なんと1億5000万円のGT-Rイタルデザイン、なんでこんな値段になったの!?

なんと1億5000万円のGT-Rイタルデザイン、なんでこんな値段になったの!?

 イタルデザインは昨年11月2日、GT-R 50 by Italdesignの出荷を開始した。世界限定50台が順次納車される予定で、日産GT-R50 by ItaldesignはGT-Rとイタルデザインが各々2019年と2018年に迎えた50周年を記念して共同開発したモデルで、50台が限定生産される。

 GT-R NISMOをベースとし、ニスモで組み立てられた専用エンジンの3.8LV6ガソリンツインターボ「VR38DETT」エンジンは、ニスモがGT3で得たノウハウを生かして、手作業で組み立てられ、最大出力は720ps、最大トルクは79.5kgmに引き上げられている。この消費税込みの車両価格は、1億4530万5600円。しかし、実際にこの価格に見合ったパフォーマンスなのかどうか、なぜこんな値段になったのかを西川淳氏が分析する。

文/西川淳、写真/NISSAN

【画像ギャラリー】ついに納車開始!! GT-R50 by イタルデザインの市販モデルからプロトタイプまで全部見せます!!(24枚)画像ギャラリー

■ラグナセカでGT-R50イタルに乗れた!!

 GT-R50 by Italdesign(以下、50イタル)の顧客への納車がついに始まったらしい。限定50台のうち2割=10台前後は日本にやってくる予定らしく、街で見かけることは難しいかもしれないけれど、イベントなどに現れてくれることを楽しみに待ちたいと思う。

 もっとも東京都心では世界限定19台、日本わずか2台のランボルギーニシアンロードスターだって走っている。「輸入車」とはいえ、日本の名車がルーツだ。案外、東京あたりではすぐに目撃できるかもしれない。

 それはさておき、筆者はこの貴重なモデルのプロトタイプにかつて試乗したことがある。2018年の夏、モンタレーカーウィークに訪れた際、幸運が舞いこんだ。発表されたばかりの50イタルを物欲しげに眺めていると、旧知のデザイナーでイタルデザインのヘッドに就任していたフィリッポ・ペリーニに再会し、そこでなんと試乗の空きスロットがあるから乗ってみないか、と誘われたのだった。

サーキットを疾走するGT-R50イタルデザインのテストカー。このクルマは、主にボディやリアウィング、カーボンパーツなどエクステリア各所の剛性・耐久テストのために、サーキット走行で使用した車両
サーキットを疾走するGT-R50イタルデザインのテストカー。このクルマは、主にボディやリアウィング、カーボンパーツなどエクステリア各所の剛性・耐久テストのために、サーキット走行で使用した車両
GT-R50イタルデザインのテストカーは2021年1月から3月の期間に銀座にある日産クロッシングにて展示された
GT-R50イタルデザインのテストカーは2021年1月から3月の期間に銀座にある日産クロッシングにて展示された

 チャンスはコークスクリューで有名なラグナセカを先導車両付きでわずか数周のことだったが、大舞台での試乗に心は大いに躍った。もっとも、先行するGT-Rニスモとの差がなかなか縮まらないと思っていたら、この時点で中身はニスモと同じで、720psではなかったらしい。それでもこの「カタチ」に乗れただけでクルマ好きとしては大満足だったし、誇らしい気分になれた。

■全世界限定50台の希少価値はおいくら?

 結局のところ、そういうことなのだ。どれだけこのカタチに特別な思いを抱くことができて、それが世界で50人に限定されているという事実にいかなる価値を個人的に見出すことができるか。それによっておよそ1億5000万円という値段に対する妥当性がまずは生まれるのだと思う。そのうえで冷静に考えてみて、この価格が高いか安いかを論じてみたいと思う。

 まず、ベース車両のGT-Rニスモの価格は約2500万円であることを思い出してほしい。50イタル用のエンジンはパワーアップされており、ワークスチューンであることを考慮すれば3000万円程度の価値はまずあると踏んでいい。

日産GT-Rニスモ スペシャルエディション2022年モデル、価格は2464万円。本モデルはすでにオーダーが予定していた販売数を超えたため注文受付を終了している。東京オートサロン2022に出展予定
日産GT-Rニスモ スペシャルエディション2022年モデル、価格は2464万円。本モデルはすでにオーダーが予定していた販売数を超えたため注文受付を終了している。東京オートサロン2022に出展予定

 そのうえ、現時点ではもう新車をオーダーすることができず、今後はプレミア価格になっていくからベースモデルの価値はさらに上がっていくが、話がややこしくなるので今回そこは考慮しないことにしよう(将来性については最後にもう一度述べたい)。

 中身(ベースモデル)の価値が3000万円だとして、50台限定の50イタルの価格はその約5倍だ。これは果たして高いのか、安いのか。

■GT-R50イタルデザインはハイパーカーにふさわしいのか

 結論からいうと、妥当だ。世界のハイエンド高性能車ブランドにおける限定車ビジネスを見るかぎり、安くはないが、高くもない。ランボもフェラーリも大体、ベース車の5~6倍だ。そもそもGT-Rのコストパフォーマンスは高いので、たとえ5倍にしてみたところで、この性能の50台限定車として考えた場合、絶対額という意味では1億5000万円でも安い部類に入ってくる。

GT-R50イタルデザインの市販車モデル。外装色は購入者の好みに応じてどんなカラーリングでも可能、さまざまなオプションが用意されている。当初、2020年後半より納車が開始されるとアナウンスされたが実際は2021年の後半にズレこんでいる
GT-R50イタルデザインの市販車モデル。外装色は購入者の好みに応じてどんなカラーリングでも可能、さまざまなオプションが用意されている。当初、2020年後半より納車が開始されるとアナウンスされたが実際は2021年の後半にズレこんでいる

 そのあたり、500万円前後の各オプションを購入者全員がほぼフルチョイスしていることからもわかるだろう。もっとも1億円以上のクルマを購入できる人にとって、数千万円くらい余計にかかったとしても意に介さないはず。それよりも「付いてないこと」による価値の相対的な低下の方を気にするはずだ。

 1億5000万円というプライスタッグを妥当であるとする根拠は、50台限定であることに尽きる。まずは、その希少性だ。ベースのニスモは2020年から22年までにおよそ300台を生産する。つまり、希少性だけで考えても6倍の価値がある。

 たった50台だけのためにボディカウルを一新し、カーボンファイバーで作った。インテリアの変更はプロトタイプほど派手ではないのでいったん、考慮から外そう。それでもウィンドウ周りを除いてエクステリアすべてをリデザインしている。

 ショーカーではない。登録できる生産車用の外装パーツを少量生産するためにはコストがかかる(だから逆にいうと少量生産向きのCFRPでしか作れない)。生産のコスト的に考えても、5~6倍になって当然だろう。

■億超えハイパーカーを買う人の論理

 買う側の立場に立っても妥当な金額である。この手の限定車を買う人は、もちろんGT-Rが好きな大金持ちということになるのだが、ブガッティやパガーニ、ケーニグセグといった3億円超のハイパーカーを買う人と大抵かぶっている。そんなウルトラリッチにとって1億5000万円~は安いと感じられたに違いない。

 また、フェラーリやランボルギーニ、アストンマーティンなどの限定車を買う層とも被っているが、彼らには限定車の相場感というものがすでにあって、それが前述したようにだいたいベースモデルの5~6倍といったところなのだ。50イタルのそれと合致している。

■1億5000万円でも安いと感じるパフォーマンスとブランド

 パフォーマンス的にはどうだろうか。前述したがGT-Rのコストパフォーマンスは今なお高い。デビュー時に比べて値段は高くなったが、それでも今なお世界一級のパフォーマンスを維持している。

 デビューから14年経って、さすがに古臭さを隠しきれなくはなっているが、それでもなおこのパッケージが生み出す性能は世界トップレベル。0-100km/h加速3秒切り。この数値だけをとっても世界のハイパーカーと互角に戦える。それを知っている人たちの鑑識眼には、欧州ブランドのハイパーカーの半額というべき1億5000万円がかえって安いものと映っているに違いない。

 最後にイタルデザインという世界的に有名なカロッツェリアブランドと、日産GT-Rというカルト人気を誇るブランドとのWネームであることも価値がある。価値を認める人がヨーロッパを初めとして世界中に広がる可能性がある。これは将来的にみてもそうだ。この価値は現時点では価格に換算できないが、そこに可能性を感じた購入者も多かったことだろう。

『GT-R50 by イタルデザイン』はGT-R誕生50周年とイタリアのデザイン会社イタルデザインが50周年を迎えた記念に共同開発された。イタルデザインが手掛けた日本車には、初代いすゞピアッツァ、2代目いすゞジェミニ、スバルアルシオーネSVX、2代目ダイハツムーヴなどがある
『GT-R50 by イタルデザイン』はGT-R誕生50周年とイタリアのデザイン会社イタルデザインが50周年を迎えた記念に共同開発された。イタルデザインが手掛けた日本車には、初代いすゞピアッツァ、2代目いすゞジェミニ、スバルアルシオーネSVX、2代目ダイハツムーヴなどがある

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