ERSの発電/モーターアシストの効率的な使い方が、レースの勝敗を大きく左右
モーターアシストで恐るべきパワーを発揮するラリー1カーですが、使える電力には限りがあります。ERSでは、サービスパークなどで外部電源から充電ができる機能も持ち合わせており、バッテリーを80%充電してSS(スペシャルステージ)をスタートし、30%の状態でSSを終えることが規定されています。
したがってSS区間は、基本的にエンジン走行で、ここぞというときにモーターアシストでパワーアップするという使い方になります。できるだけ多くの減速エネルギーを回収し、そのエネルギーを効率的に利用することが、重要なのです。
ラリー1のハイブリッドシステムには、3つのモードがあります。
・フルエレクトリックモード
SS間のリエゾンでは、基本的にはモーター走行します。フル充電すれば、20km程度モーター走行ができます。
・SSスタートモード
SSスタート時は、バッテリーは80%充電状態でエンジンとモーターがフル稼働するため、約10秒間は最大パワーで発進できます。
・SSモード
スタート後は、走行によって電力は減ることになりますが、ブレーキで有効な回生(30kJ以上)が行われると、ドライバーがアクセルを踏むたびに、あらかじめ設定されている制御マップに応じてモーターアシストが行われます。制御マップは、車速やアクセル開度、ブレーキ踏力などのパラメーターに応じた発電マップとモーターアシストマップの2つが用意されています。
発電/モーターアシストは、マップ制御なのでドライバー自身が発電とモーターアシストをコントロールするのは、事実上困難。ドライバーは、昨シーズンまでのガソリンエンジン向けのアクセルワークから、エネルギー回生を考慮した、新たなアクセルワークを身に着ける必要があります。ドライビングテクニックの進化とともに、発電/モーターアシストを制御するマップの最適化が、勝負の分かれ道になります。
2022年初戦は、惜しくも総合2位と4位
冒頭でも触れましたが、トヨタのGRヤリス ラリー1は、「ラリー1」の初戦ラリー・モンテカルロにおいて、2021年のWRCチャンピオンのセバスチャン・オジェ選手が総合2位で表彰台、カッレ・ロバンペラ選手が総合4位、勝田貴元選手が総合8位、エルフィン・エバンス選手が総合21位でフィニッシュ。出走4台、すべてが完走を果たしました。本命のオジェ選手は、トップを快走していましたが、最終日にパンクに見舞われるなどで、悔しい逆転負けでした。
You Tubeでレースの様子を観ましたが、SS区間の走行は相変わらずのラリーらしい爆音の連続でしたが、ロードセクションではモーター走行で静かでした。激しいサウンドはモータースポーツの醍醐味でもありますが、ハイブリッドのラリーカーという、新たな時代へ移り変わった瞬間といえるでしょう。
◆ ◆ ◆
歴史と伝統あるWRCが、電動化、非化石燃料となり、カーボンニュートラルに向けて踏み出しました。将来的には、エンジン排気の爆音が、キーンというモーター音に変わっていくのかも知れないと考えると、少し寂しい気もしますが、持続可能なラリーを目指すには、仕方のないこと。今後も注目していきたいと思います。
【画像ギャラリー】新世代のハイブリッドラリーカー「GRヤリス ラリー1」の勇姿と、そのベースであるGRヤリス(27枚)画像ギャラリー
コメント
コメントの使い方