圧倒的首位を爆走中 王者ヤリスはいったい何がいいのか?

受け入れるべき弱点もやはり「コンパクト」

 ヤリスのボディサイズは、3940×1695×1500(全長×全幅×全高)mm、ホイールベース2550mm。4名分のシートを配置し、荷物もそれなりには乗るようにパッケージングされてはいるが、後席にも余裕があるノートやフィット、アクアとは違い、ヤリスの後席空間は乗員が座れる最低限の広さしかない。

 後席の窓は小さく、後席の頭部真横にはCピラーがあるため、はっきり言って暗くて狭くて不快だ。実際に、3名乗車で往復300kmほど、後席で過ごしたが、非常に圧迫感があり、長くは乗るのは苦痛だった。もちろん、乗ることは可能だが、昨今のコンパクトカーや軽自動車の「広々」をヤリスの後席に期待してはいけない。

 とはいえ、4人で移動できるクルマが欲しいならば、アクアなど他の車種へ行けばよいわけで、このサイズでしか得られない、取り回しのしやすさ、気軽に乗れる使い勝手のよさは、圧倒的な魅力であり、この後席の狭さあってこそだ。

ただ、E-PKBはつけてほしい!!

 ヤリスは登場当初、アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)の作動範囲が限られており、時速30km以下になるとカットされてしまっていた。ライバル車では全車速追従が当たり前の機能であり、ヤリスの数少ない弱点となっていたが、2021年5月に行われた商品改良で、激安モデルの「X-Bパッケージ」を除く全グレードに、全車速追従機能付のアダプティブ・クルーズ・コントロールが標準搭載となり、使い勝手が大幅に改善した。

 しかし、サイドブレーキは、現行モデルデビュー当初から、いまも手引き式のみ。E-PKBを標準装備する新型ノート、フィットと比べると古い印象は否めない。採用には当然、コストアップが伴うが、サイドブレーキの操作から解放されるホールド機能付E-PKBは、日本で最も売れているコンパクトカーであるヤリスにこそ、搭載してほしい。この辺りも、年次改良の中で、アップデートされていくことを期待したい。

サイドブレーキはE-PKBではなく、依然として手引き式のみという点は、E-PKBを標準装備する新型ノート、フィットと比べると古い印象だ
サイドブレーキはE-PKBではなく、依然として手引き式のみという点は、E-PKBを標準装備する新型ノート、フィットと比べると古い印象だ

インテリアの質感をヤリスに求めるのは違う

 インテリアの質感に不満を感じる方も多いようだが、税込163万円(G_1.0L CVT/2WD)で購入できるヤリスに、そこまで求めるのは違う、と筆者は思う。インテリアは、コストをかけるほどに上質に見えていくもの。上質感が欲しければ、カローラスポーツ、プリウスなど、いくらでもラインアップにあるのだからそちらを選べばいい。「良品廉価」にも限度がある。

 そればかりか、ディスプレイオーディオやステアリングスイッチも標準装備※、クルーズコントロールやレーントレーシングアシストも標準搭載(最廉価の1.0L_X-Bパッケージは除く)、という内容は、もっと驚かれてもよいはず。

ヤリスは、1.5Lハイブリッドの「HYBRID_X_2WD(CVT)」が199万8000円、1.5Lガソリンエンジンの「X_2WD(CVT)」が159万8000円と、手の出しやすい価格設定
ヤリスは、1.5Lハイブリッドの「HYBRID_X_2WD(CVT)」が199万8000円、1.5Lガソリンエンジンの「X_2WD(CVT)」が159万8000円と、手の出しやすい価格設定

 ヤリスは、欧州でも販売台数ランキング上位にも入っており、「欧州カー・オブ・ザ・イヤー2021」も受賞している。最小限のサイズで、芸術的な低燃費を実現、まさに「質実剛健」なヤリスは、間違いなく令和の傑作車であり、ベストセラーカーに相応しい仕上がりのモデルだ。

【画像ギャラリー】令和のメガヒットシリーズ、トヨタ「ヤリス」軍団の全バリエーション(41枚)画像ギャラリー

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