■LMとアルファードはどう違う?
LMとアルファードは、具体的に何が違い、価格の差はどこから生まれているのかを考えていこう。
ボディスペックを比較すると、LMの全長がアルファードよりも90mm長い。同一のプラットフォームを使っているため、ホイールベースは3,000mmと同値だ。エンジンは2AR-FXEの2.5L、2モーター式のハイブリッドシステムも共用する。
エンジンスペックでは、アジア仕様のLMが若干劣るが、基本的にはアルファードと同じパワーユニットと考えて差し支えない。エクステリアデザインはレクサスのアイコンであるスピンドルグリルが搭載されるため、一目でLMとわかるものだが、さらに大きく違うのは内装だ。
アルファードは7人乗りミニバンが基本コンセプトであり、最上級のエグゼクティブラウンジを選んでも、しっかりと3列目シートが付いてくる。対するLMには3列7人乗りもあるが、人気があるのは2列4人乗りのグレードだ。
遮音・吸音に気を遣うのはレクサスであるから、アルファードとは当然の違いだが、他にも液晶ディスプレイが大型化され、前後席間にパーティションを備えるなど、リムジンのような使い方を想定する装備が奢られる。アルファードよりも、さらに強烈なVIP専用車が、レクサスLMというクルマだ。
■LMの日本投入はあるのか?
生産工場が変わることで、LMの日本導入は可能性を大いに高めたと思う。ただし、LM導入前にクリアにしなければならない問題がいくつかある。
その一つがアルファードとの併売によっておこる混乱だ。
現在、レクサスブランドのラインナップには、トヨタ車をベースにした兄弟車は存在しない。兄弟姉妹として販売されていたのはHS250hが最後だ。トヨタと近しいコンセプトのクルマはあるが、レクサスラインナップについては、派生ではなく独立したモデルというスタンスを貫いている。
セルシオがLS、アリストからGSのように、トヨタからの派生を続け、北米で生き残ってきたレクサスだが、日本国内導入された後は、特にレクサスが独自のブランド力を構築する必要が出てきた。
それはトヨタの高級ブランドではなく、世界で戦える高級ブランドになるためだ。いつまでもトヨタに寄りかかった形では、到底メルセデスやBMWなどのライバルには勝ち目がない。
SAIの高級版で失敗したHS、立ち位置がなくなってしまい姿を消したGSのように、明らかにトヨタからの導線を引いたクルマでは、レクサスでの独り立ちは望めない。LMもベースとなる現行アルファードが残っている限り、常に「アルファードの豪華版」と言われてしまい、トヨタの柵が残り続けることになるだろう。
今のLMを国内導入するのならば、まずアルファードのフルモデルチェンジが先だ。LMとアルファードの関連付けを無くし、それぞれを独立させることで、HS・GSと同じ過ちは繰り返さずに済むと思う。
また、レクサス販売店も、元をたどれば全国各地のトヨタ販売店が運営する。併売状態では、違いが見えず、トヨタ販売店もレクサス販売店も中途半端な対応に終始せざるを得なくなるはずだ。
2022年末から2023年初頭に、アルファードがモデルチェンジすれば、3年以内のLMの投入は現実味を帯びてくるだろう。具体的にアルファードとLMをきっちり住み分けて、LMには明確なショーファードリブンを体現してもらいたい。
さらに、LMの国内導入時には、マイナーチェンジ(もしくは一部改良)が必須となる。中国仕様のままでは、日本のショーファードリブンには性格が合わない部分が多いからだ。特にコストをかける所と削るところの分別は、きっちりつけないと、車両価格と内容が見合わなくなるだろう。
アルファードFMCからのLM導入、この順番が逆になってしまうと、日本でしっかりと築かれつつある、レクサスブランドの求心力も落ちる。
LMの日本導入は、アルファード次第であり、BEVのフルラインナップなど、同時並行して様々な変革を行っているトヨタ・レクサス陣営にとって、LMの導入が急ぐべきことなのかは疑問が残る。それでも、ミニバン大国日本に、LMを投入する可能性が高まったことは喜ぶべきだろう。
3年以内という時期を区切らず、手順良く導入すれば、LMは日本でも受け入れられる存在になるはずだ。まだ数年のスパンが必要になるが、焦らず万全な形でLMを日本に投入してもらいたい。
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