CX-60が4月7日に日本プレミアで発表された。このCX-60は、期待とは裏腹に伸び悩むマツダの国内販売の起死回生の一手となるのだろうか?
最近ではMX-30など鳴り物入りで登場したがいまいち伸び悩んでいることや、マツダが抱える問題点と絡めつつ、CX-60の注目すべきポイントと求められる戦略を考察していきたい。
文/渡辺陽一郎
写真/MAZDA
■魂動デザイン登場から10年、CX-60でやっと解消された矛盾
2012年に先代CX-5やマツダ6(発売時点の車名はアテンザ)が登場した時、マツダからSKYACTIV(スカイアクティブ)技術や魂動デザインに関する説明を受けた。
その内容は、前後輪の優れた荷重配分、ステアリング操作に対して忠実に反応する車両挙動、チーターが後ろ足を蹴り上げて走る姿からイメージを膨らませた魂動デザインなど、いずれも後輪駆動を示す内容だった。さらにいえば、その趣旨は、スカイラインのチーフエンジニアとして名を馳せた故・櫻井眞一郎氏が1980年代に語られていた後輪駆動の話にも似ていた。
そこで先代CX-5やマツダ6の外観を見ると、フロントピラー(柱)を手前に引き寄せ、後輪駆動車風にボンネットを長くデザインしている。しかし前輪駆動だから、後輪駆動と違って、前輪の位置を前側へ押し出すことはできない。ボンネットが長くても、同時にフロントオーバーハング(前輪からボディが前側へ張り出した部分)も伸びてしまい、視覚的なバランスがいまひとつよくない。
このクルマ造りに疑問を感じて開発者に尋ねた。
「このような無理な造形を採用するなら、なぜ後輪駆動にしないのか。魂動デザインとスカイアクティブ技術による新しいマツダ車は、空間効率を追求するミニバンをラインナップしないから、センタートンネル(後輪へ駆動力を伝えるプロペラシャフトの通り道)が車内に張り出しても問題はない。
後輪駆動にすれば、マツダの求める運転感覚が明確に実現され、外観の表現も素直になり、矛盾がすべて解消されるのではないか」
この疑問を投げかけると、それまで流暢に喋っていた開発者が、急に大人しくなって歯切れも悪くなった。「いろいろな意味で、後輪駆動まで採用するのは難しい」といった返答だった。
このやり取りをしてから約10年を経た2022年4月7日に、CX-60の日本仕様が公開された。全長は4740mm、全幅は1890mmのワイドなSUVで、駆動方式は後輪駆動と、これをベースにした4WDを採用する。エンジンを縦向きに搭載する典型的な後輪駆動のレイアウトだ。
なぜ先代CX-5やマツダ6の登場から10年も経過した今になって、後輪駆動を採用したのか。開発者に尋ねると以下のように返答された。
「後輪駆動にした理由は2つある。まずはエンジンを縦置きに配置するから、エンジンとトランスミッションの間にモーターを挟み、マイルドハイブリッドやプラグインハイブリッドを成立させやすいことだ。
2つ目の理由は、需要が高まっているLサイズのSUVには4WDが求められ、後輪駆動との親和性も優れていること。ボディの大きなSUVなら、後輪駆動を採用しても、車内の狭さは気にならない」
要はSUVの人気が高まり、環境対応でハイブリッドとの組み合わせも必要になったから、後輪駆動に踏み切ったと受け取られる。
ハイブリッドシステムの形態は、先ごろ生産終了を発表した日産フーガ/シーマ/スカイラインのタイプと基本的に同じだ。前側からエンジン・クラッチ-1・モーター・クラッチ-2・トランスミッションを直列状に繋げる。日産の場合はエンジンがV型6気筒だが、マツダは直列6気筒と4気筒になる。
それにしても、日産の後輪駆動によるハイブリッドは、設計が比較的新しいスカイラインを含めて廃止される。同様の方式をマツダが新たに採用するのは、興味深いところだ。
なおCX-60が搭載するパワーユニットの種類は、2.5L 直列4気筒ガソリンエンジン、2.5Lガソリンをベースにしたプラグインハイブリッド、3.3L 直列6気筒クリーンディーゼルターボ、3.3Lクリーンディーゼルターボをベースにした48V方式のマイルドハイブリッドになる。
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