隣の芝生は青く見える!? ステップワゴンから見たヴォクシー&ノアの『羨ましいところ』

■勝負のキーポイントはフロントマスク!?

ホンダ新型ステップワゴン(AIR)。ノア/ヴォクシーの対極にあるプレーンなフロントマスクを採用。オラオラ系フロントマスクを好まない層をあえて狙った
ホンダ新型ステップワゴン(AIR)。ノア/ヴォクシーの対極にあるプレーンなフロントマスクを採用。オラオラ系フロントマスクを好まない層をあえて狙った

 その点でヴォクシー&ノアは、70%の売れ筋路線を狙ってフロントマスクを「オラオラ系」とした。しかもノアのエアロボディは、大型メッキグリルを採用した典型的なデザインで、ヴォクシーは独特の迫力が伴う先鋭的な形状になる。

 ちなみに2020年5月に、トヨタの国内販売は、全店で全車を扱う体制に移行した。この背景には、販売系列のために用意する姉妹車を廃止して、開発や流通を合理化することも含まれていた。

 したがってヴォクシーとノアも、どちらか一方を廃止して、車種を統合するのが本来の売り方だ。そこでヴォクシーは、先代型のモデル末期に標準ボディを廃止した。

 それなのにヴォクシーの売れ行きは下がらず、全店が全車を売る体制の中で、姉妹車を残す異例のフルモデルチェンジを実施した。そこでヴォクシーとノアのエアロボディは、基本的には同じクルマだが、前述の通りフロントマスクを大幅に変えた。好みに応じて選べるように配慮している。

 このフロントマスクなら、発売から2~3年を経過して外観が飽きられ始めた時、特別仕様車などにより、先鋭的なヴォクシーのフロントマスクを一層際立たせることも可能だ。そうなればノアとヴォクシーのエアロは、今後の売れ行きを高く維持する上でも新たな価値を生み出せる。

 ヴォクシー&ノアがそこまでフロントマスクにこだわるのは、ミニバンの売れ行きは顔立ちに大きく左右されるからだ。ミニバンは実用重視のカテゴリーだから、デザインの優先順位は低そうだが、実際には車種ごとの機能の差はあまり開かない。

ホンダ新型ステップワゴン(SPADA)。AIRに比べて装飾を施した精悍なフロントマスクを採用。それでもノア/ヴォクシーと比較するとおとなしい顔つきだ
ホンダ新型ステップワゴン(SPADA)。AIRに比べて装飾を施した精悍なフロントマスクを採用。それでもノア/ヴォクシーと比較するとおとなしい顔つきだ

 ミニバンは基本的に日本向けのカテゴリーで、どの車種も共通のターゲットユーザーを想定して開発するから、ボディサイズや車内の広さ、シートアレンジ、価格などが互いに似てしまう。

 そうなるとユーザーは選ぶ時に迷いが生じて、本来は副次的な要素とされる顔の好き嫌いが、選択基準として浮上してくる。ミニバンは背が高いので、フロントマスクに厚みがあり、造形の自由度が大きいことも挙げられる。

 この事情はアルファード&ヴェルファイアを見ると良く分かる。以前はヴェルファイアの販売が好調で、現行型にフルモデルチェンジされた後も、アルファードより多く売られていた。

 それがマイナーチェンジでフロントマスクに変更を加えると、アルファードの売れ行きがヴェルファイアを上まわり、全店が全車を扱う体制になると、販売格差が決定的に拡大した。

 これは先に述べたトヨタの狙い通りで、ヴェルファイアを廃止してアルファードに統合することが可能になったが、ミニバンのフロントマスクの重要性も浮き彫りにされている。

■充実装備のノア&ヴォクシー

トヨタ ノア&ヴォクシー。多くのミニバンユーザーが好むギラギラのフロントマスクを採用。これを好まない層にとってステップワゴンは最後の砦ともいえる
トヨタ ノア&ヴォクシー。多くのミニバンユーザーが好むギラギラのフロントマスクを採用。これを好まない層にとってステップワゴンは最後の砦ともいえる

 ヴォクシー&ノアとステップワゴンの違いとして、装備の充実度も挙げられる。ヴォクシー&ノアは、まずスライドドア関連を充実させた。後方の並走車両を検知して知らせるブラインドスポットモニター装着車には、安心降車アシストも採用している。

 電動スライドドアを開き始めた時に、自転車や車両が接近すると、スライドドアの作動を停止して乗員が降車しないようにする。

 左側のスライドドアには、乗降用ユニバーサルステップをオプション設定した。従来は電動で出し入れするので高価だったが、ヴォクシー&ノアは、スライドドアの開閉に連動する機械式だ。したがってオプション価格も3万3000円と安い。

 荷室のバックドアには、フリーストップ機能を採用した。バックドアの開閉途中で止められるから、縦列駐車をしていて、車両の後方が狭い場所でも荷物を出し入れできる。

 3列目シートの格納方法も工夫した。先代型と同様にレバー操作で跳ね上がり、ウインドー側に押すとロックする。先代型のストラップで固定する手間を省いた。

 車庫入れを支援するアドバンストパークには、リモート機能も採用した。スマートフォンを使うことで、運転席に誰も座っていない状態でも、車外から車庫入れを操作できる。狭い駐車場所に収める時に便利な機能だ。

 これらは安全性や利便性を向上させると同時に、機能が似通りやすいミニバンを個性化する役割も果たす。ライバル車との選択に迷った時、ユーザーの判断を促す効果も期待できる。フロントマスクのデザインと、スライドドアの安全装備は次元の異なる要素だが、購買意欲を高める点では共通性もある。

 さらにヴォクシー&ノアは、プラットフォーム、エンジン、ハイブリッドシステムをすべて刷新させた。

 開発者は「先代型のプラットフォームは設計が古く、これを新しくしないと、エンジンやハイブリッドも進化できなかった」という。ノーマルエンジンはハリアーなどと同じタイプになり、ハイブリッドシステムは、ほかの車種に先駆けて第5世代に進化した。

 そのためにハイブリッドのWLTCモード燃費は、23.0~23.4km/L(2WD)に達した。先代型から現行型に乗り替えると、燃費数値上は燃料代を15~17%節約できる。ステップワゴンの燃費数値は不明だが、ここまで向上するかは分からない。

次ページは : ■ノア&ヴォクシーを敬遠するユーザーを狙うステップワゴン

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