新型ソルテラで見えたスバル電動化の可能性と課題 エンジンなしでも「らしさ」はあるか?

新型ソルテラで見えたスバル電動化の可能性と課題 エンジンなしでも「らしさ」はあるか?

 2020年11月11日。スバルは同社初となる電気自動車のソルテラを世界初公開した。世界中のクルマが電動化に向かっていくなか、スバルが選んだのは単独でのEV化ではなくトヨタとの協業によるEV化であった。

 スバルといえば、中島飛行機のDNAを今も受け継ぐ企業で、水平対向エンジンを基軸としたシンメトリカルAWDが最大のウリであり、それこそがスバルである。しかし、EVになれば当然水平対向エンジンはなくなる。しかし、たとえ水平対向エンジンを失ってもスバルらしさは失わないEVを目指して開発したという。

文/諸星陽一、写真/中里慎一郎

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■スバル電動化のメリットと課題

 その最大のポイントは駆動力配分をいかに理想的なものにするか? に懸かっているという。開発過程においては従来車の駆動配分を改めて解析、それをEVで再現した。

 EVはガソリンエンジン車よりも敏感に、そして正確に駆動力配分ができるため、スバルが理想としてきた制御に近づく高応答なコントロールを実現。走行中にクルマの姿勢が乱れても、素早くスタビリティを確保でき、スバルの求める安定性のある走りは変わらず、現在のスバル車オーナーでも違和感のない走りとなっているという。

スバルの求める安定性のある走りは変わらず、現在のスバル車オーナーでも違和感のない走りとなっているという
スバルの求める安定性のある走りは変わらず、現在のスバル車オーナーでも違和感のない走りとなっているという

 電動化を推し進める過程において、大きなポイントとなるのが充電環境だといえる。ソルテラは150kWの急速充電に対応しているが、まだまだ150kWを出力する急速充電器はほとんどない。そして、スバルディーラーへの急速充電器の配備もまだまだな状態だ。

 こうした状況についてスバル商品企画本部の阿部一博氏に質問したところ、「充電設備が必要なことはよくわかっているし、それをしっかりとしなくてはいけないこともわかっている。ただ、もっとも台数が期待できる北米では自宅で充電する方がほとんどなのです」とのこと。

 日本の自動車メーカーがまずは北米のことを考えている……というと違和感を持つ方も多いかもしれないが、台数ボリュームが大きく、一定数のエコカーを販売しなければ、ほかのクルマを売ることができない北米を先行しなくてならないのはしかたないことだろう。

■マイルドHVでは目標に届かない

 阿部氏は「2030年には電動車両を40%にする必要化があり、EV化はどんどん進めないとならない。マイルドハイブリッドも電動化の一環だが、マイルドハイブリッドでは目標とする二酸化炭素の排出量減にはとどかない。自分達はもっと高い目標を掲げ、それに進まないといろいろと間に合わないことが多い」と付け加えた。

 充電インフラやビークル・トゥ・ホーム(V2H)に関しては、スバルだけでは難しい部分も多いだろう。こうした分野においてもトヨタとの協業で、しっかりとした整備を期待したい。スバル、トヨタのどちらの動きをみたり、話を聞いたりしてもどうも急速充電器の設置についてはあまり積極性を感じとれない。

スバルだけでは難しい部分において、トヨタとの協業によってしっかりとした整備を期待したい
スバルだけでは難しい部分において、トヨタとの協業によってしっかりとした整備を期待したい

 一方で、2020年にはトヨタホームとパナソニックホームズが統合され、国内最大の住宅メーカーになった。また、トヨタはウーブンシティという実験都市を造るなどしている。日産はリーフ発売に合わせて、急速充電器を拡充していったが、トヨタは町や住宅を中心に普通充電の設備を充実使用としているのかもしれない。

次ページは : ■スバルにとって「親和性高い」電動化 今後独自のEV開発はあるか?

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