みんなが見た! 惚れた! 憧れた! 「リトラクタブルよ永遠に!」

■”リトラ映え”した名車たち

トヨタの象徴的なスポーツモデルとして1967年に誕生した2000GT
トヨタの象徴的なスポーツモデルとして1967年に誕生した2000GT

 スタイルを重視するために生まれた装備ということもあって、端的に言ってリトラクタブルヘッドライト採用車はいずれも「カッコいい」。なかでも日本初のリトラクタブルヘッドライト採用車であるトヨタ 2000GTの美しさは、海外のスーパーカーに匹敵するものであり、あの流麗なフロントノーズの造形を実現できたのは、リトラクタブルヘッドライトの賜物と言っても過言ではない。

 ちなみに、設計当初は低い位置に設定されたノーズの先端にヘッドライトを備える予定だったが、アメリカ・カリフォルニア州が定めていた当時の法規に適合しなかったためリトラクタブルヘッドライトを採用したという経緯がある。

1990年、従来の国産スポーツモデルの枠を超え、世界のスーパーカーと渡り合ったホンダ NSX
1990年、従来の国産スポーツモデルの枠を超え、世界のスーパーカーと渡り合ったホンダ NSX

 カウンタックやフェラーリといったスーパーカーのリトラクタブルヘッドライトは、格納時はもちろん、展開時でも実に美しく、それが「リトラクタブルヘッドライトってカッコいい」につながっていたのは事実だ。その点においては2000GTも秀逸だったが、ホンダ NSXもまた展開・格納の両方でカッコよさが際立っていたモデルといえる。

 NSXのリトラクタブルヘッドライトは展開時の高さを最小限に抑えることを狙い、プロジェクター4灯式が採用された。ユニットの高さを約90mm、幅を210mmとしたことで、ライトを展開した状態でもスタイリッシュなうえに空力にも優れた効果をもたらしている。バルブからの光を前方に照射するためのリフレクターも小型化されているが、絞った光を凸レンズおよびアウターレンズによって適切な配光としている。

 この構造や造形へのこだわりが、スポーツカーの新しい方向を提示する未来感に満ちたスタイルの構築に大きく貢献していたのは言うまでもない。

現在も販売され続けている世界で人気のロードスターは、初代モデルのみリトラクタブルを採用
現在も販売され続けている世界で人気のロードスターは、初代モデルのみリトラクタブルを採用

 格納時と展開時のスタイルにギャップが生じるというのも、リトラクタブルヘッドライト採用車ならではの個性と言える。なかでもユーノス ロードスター(NA6型)は、格納した状態で外から見ると四角いのだが、展開すると丸いライトが現れる。

 この丸目が、曲線で表現された外観と見事にマッチングしているうえに、ボディ先端のウインカーと車幅灯やバンパー下部のダクトなどと相まって、ファニーな表情を作り出している。格納時はオープンスポーツカーならではの精悍さを誇示しつつも、ライトONすると愛嬌のある風貌になるという”ギャップ萌え”は、ほかのスポーツカーにはないロードスターならではの個性と言えるだろう。

■手に入らないからこそ胸に刺さる魅力

なんだかまぶたが半分閉じているようで”眠そう”に見えるセミ・リトラクタブルヘッドライト(写真はZ31型フェアレディZ)
なんだかまぶたが半分閉じているようで”眠そう”に見えるセミ・リトラクタブルヘッドライト(写真はZ31型フェアレディZ)

 格納時にスタイリッシュなフォルムを実現するのがリトラクタブルヘッドライトの利点だが、ライトの存在をあえて完全に隠さないセミ・リトラクタブルヘッドライトというものも存在した。

 採用車種は多くないが、ヘッドランプの半分または四分の一だけを覆うカバーのみを開閉するホンダ バラードスポーツCR-Xやいすゞ ピアッツァのほか、点灯時にライトが垂直に移動するパラレルライジングヘッドランプという機構を採用した日産フェアレディZ(Z31型)などがそれに該当する。

 いずれも格納時は薄目を開けているようでもあり、なんだか眠そうにも見える。だが、一般的なリトラクタブルヘッドライトとは異なり、点灯してないときもライトの存在がさり気なくアピールされ、ライトのON/OFFで大きく表情を変えてしまうようなことがないというのが大きな特徴だった。

 国産車では最後のリトラクタブルヘッドライト採用車であるマツダ RX-7が絶版になって20年を経た現在も、リトラクタブルヘッドライトの復活を望む声はある。しかしリトラクタブルヘッドライトは、現代のクルマを取り巻くさまざまな基準からは推奨されるものではなくなり、デザインや空力性能を追求するうえで画期的だったという、かつてのメリットはもはや得られない。

 おそらく今後も市販車でリトラクタブルヘッドライト採用車が見られる可能性は低いだろう。しかし、すでに手に入らないからこそ、その価値がクローズアップされるというもの。リトラクタブルヘッドライトはいまや旧車の象徴とも言える装備だが、それによってもたらされる美しさやオリジナリティは、ノスタルジーの一言では片付けられないほどクルマ好きの心に刺さるものである。

【画像ギャラリー】魅力あふれるあの頃のリトラクタブルモデルを写真で見る!(10枚)画像ギャラリー

新車不足で人気沸騰! 欲しい車を中古車でさがす ≫

最新号

あのトヨタスターレットが再び公道に舞い降りる!? 日産×ホンダ協業分析など新社会人も楽しめるゾ「ベストカー5月10日号」

あのトヨタスターレットが再び公道に舞い降りる!? 日産×ホンダ協業分析など新社会人も楽しめるゾ「ベストカー5月10日号」

トヨタの韋駄天が覚醒する! 6代目NEWスターレットのSCOOP情報をはじめ、BC的らしく高級車を大解剖。さらに日産・ホンダの協業分析、そして日向坂46の富田鈴花さんがベストカーに登場! 新社会人もベテランビジネスマンまで、誰もが楽しめるベストカー5月10日号、好評発売中!