ベストカーwebは3月11日にテスト中の「半固定式移動オービス」について報じたが、新年度となり予定していた熊本・茨城・長野の3県で運用への準備が着々と進められていることが分かった。各県3か所ずつ、9カ所の「土台」(拠点)設置場所が明らかになっている。以下、新型オービスの概要と、すべての設置場所を紹介します。
文/加藤久美子
写真/加藤博人、オービスガイド大須賀克巳
■場所がバレているオービスは続々と退役し、新型へ入れ替わる??
新型オービス、いわゆる「半固定式移動オービス」とは、昨年(2021年)4月に阪神高速で運用が始まった新しい移動式オービスのことで、オービスをセットするための土台を複数(現在までの例では3台)設置して、1台の移動式オービス本体を随時、移動させながら速度違反の取り締まりを行う方法である。
1台1000万円以上の高額な移動式オービス本体を複数(3台)の土台をランダムに移動させて通常の固定式オービスを3機設置するより安価に運用することができる。
土台の中にオービス本体が入っているかどうかは、かなり近づかないと目視ではわかりづらいため、結果的にドライバーは土台が設置されている場所に近づくと、速度について意識するようになる。
もちろん、土台の手前には中にオービスが入っているかどうかに関わらず「速度自動取締機設置路線」などと書かれた、いわゆる速度取り締まりの『予告看板』が新設されているので、予告看板の存在だけでも緊張感をもって速度を抑制しながら走行することになる。複数の土台は、スピードが出やすく、事故が起きやすい場所に集中して設置されているため、広域の場所において速度に意識して走るドライバーが増え、安全運転が意識される効果が期待できるというわけだ。
ところでなぜ、昨今「半固定式移動オービス」が全国に広がりつつあるのだろうか。
基本は従来の固定式オービスに代わるものとして導入が進んでいる。固定式オービスの中には設置から30-40年以上経過しているものもあり、老朽化が進んで改修などがうまくいかないケースも増えており、また、三菱電機のように速度自動取締機事業から完全撤退し、メンテナンスや保守がやりにくくなっているケースもある。
そこで、固定式オービスを撤去し、半固定式移動オービスを導入する例が今後は加速すると思われる。
また、固定式オービスは一度設置されると数十年にわたって運用される例も多く、その場所をよく通るドライバーにとっては速度を落とす「お馴染みの場所」でもある。近年はスマホやSNSの普及で、移動式オービスによる取り締まり情報も即座に情報として入手できる時代であるから、何十年もそのままの固定式オービスでは取り締まりの効果も当然、薄れてしまう。
そうした事情もあって、数十年が経過した古いオービスのほとんどはダミーとして置かれている(つまり、撤去されるのを待っている状況)のだが、やはり、多くのドライバーは「万が一」に備えて減速してしまうだろう(これらのダミー取り締まり機は最近の探知機には反応しないが)。
このように、近年はさまざまな理由から固定式オービスを撤去し、移動式オービスや半固定式移動オービスによる取り締まりへと変わりつつある。
なお本稿では便宜上、速度自動取締機=オービスと呼んでいるケースが多いが、オービス(ORBIS)とは、東京航空計器が製造する取締機の固有名詞である。今回導入された3県含めて半固定式移動オービスの中身は東京航空計器のLSM310を移動オービス用に改修したものが主流になると考えられる
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