■運転免許証の手続きは簡単になる?
それでは運転免許に関する手続きは簡単になるのだろうか。この点について、警察庁の運転免許証のデジタル化に関する改正道路交通法の説明資料を見てみよう(以下、抜粋および要約)。
改正道路交通法の「特定免許情報の記録等」を定める第九十五条の二における「特定免許情報」とは、次に掲げる事項とされる。
一 免許情報記録(個人番号カードに記録された特定免許情報に係る記録)の番号
二 免許の年月日及び免許情報記録の有効期間の末日
三 免許の種類
などとなる。
そのほかの個人番号カードと免許情報記録個人番号カードに関連する手続きなどについては、たとえば「個人番号カードの失効は、免許情報記録の効力に影響を及ぼさない」とされ、「免許を受けているもののうち当該免許について免許情報記録個人番号カードのみを有するものは、いつでも、その者の住所地を管轄する公安委員会に当該免許に係る免許証の交付を申請することができる」と捕捉されている。
気になる警察による交通取り締り業務については、「免許証とみなされた免許情報記録個人番号カードの提示を受けたときは、当該提示をした者に対し、警察官が当該免許情報記録個人番号カードに記録された特定免許情報を確認するために必要な措置を受けることを求めることができる。
この場合において、当該求めを受けた者は、これに応じなければならない」ということになる。
今回の道路交通法の改正では、利用者はマイナンバーカードと運転免許証を一体化したあとにマイナンバーカードのみを所持してもよく、両方を持つこともできるが、車両の運転時にはどちらかを携帯しなければならないことになる。
免許証と異なり、マイナンバーカードの表面に有効期限などの免許情報は記載されず、交通取り締まり時に警察官などは端末で読み取る仕組みを採用するとのことだ。
■「利便性向上」とはいうものの……
このように今回の道路交通法の改正は、運転免許証のデジタル化の一環として進められたわけだが、ふたつの官製ICカードを一体化することのメリットが筆者には感じられない。
警察庁は利便性の向上を謳い、将来的には政府のデジタル化推進の流れを受けて、スマートフォンに機能を移して「モバイル運転免許証」の実現を目指すとのこと。
現状での政府見解として「約8000万枚の運転免許証がマイナンバーとつながることは画期的」であり、「交通取り締り業務のデジタル化は、交通反則切符の作成時間の短縮につながるなど、国民の負担軽減にもつながるものであり、引き続きこれを広げていくよう検討を進めている」などといったコメントも見られる。
しかし、マイナンバーカードのさらなる普及を求めて、民間のクレジットカードなどの利用を進めるにも、個人情報の管理などセキュリティの問題をクリアする必要があるから、そう簡単に利便性を高められるわけではない。
今回の運転免許証を利用してマイナンバーカード普及を進める政府の手法は、現状では国民の「積極的なニーズ」が見当たらないように思える。
官製カードのデジタル化を促進する手段としては有効かもしれないが、まずは政府には慎重に事を進めていくことを望みたい。
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