今年2021年は、スポーツカーが話題となった年だった。日産の新型「Z」が北米で発表され、国内では、新型BRZ/GR86が発売開始となり、スポーツカー不遇の時代とは思えないほど、スポーツカーの話題を目にした。
2021-2022 日本カー・オブ・ザ・イヤーで、日産「ノート」につづく2位を獲得した、新型BRZ/GR86。しかし、その価格は、先代の86が199万円(税抜・RSグレード)からだったのに対し、新型のGR86では279.9万円(税込・RCグレードMT)からと、税抜き価格比較で約55万円も高くなった。
しかしそれでも「安い」という声があがるほど、現代のクルマ、特にスポーツモデルは高く、庶民が簡単に手を出せるクルマではなくなってきている。そんななか、奇跡ともいえる価格で販売されている国産スポーツモデルが、スズキの「スイフトスポーツ」だ。
文:吉川賢一
写真:SUZUKI、ベストカー編集部
めちゃくちゃ速いマシンは、本当に「スポーツ」なのか!?
20~30年ほど前のスポーツモデルといえば、軽いボディのコンパクトハッチで、軽快な走りを楽しむものが主流だった。標準タイヤの限界性能は低く、現代のように、スタビリティコントロール(安全制御装置)もなく、危険とは割と隣り合わせだったが、そこを乗りこなすことが「スポーツカーを楽しむこと」であったと思う。
だが昨今のスポーツモデルは、「絶対的な速さ」を追求するため、ハイグリップなタイヤに凝ったデザインの大径ホイール、エクステリアには超高速域で役立つエアロパーツを装備し、インテリアにもスポーティなセミバケットシートや、アルカンターラ張りのステアリングホイールを装着。出力とレスポンスが異常にいいエンジンチューニングが施され、アクセルペダルを踏みこめば、目玉が奥に引っ込むような、超強烈な加速をこなす。
クルマの重さをパワーで隠し、限界性能も高く、あらゆる部分が硬質。もちろん、「速いマシン」という響きは魅力的に聞こえるし、ある意味「正義」でもあるのだが、手に負えないレベルに達してしまっている昨今のマシンを見ると、「求めるところはちょっと違うよなあ」という気持ちも大きい。
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