車種によってシステムが異なるので注意が必要だが、コンパクトカーのヤリスに採用されるトヨタセーフティセンスは、車両と歩行者に加えて自転車も検知する。

 さらに自車が右左折する時に、直進してくる対向車両や横断歩道上の歩行者と衝突する危険が生じた場合でも、衝突被害軽減ブレーキを作動させる。安全装備の先進性もトヨタ車の大切な魅力だ。

 以上のようにトヨタ車では、ユーザーの関心が高い燃費性能や安全装備を進化させている。さらにコンパクトカー、SUV、ミニバンなど、人気の高いカテゴリーの車種構成も充実させて、トヨタ車は日本で販売される小型/普通車の50%を超えるに至った。

 そのほか定額制でクルマを使えるサブスクリプションサービスのKINTOも実施しており、すべての年齢を補償する任意保険を標準付帯している。任意保険料が高騰する若年層や高齢者にとっては、KINTOを利用するメリットがさらに増えている。

 残価設定ローンも、人気車であれば中古車として高値で販売できるから、返済期間満了時の残価(車両の残存価値)を高めることが可能だ。そうなると人気車は月々の返済額が抑えられ、ますます売れ行きを伸ばす。トヨタ車にはこのような好循環が生まれて、好調な販売が続いている。

■安価なコンパクトカーの質感低下が課題

トヨタ ヤリス。先代となるヴィッツと比較して質感は改善されたが、登坂路などでアクセルを踏み込むとエンジンノイズが気になることがある
トヨタ ヤリス。先代となるヴィッツと比較して質感は改善されたが、登坂路などでアクセルを踏み込むとエンジンノイズが気になることがある

 しかしその一方で、トヨタには欠点もある。しっかりと利益を出す商品開発を行うため、価格の安いコンパクトカーなどでは質感が低下しやすい。

 例えばヤリスの前身だった最終型のヴィッツは、2010年の発売時点では内外装の質が低く、ノイズも耳障りに感じた。

 販売店からは「新型ヴィッツは質感を下げたので、先代型のお客様に乗り替えを提案できない」と困惑する声も聞かれた。2011年に登場した先代アクアも同様で、モーター駆動で発進した後、エンジンが始動するとノイズが急激に高まった。

 現行ヤリスではこれらの品質を改善したが、ノーマルエンジン、ハイブリッドともに、登坂路でアクセルペダルを踏み増すと3気筒エンジン特有のノイズが拡大しやすい。

 前述のように燃費数値は優れているが、転がり抵抗を抑えたタイヤによって乗り心地には粗さを感じる。これらは原価低減を意識させ、ノートやフィットと比べた時の欠点にもなっている。

 そしてトヨタでは車種が豊富なために、車種ごとの買い得度の優劣も生じやすい。例えばヤリスハイブリッドと、2021年7月にフルモデルチェンジした現行アクアを比べると、後者が明らかに買い得だ。

 両車ともプラットフォームは共通だが、ホイールベース(前輪と後輪の間隔)はアクアが長く、後席の足元空間にも余裕がある。ヤリスに大人4名が乗車すると窮屈だが、アクアなら快適で、内装の質、乗り心地、静粛性などもアクアが上まわる。

 このように商品力は異なるのに、価格にはあまり差が生じない。アクアZは240万円で、ヤリスハイブリッドZ(232万4000円)に、アルミホイールと100V・1500Wの電源コンセントをオプション装着して装備水準を合わせると、245万500円になってしまう。

 装備を同等にすると、ヤリスハイブリッドはアクアよりも居住性や質感が低いのに、価格は高いのだ。ノーマルエンジンはアクアには用意されないからヤリスを選ぶが、ハイブリッドはアクアを絶対的に推奨する。身内同士で商品力と買い得度に差が生じた。

 同様のことが安全装備にも当てはまる。2020年に登場したヤリスクロスの衝突被害軽減ブレーキは、前述の通り右左折時に直進してくる対抗車両や横断歩道上の歩行者も検知できるが、2021年に発売された上級のカローラクロスには、この機能が採用されていない。

 カローラクロスの安全装備は、コンパクトで価格の安いヤリスクロスに負けている。

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