輸入車とウインカーが逆なのは、日本が「ISOに従っていない」から
輸入車に乗ると、誰もが一度は間違えるのが、ウインカーとワイパーの操作ミスだろう。筆者も度々やらかす。近年は、日本で販売される輸入車の多くが、右ハンドル仕様となっているが、ウインカーは左のまま。これは、ISO(国際標準化機構)の、「ハンドル位置に関わらず、ウインカーは左側」の規格に従っているためだ。ちなみに、BMWが主体となって共同開発した、トヨタの現行スープラは、右ハンドルだがウインカーは左側だ。
ではなぜ、国産メーカーのクルマは右ウインカーなのか、というと、日本で売られている日本車はJIS(日本産業規格)に規定されている「右ハンドル・右ウインカー」を採用しているため。日本のルールは、世界的に見れば「イレギュラー」であり、輸入車メーカーの本音としては、「左側通行の国で、左ハンドルが運転しづらいのはわかるが、ウインカーはISO規格のままでいいのでは」というところだろう。
ちなみに、左側通行を採用するのは日本のほか、香港、イギリス、タイ、マレーシア、インドネシア、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランド、ケニア、スリランカ、バングラディッシュ、パキスタンなど、およそ55か国。世界の国に対しては、約4分の1程度と少数派だ。世界の大半の国では、右側通行であり、それに従ってISOで決められているものであり、少数派の日本としては、仕方のないところだ。
なお、日本車メーカーが海外で新車販売する場合は、きちんと左ハンドル・左ウインカー仕様をつくっている。日本固有のJISのおかげで、今の右ハンドル、右ウインカーのルールなっていることは、知っておいて損はないだろう。
チルト&テレスコロック機構は、サプライヤーによる違い
チルト調整やテレスコピック調整は、クルマへ乗り込んだら、サイドミラーやバックミラー調整、シートポジション調整と同じく、真っ先にチェックして欲しい項目だ。ある程度高額なクルマでは電動チルテレの採用が増えてきたが、まだまだレバー式調節機構の方が主流。だが、このレバーの位置や形が、クルマごとにバラバラで、統一されていない。
このチルト調整やテレスコピック調整といった機構を備えるのは、ステアリングコラムという構造物だ。ステアリングコラムとは、ステアリングホイールと、タイヤを転舵するラックギアまでの間にある機構のひとつで、ステアリングコラムの先端にあるシャフトにステアリングホイールを固定し、その反対側には、ジョイントを介して、ラックギアまでつなげている。
ステアリングホイールの回転角を正確に伝えるため、ステアリングメンバ(※ダッシュボードの裏側で、左右のAピラーの下側を繋ぐよう、棒状の構造物で構成されていることが多い)に、がっちりと固定されている。わずかなグラつきでさえ、ハンドリングの操舵感に大きく影響するので、各メーカーが気を使っているパーツのひとつだ。
そんな重要なパーツであるステアリングコラムは、JTEKT(ジェイテクト)、NSKステアリングシステムズ、日立、KYBといった日本メーカーが、世界的に高いシェアを持っている。トヨタはJTEKTが多く、日産はJTEKTとNSK、KYBなど、ホンダはNSKやショーワなどを使っているようだが、同じメーカーのクルマであっても、1メーカーが1サプライヤーで統一する、ということはほとんどない。性能や耐久性といった部品スペック、コストの競争力、ロジスティック(各国各地にある自動車製造工場まで安定的に納品できるか)など、設計要件や物流コストの問題なども絡むためだ。
つまり、同じメーカーのクルマであっても、チルト調整やテレスコピック調整のレバーの位置が異なるのは、スタリングコラムをつくっているメーカーが異なることが原因だ。各サプライヤーでレバーの形状や動作を統一できなくもないが、統一しなくてはならない理由もない。機能を上げながらもコストを下げるための、数少ない設計自由度といえるかもしれない。
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