■燃料だけでなく、エンジンのためにも定期的な運転を
定期的にエンジンを運転させることは、燃料系統のトラブルを予防するだけではない。エンジンは長い間運転させないと、内部の部品の表面からエンジンオイルの油膜がなくなってしまう。
そのため1カ月に1度はエンジンをかけるべきで、3カ月も放置していたら慴動面の油膜はほとんどなくなって、始動時はドライスタートと呼ばれる状態になってしまう。
完全に油膜がなくならなくても、油膜が通常より薄い状態では始動時に油膜切れを起こして摩耗することは避けられない。この時にシリンダーライナーやピストンリング、カムシャフトやギアから鉄粉が発生すると、それがエンジン内部を循環して更なる摩耗を誘発させる原因になるのだ。
したがってエンジンの摩耗を予防する、という意味では最低でも週に1度はエンジンを掛けて軽く負荷を掛けた状態で走行するべきなのである。単にオイルを循環させるだけではなく、一定の油温まで上昇させることでオイルシールやOリングなどのゴム類にも柔軟性を与えることができる。
クルマを走らせることなく止めっ放しにしていると、ダメージがおよぶのはエンジンだけではない。
タイヤのトレッド面にはフラットスポットと呼ばれる平らな面(丸いタイヤからすれば凹み)ができて、走行中に不快な振動の原因になる。走っているうちに解消される場合もあるが、元通りに戻らない場合もあるので注意したい。
さらにクルマを動かさないでおくと、タイヤはサイドウォールがヒビ割れてきたり、文字との境目(ゴムの厚さが変わる部分)が裂けてくることもあるほどだ。ドライブシャフトや足回りのブーツ類も走行して運動させないとゴムが硬化して破れやすくなってしまう。
電装系も使わなければ劣化が進む。バッテリーも自然放電により電圧が下がってしまうだけでなく、希硫酸が極板の鉛と結晶化してしまうサルフェーションが起こって、内部抵抗が増えてしまう。
スイッチ類の接点表面が酸化して接触不良を起こしてしまったり、リレーが正常に作動しなくなるなど不具合を起こす可能性が高まる。
さらにはMTであればクラッチやリアがドラムブレーキであればブレーキドラムとシューが張り付いてしまったりと、再び動かそうと思った時には、苦労する羽目に遭うことだってあるのだ。
クルマに限らず機械は、毎日動かしているほうが調子はいい。オイルや冷却水など液体のコンディションを保ちつつ、適度に運転させるのが機械としてよい状態を保つコツなのだ。
エンジン車であれば吸排気系や燃焼室のカーボンやデポジット(燃料の燃えカス)などの堆積を予防するためにも、月に1度は都市高速や郊外の道路を30分程度クルージングしてやったほうがいい。
そういった意味では、ある程度年式が進んだクルマは走行距離が少ないほどコンディションがいいとは限らない。中古車選びの時にも参考にしてほしい。
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