■ホンダ シビック
現行シビックは2021年9月に発売。月販目標は1000台で、10月の登録台数は1218台、11月は933台であった。好調な売れ行きとはいえないが、シビックはクルマ好きの間で認知度が高い。
エンジンは直列4気筒1.5Lターボで、動力性能は2.4Lのノーマルエンジンと同程度だが、走行安定性は高水準だ。機敏に曲がる印象はないが、操舵角に応じて車両が正確に反応して、特に後輪の接地性が高い。
そのために高速道路の直進安定性が優れ、下り坂のカーブで危険を避けるような操作も安心して行える。長距離を安全に移動したいユーザーに適したクルマだ。
ただし先代型から流用した18インチタイヤの影響もあり、乗り心地は硬く感じる。段差を通過した時の突き上げ感は抑えたが、路上の細かなデコボコを伝えやすい。内外装は上質だが、華やかな印象はない。このあたりで好みが分かれる。
価格は「LX」が319万円で、カーナビなどを標準装着したものの、高めの設定だ。ハイブリッドのe:HEVを搭載するインサイト「LX」の335万5000円に近い。運転すると良いクルマだが、地味な雰囲気と割高な価格が販売の妨げになっている。
■ホンダ N-ONE
2021年1~11月に国内で新車として売られたクルマのうち、軽自動車が37%を占めた。そのなかの軽乗用車に限ると、50%以上がスーパーハイトワゴンだ。全高は1700mmを上まわり、スライドドアを装着して子育て世代を中心に人気が高い。
このトレンドのなかで、N-ONEは2020年11月にフルモデルチェンジを受けた。全高は1545mm(2WD)に収まり、スライドドアも装着されていない。
しかもN-ONEは、フルモデルチェンジをおこなってプラットフォームを現行N-BOXと同じタイプに刷新しながら、ピラー(柱)、ルーフ、ドアパネルといったスチール部分を先代型と共通化した。つまり外装はフロントマスクなどの樹脂部分だけを変更する異例のフルモデルチェンジとなった。
開発者は「スチール部分まで変更することも考えたが、N-ONEらしさが薄れてしまう。コストの低減も考えて、最終的には先代型と共通化した」という。
もともとN-ONEは、1967年に発売されたN360をモチーフにデザインされたので、フルモデルチェンジにも制約が伴う。ボンネットとルーフをさらに低く抑えると、外観を今以上にN360に近づけられるが、それは難しい。
Nシリーズのエンジンは室内長を限界まで伸ばすため、補機類を含めて縦長に造られているからだ。Nシリーズで開発する以上、ボンネットを低く抑えることはできない。そうなると外観は変えようがなく、スチール部分を先代型と共通化した。
この事情は分かるが、外観が先代型とほぼ共通で変化も乏しいと、マイナーチェンジに見えて売れ行きを伸ばすのは難しい。
しかもN-ONEは価格も高めで、6速MTを選べる最上級の「RS」は199万9800円だ。広い室内、電動スライドドア、多彩なシートアレンジなどを備えたN-BOX「カスタムLターボ」の196万9000円を上まわる。
そのためにN-ONEを発売した時の販売計画は月2000台だったが、2021年1~11月の届け出台数は、発売直後なのに約1800台に留まる。
その代わりN-ONEは、軽自動車としては運転感覚が上質だ。ステアリングの手応えに曖昧さがなく、正確に反応して運転が楽しい。6速MTの操作感も良好だ。直進安定性も優れ、高速道路を使った長距離の移動にも適する。価格と同様、走りの商品力もコンパクトカーに近い。
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