北京五輪はFCV版コースターも登場!! トヨタの提供車と電動化戦略の行方

中国政府が進めるNEV普及のカギは次世代型原子力発電か?

 中国政府は、年明け早々に、これまでNEV購入に対し行ってきた補助金制度を、今年は対前年比で30%削減するとし、なおかつ制度自体を2021年末で終了すると発表している。

 このことは、中国市場においてNEVはもはや補助金で支援する商品ではなく、当たり前の新車として価値基準を変えていくことを示しており、補助金制度最終年となる2022年の北京オリンピック・パラリンピックへのトヨタのNEV供与は、2021年の好調な販売を継続し、さらに成長させ、その動向を安定的にする最後の機会ともいえる。

 いっぽう、国内では、水素ステーションの整備がなかなか進まず、FCVの販売は思わしくない。また2021年秋には、英国のBBCが、日本の水素社会への取り組みについて、このさき数十年は石炭への依存から脱却できなくさせるのではないかとの指摘があった。

 しかし中国では、石炭火力発電からの脱却を目指し、原子力発電の拡充へ向けて動いている。その原子力発電は、これまでの軽水炉ではなく次世代型と位置付けられる新方式だ。なかでもトリウム熔融塩炉(ようゆうえんろ)は、液体燃料を使う点が固体燃料を使う軽水炉を含めた他の方式と異なる。これによって発電効率が高まり、電気代も大幅に安くでき、なおかつ安全性が飛躍的に高まる素養を持つ。

 液体燃料に使うトリウムは、永久磁石式同期モーターなどで使われるネオジムやジスプロシウムといった希土類元素(レアアース)の鉱山の廃棄物であったが、熔融塩炉で燃料として使えるとなれば、処理問題が一石二鳥で解消する。放射性物質といういわばゴミが、タダで燃料になるのだから、これほど中国にとって有益なことはない。

 そのうえ、原子炉の熱で水素を製造することができる。トリウム熔融塩炉によって発電された電気は、1kWh(キロ・ワット・アワー)あたり、再生可能エネルギーなど含む他の発電に比べ1/5以上安くすることができると試算されている。

 安価な電力を使って水素を作り、なおかつ通常の電力として豊富に使っても二酸化炭素を排出せず、経済を大きく成長させることができる。安価な電力なしに経済成長は望めない。そこが、次世代原子力発電に中国が力を注ぐ大きな理由だ。

 中国の動きを見て、米国も1979年のスリーマイル島事故以来、次世代原子力発電への動きを強め、EUも次世代原子力発電を脱二酸化炭素の一助と位置付けることを決めた。EUは再生可能エネルギーの余剰電力を使って水素を活用しようとしているが、これに次世代原子力発電を加え、経済発展と脱二酸化炭素を目指す。その先端を行くのが、中国なのだ。

 水素社会への取り組みでは後れを取っているといわれる中国だが、次世代原子力発電と組み合わせることで道が開ける可能性がある。そこに、トヨタがFCVを核としながら、EVやPHEVを投入する意味が出てくる。もちろん、自動車市場として中国の潜在能力はなお高く、米国に次いで日本が目指すべき市場の一つである。

変動し続ける自動車業界で生き残る道はあるのか

北京冬季オリンピック・パラリンピックに向けたトヨタの提供車両
北京冬季オリンピック・パラリンピックに向けたトヨタの提供車両

 北京オリンピック・パラリンピックへの車両提供や協賛という、一つの出来事だけで採算を考えれば、投じた資金がいつ見合うかは見通しにくい。

 しかし、そもそもモータースポーツを含む文化活動への資金投入や協賛は、自動車メーカーに限らずどの企業においても、一つの大会や短期で、投じた金額の対価が得られることはない。10年も20年も続けてはじめて企業の認知度や信頼が高まり、憧れたり尊敬の念をもたれたりすることになる。そうした長い視野で取り組まなければ意味をなさない活動だ。

 たとえばドイツの自動車メーカーは、ブランド力が高いと多くの人が認識しているだろう。彼らは、品質や性能に長けているだけでなく、モータースポーツやその他スポーツなどへの協賛を継続的に行っている。たとえば冬のスポーツであればアウディが4輪駆動技術を活かせる場として取り組んでいるし、メルセデス・ベンツのロゴがテニスコートのネット脇に示され何年が経つだろう。

 別の視点でポルシェは、「買ってもらうブランドから選んでもらうブランド」への転換をはかろうとしている。象徴的なのが、世界的なエクスペリエンスセンターの取り組みだ。日本にも2020年、千葉県木更津に開設された。あるいは、特徴付けされたマンション住民だけのカーシェアリングにも取り組んでいる。

 そのさきにあるのは、EVによる自動運転を軸とした共同利用の時代の到来であり、世界的な自動車保有台数の削減である。世界13億台といわれる乗用・商用車すべてをEV化する資源はない。

 代わって、サブスクリプションを活用した共同利用を進めることで稼働率を高め、少ない台数で消費者の利便性を保持しようというのが未来像だ。そのとき、選んでもらえることがいかに重要であるかをポルシェはすでに気付いている。

 トヨタは、北京オリンピック・パラリンピックへの協力など含め、生き残りへブランド強化をしはじめているのではないか。十数年先に残れるかどうかの瀬戸際に、日本の自動車メーカーはあると思う。

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