令和4年・西暦2022年は昭和97年にあたるという(ちなみに、明治155年および大正111年にあたる)。
そういえば最近、昭和の時代を彩った著名人の訃報を目にする機会が増えつつある。嫌が応にも少しずつ世代交代が進んでいることを実感する。
例えば、成人した日本人であれば「志村けんを知らない人」を探す方が難しいかもしれない。
しかし、いまの子どもたちに「昔、志村けんという有名なコメディアンがいてね・・・」と説明をしないといけない時代がすぐそこまで来ていることもまた事実だ。
文/松村透
写真/トヨタ、松村透、AdobeStock(taiyosun,madrolly,PixieMe,Kiattisak,Fernando)
■昭和世代にとってあたりまえだったことが少しずつ通じなくなっている?
前述の志村けんの例は極端だ。しかし、昭和という時代を生きてきた世代であれば、誰もが知る人物やヒット曲など、若い世代の方たちに「知らないです」「なんすかそれ?」といわれることもあるだろう。まさにジェネレーションギャップ、そんな時代の変化に戸惑う人も少なくないだろう。
それはクルマの世界においても同様だ。
10年一昔前などといわれるだけに、30年以上の前に終わった昭和ともなれば大昔なのかもしれない。
そこで「昭和世代には定番でも令和において絶滅寸前な10の習慣」と題して、ジェネレーションギャップを埋め合わせる際のネタにしていただければと思う。
■昭和世代には定番でも令和において絶滅寸前な10の習慣
1.チョークレバーを引く
いまや「チョークレバー引く」行為自体を経験している人が少ないばかりか、「チョークレバーって何?」という世代も増えつつあるかもしれない。
物心ついた時からインジェクションのクルマに乗っていた(自分自身はもちろん、両親も含めて)という人も少なくないだろう。
エンジンに燃料を供給する際、キャブレター付きのクルマはドライバーが「チョークレバー引く」ことで混合気を調整する。特にコールドスタート時に使用する。
旧車オーナーにとってはエンジンを始動する際の儀式のひとつであり、かつてはクルマにまったく興味がないオバチャンでも必要に迫られてやっていたわけだ。
現在はコンピューターがこの混合気を自動的に調整してくれる。いまや当たり前の装備だが、かつてトヨタ車であれば「EFI」のエンブレムが誇らしげに輝いていており、電子制御燃料噴射装置が自慢できる時代があったのだ。
2.ゴールドエンブレムに交換する
かつてはスカイラインGT-Rですらディーラーオプションで設定されていたゴールドエンブレム。最近のクルマにはそもそもゴールドエンブレムの設定がないモデルが増えてきた。
ゴールドエンブレムが似合わないクルマが増えたのか、そもそも需要が減ってきたのか? さまざまな要因が考えられるが、一部を除き、派手さやゴージャスさを求めるユーザーが減りつつあるのかもしれない。
そういえば、バブル期には560SELのエンブレムをわざわざ「1000SEL(それもゴールド)」にキメていたメルセデスベンツSクラス(V126型)が六本木あたりを流していたような気がする。
その種のクルマのメーターパネルにはダイヤが・・・1周まわって、いまこの仕様があったらそれはそれで魅力的に映るのは気のせいであろうか・・・。
3.レースのシートカバーを装着する
これもかつては新車購入時の(ほぼ)マストアイテムであり、ディーラーオプションの定番商品だった。
それこそ、かつてはヤナセがメルセデスベンツ用にシートカバーを用意していたくらいだから、いかに当時の日本人のカーライフに浸透していたアイテムであったかが伺い知れる。
レースのシートカバーも時代の変化とともに、新車装着率が激減。いまやオプション設定しているクルマを見つけるのが大変なくらいにレアなアイテムとなってしまった。
本来、消耗品であるがゆえ「当時モノのレースのシートカバー」が現存していること自体が珍しくなってしまった。その結果、アイテムネットオークションでも高値で取引されているとは何とも皮肉な話だ。
4.社外のステアリングに交換
1990年代半ば頃からABSとともに急速に標準装備となったエアバッグ。新車および中古車を問わず、納車されたらまず真っ先に交換できる(交換する)カー用品のひとつが社外品のステアリングであった。
ボスを含めても数万円で購入でき、1台のクルマを自分好みにカスタマイズする「はじめの一歩」だった気がしてならない。
しかし、新車時に装着される純正ステアリングの大半がエアバッグ付きとなり、かつてのように簡単に社外品に交換することができなくなった。
そもそも、安全装備であるエアバッグをわざわざ除去してまで好みのステアリングに交換する人の方が少数派となった。
その結果、需要が減り、カー用品店の一角を担っていたはずの社外品のステアリングのコーナーも縮小してしまったのだ。
5.ダブルクラッチ
トランスミッションにシンクロ機能がなかった時代、シフトチェンジする際にニュートラルに入れる前、次のシフトにチェンジする際に行っていたのがダブルクラッチだ。
旧車など、古いクルマを運転する際には必要なテクニックだが、シンクロ機構が備わっている現代のMT車にはもちろん不要だ。
また、いまでも路線バスの運転手がダブルクラッチを切りながらシフトチェンジをする様子を見かけることがあるが、もはやあれはクセというか習慣なのかもしれない。
これは余談だが、最近のMT車はシフトダウンの際に自動的にブリッピングして回転を合わせてくれる(任意に切ることもできる)。そこまでやらなくても・・・と思うのは、自分がバリバリの昭和世代だからなのだろうか・・・。
6.シガライターでタバコの火をつける
厚生労働省が発表している統計によると、令和元年時点での喫煙者の割合は16.7%。男女別にみると男性は27.1%で、女性が7.6%とのことだ。これが平成元年だと男性は55.3%で、女性が9.4%といずれも減少している。
いまやシガライターは車内でたばこを吸うときの装備ではなく、スマートフォンの充電などの電源として使われることが増えてきた。灰皿もディーラーオプションとして用意はされているが、標準装備されているクルマの方が少ないだろう。
一説によると「シガライターで火をつけたタバコはうまくない」という話を耳にしたことがある。果たして真相やいかに?
7.帯電防止のアースベルトを装着する
この画像を見て「あー、あったあった! 懐かしいなー」と叫んでしまうか「これってなに???」となるかジェネレーションギャップを実感できる分かりやすいアイテムだろう。
リアバンパーの牽引フックのところにゴム製のアースベルトを取り付け、地面に電気を逃がすというカー用品が流行った時期があった。このアイテムを見てピンとくるのはアラフィフ世代以上に違いない。
現在でも入手可能ではあるのだが、街中ではまず見かけなくなった。旧車オーナーであれば、当時の雰囲気を再現するアイテムとして取り付けてみてもいいかもしれない。
8.正月飾りのしめ縄をフロントグリルにつける
いまでも自宅の玄関に正月飾りやクリスマスリースを設置する人は多いだろう。しかし、かつてはクルマのフロントグリルに正月飾りをくくりつけて新年を迎えたものだ。
しかし最近では年始にこの光景を見る機会が激減してしまった。そもそもどこで入手できるのか、即答できる人の方が少ないかもしれない(実際にはネット通販で入手できる)。
その理由は諸説あるが、正月飾り自体が似合わないデザインのクルマが増えたことも要因のひとつといえそうだ。験を担ぐ意味で、来年のお正月には愛車のフロントグリルに正月飾りのしめ縄を備えつけてもいいかもしれない。
9.焼き付き防ぐためにターボタイマーを付ける、もしくはエンジン停止後しばらくアイドリング
サービスエリアにさっそうと滑り込んできたスポーツカー。オーナーがクルマから降りて姿を消してもエンジンはかかったまま・・・。当時、ターボタイマーの仕組みを知らずにいた筆者はかなり驚いた記憶がある。
負荷をかけてきたタービンを労るために販売されたのが「ターボタイマー」だ。いきなりエンジンを切るのではなく、設定された時間内にアフターアイドルを行い、その後エンジンを自動的に切る装置だ。
90年代までのターボカーを中心に、クルマを大切にしたいユーザーのマストアイテムとなった。なかには人的にターボタイマーと同じ動作を行ったユーザーもいた。いささか面倒ではあるが、確かにやってやれないことはないか・・・。
10.左ハンドル車を1人で運転するときに料金所で苦労する
輸入車といえば左ハンドルという時代、かつてETCが存在しなかった時代、1人で運転して高速道路の料金所を通るたびにおじさんにお金を渡していたものだ。
しかし、料金所のおじさんも心得たもので、左ハンドル車が来ると自らの身を乗り出して受け取ってくれたものだ。なかにはおもちゃのマジックハンドを使って通行料を払った輸入車も少なからず存在した。
当時最新のスポーツカーの助手席におもちゃのマジックハンドが置いてある光景はなんとも不思議で、ミスマッチだった記憶がある。
全国にETCが普及しているとはいえ、地方の有料道路などまだまだ現金のみという道もある。左ハンドル車を1人で運転する人にとってはいまでも必須アイテムかもしれない。誰もがうらやむ美女・・・でなくてもよいのだが、助手席に人を乗せればいっぱつで解決することは事実だ。
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