自販連で集計されている国内登録車台数ランキングにおいて、今年すべての月で、しかも、ぶっちぎりの1位を獲得し続けている、トヨタ「ヤリス(10月までに18万4080台)」。
2位のルーミー(同11万3283台)に対して7万台も多く売れており、同時期に登場したライバルのフィット(4万8241台)とは4倍近い差、遅れて登場したノート(同7万3025台)や、アクア(同5万6239台)も、ヤリスほどの勢いはない。
ただ、この自販連のヤリスの登録台数の数値は、5ドアハッチバック、GRヤリス、ヤリスクロスの3車種の合計だ。しかし、このうち約半分(9万5275台)は5ドアハッチバック。やはりライバルに対しては、圧倒的に売れている。
2021年、最も売れているコンパクトカー「ヤリス」の長所、そして短所について、ここで改めて振り返ってみよう。
文:吉川賢一
写真:TOYOTA
トヨタの販売力もあるが、いいモデルだからこその結果
まず最初に、ヤリスが売れている背景には、「ヤリス」というモデルの良さとはほかに、トヨタ自販の販売力の高さ、そして、販売を支える生産能力の高さ、というものも少なからず影響している。
2020年5月のトヨタ系ディーラー統合によって、トヨタ全店舗で全車種が購入できるようになるなど、後押しも起きた。また、売れ筋の筆頭モデル「ヤリス」は、展示車や試乗車も潤沢に用意されたことで、お客様が目にし、触れる機会も増え、その結果として購入する機会が増していった、ということはあるだろう。
しかしそれも、ヤリスがいいモデルであることが大前提。そもそもいいモデルでなければ、いくら販売力が高くてもこれほど売れるわけがない。
「コンパクト」に特化して、いいことずくめ
ヤリスが選ばれる理由、それは「コンパクト」という特徴に特化したことにある。最小回転半径は4.8~5.1mと非常にコンパクト。狭い道でも、安心して運転できる心強さは、初心者や運転が苦手な方にとって、たいへん頼もしい。
また、コンパクトカーのなかでもひときわ小さいヤリスは、ガソリン仕様の重量が940~1020kg、ハイブリッド仕様が1050~1090kgと、ライバル車と比べて超軽量。トルクフルなエンジンも相まって、力強く滑らかに加速する。
コーナーへのターンインや、旋回中のステアリング切り増し操作にも、クルマがしっかりと応答してくれるだけでなく、旋回中のブレーキングも安定している。グリップレベルの低い低燃費タイヤながらも、「軽さ」を武器にした軽やかな身のこなしは、「クルマは軽さが正義」であることを実感できる。
また、小さなタイヤホイール(標準タイヤサイズが175/65R14もしくは185/60R15)を履くことは、バネ下質量が軽量となるため、乗り心地も良い。コーナリング中にギャップを乗り越えた際などには、若干タイヤが跳ね上げられる印象はあるものの、揺れのおさまりは速く、ロールやピッチングといったボディモーションも小さく感じられる。こうした運動性能の良さは、すべて「軽量なボディ」のおかげだ。
また、ハイブリッドX(2WD)が達成する驚異的な燃費は、軽いヤリスならではであり、ヤリス最大の長所だ。量販ハイブリッドでは史上最高レベルで、車体が重たくなる4WDであっても、30.2km/Lというハイレベル。やはり、数値で示せる魅力性能は強い。
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