2021年12月14日に行われたトヨタの「バッテリーEVに関する説明会」で公開されたEVのなかで、ひと際注目を集めたのは「Sports(スポーツ) EV」と呼ばれたオレンジ色の小さいスポーツカーだった。
ある自動車専門メディアは「かつてのトヨタの名車、MR2の再来か?」と待望論を展開したが、その可能性はどうなのか。
今回展示されたEVのなかで、フロントには唯一GR(ガズーレーシング)のエンブレムがつけられていただけに、大いに期待されたのは理解できるが……。以下、トヨタ関係者に「あのスポーツEVはなんなのか」と取材した。
文/ベストカー編集部、写真/TOYOTA、CG/ベストカー編集部
■トヨタのスポーツブランド、GRが与えられたスポーツEVはまだ計画されていない?
GRに詳しいあるトヨタ関係者に直接話を聞いたところ、「具体的にあのスポーツEVをどうするかというのは決まっていないのではないか」という。
え……、決まって……ない?
ただ、誰もが知っているように、GRはクルマ好きの豊田章男社長肝いりのブランドであり、そこから生まれるモデルは本格的モータースポーツ専用マシンのほか、誰もが楽しめるスポーツスピリットに溢れるクルマたちだ。
たとえEVであってもアウディやポルシェ、そしてほかの欧州ブランドの多くもクルマの持つスポーツ性を高い水準で実現してきている。
そうしたことを踏まえ、トヨタとしても単に実用に徹したEVだけではクルマ自体の魅力に欠けると考えるは当然のこと。その点から言ってもGRブランドのEVは「必ず出る」とも言える。
しかし、今回提案されたあのモデルがそのまま出るか、と言われれば多分違うということになるだろうと思う。そしてそれはMR2とは呼ばれない可能性が高い。
■前段階に3メーカー共同開発のミドシップスポーツを挟むか!? その動向は?
現在トヨタはアライアンスメーカーのダイハツ、スズキの3メーカーで小さなスポーツモデルを研究中と伝えられている。それはMR2ほどのパフォーマンスではなく、その後継者であるMR-Sクラスで、ガソリンエンジンを使ったコンパクトスポーツではないかと言われる。
現実的にはコペンの後継車的なものとも言われるが、大きく異なるのはミドシップスポーツになるということだ。こうしたエントリークラスのスポーツカーを生き残らせるためには、これから先1つのメーカーだけでは難しい、という判断だという。
86/BRZのトヨタとスバルの協業が成果としてあり、それに習いそれぞれが持っているエンジンやパワートレイン、HV技術、生産設備を組み合わせて成立させていく。
そうして出来上がったモデルをベースにGRがさらに磨きをかけ、本格的にスポーツモデルに仕上げていくというのが、トヨタのこのクラスのスポーツカーの青写真だ。……というのが、そのGRに詳しい関係者の話だ。
その先にあるのが今回公開されたスポーツEVであることは充分あり得る。ただその前にガソリンエンジン(多分ハイブリッド技術は投入される)のミドシップスポーツが市販化まで進み、そのプラットフォームなどを使った次に世代がEVに発展するということかもしれない。
いきなり、このスポーツEVが登場するのではなく、その前段階で3メーカー協業によるコンパクトなミドシップが登場し、その成功いかんで次のスポーツEVに辿り着く。その時にMR2を名乗るかどうかはわからないが、登場するのは限りなく2030年に近い頃になるかもしれない。
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